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伝説の「山田孝之3部作」を生んだ、「フェイク」と「リアル」のかき混ぜ方|竹村武司(放送作家)【前編】
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  • 2018.07.17
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伝説の「山田孝之3部作」を生んだ、「フェイク」と「リアル」のかき混ぜ方|竹村武司(放送作家)【前編】

テレビ東京系列で放映され、未だに根強い人気を誇る密着ドキュメンタリー風ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』、『山田孝之のカンヌ映画祭』、『緊急生放送!山田孝之の元気を送るテレビ』。いわゆる「山田孝之3部作」のすべての構成に深く関わった人物、それが放送作家の竹村武司氏である。

起承転結の展開が一言一句きっちり決まっているドラマなのか?出たとこ勝負、純度100%のドキュメンタリーなのか?ただの悪ふざけのコントなのか?そのどれでもあって、どれでもない、実に摩訶不思議な番組で、笑っていいのかどうかもわからない。じゃあ一体これは何なのか。普段はあまり表に出ることのない放送作家の視点から語ってもらった。

聞き手:米田智彦 構成:立石愛香 写真:神保勇揮 デザイン:大嶋二郎

竹村武司

放送作家

大学卒業後、広告代理店を経て、放送作家の道へ。現在は『ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン』(Eテレ)のアニメ脚本、『天才てれびくんYOU』(Eテレ)、『世界さまぁ〜リゾート』『この差ってなんですか?』(TBS系)、『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)、『あいつ今なにしてる?』、『くりぃむクイズ ミラクル9』(テレビ朝日系)、『BAZOOKA!!!』(BSスカパー)などの構成を担当。ここ数年は『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』『山田孝之の元気を送るテレビ』(テレビ東京系)など山田孝之の出演作品を多く手掛けている。

『山田孝之の東京都北区赤羽』はいかに始まったか

―― 竹村さんには去年の夏、僕がMCを務めたFMラジオ局のJ-WAVEの生番組に出てもらったのが出会いでした。僕が別所哲也さんの代わりに朝の番組を2日連続でMCやるという仕事だったんですけど、ディレクターさんに「今、米田さんが一番会いたい人は誰ですか?」って訊かれたんです。それで誰にしようかなって悩んだんですね。いっそのこと、ビートたけしさんとか言おうかなって思ってたんですけど(笑)。

竹村:たけしさんにすべきでしたよ(笑)。

―― それはいくらなんでも無理なんで(笑)、僕は『山田孝之の東京都北区赤羽』の大ファンだったので、その放送作家の竹村さんに出てほしいなと思ったんです。あの時が初のラジオ出演だったらしいですね。

竹村:表に出たのが初めてでした。

―― でも竹村さんは『赤羽』のDVDのオーディオコメンタリーには出てるじゃないですか。

竹村:あれは表に出たって感じじゃないです。雑談って感じですね。

―― あれで僕は竹村さんっていう人を認識したんですよ。

竹村:そうなんですか。よく聴いてましたね、オーディオコメンタリーなんて(笑)。

―― (笑)。僕は『赤羽』という、どこまでがドキュメンタリーなのか、台本のあるドラマなのかわからない手法の番組に衝撃を受けて、DVDボックスまで買い、封入されていたイベント抽選券を郵送して、当たってイベントまで行って、ここに「ワニダ」って書いてありますけど、番組に出てくる強烈なキャラクターの赤羽のタイ料理店の店長のワニダさんにサインまでもらったほど入れ込んでいたわけです(笑)。

DVDボックスに「ワニダ」とサインしてもらった

テレビ東京オフィシャルサイトでDVDボックスを購入した人のみがもらえる特製Tシャツ

作品に出演している山下敦弘監督は昔から何度かお会いする機会があったんですが、山下さんは作品に出演しちゃってるじゃないですか。あの作品は山下さんと松江哲明さんという、ダブル監督ということになっているんだけど、絶対、作家さんが面白い人だろうと思っていました。山田さんとはもともとお知り合いだったんですか?

竹村:そうですね。十何年前から普通の友達です。

―― 空気感みたいのが共有されているのは友人関係があったからでしょうか。

竹村:とはいえ、友達と仕事するのって難しいじゃないですか。スベらせるわけにはいかないし。一緒に仕事を始めたのは『赤羽』からです。

―― あの独特の作風はどのようにして生まれたのでしょうか?

竹村:いろいろな理由が重なってああなったとは思うのですが、まずは山田孝之という人間が、そもそもフェイクなのかリアルなのかわからない存在であるというのが大きいと思います。爆笑しながら人を殺したり、真剣な顔でうんこ漏らせる人なので、僕も付き合い長いですが、本当に実在しているのかたまに不安になります。

あとは、あくまで「ドラマ枠」で放送されているので、視聴者はドラマだと思って観ると思うんですけど、作っている監督の山下さんは劇映画が本業だし、松江さんはドキュメンタリーが本業だし、構成の僕はバラエティが本業なので、よく考えたらドラマの専門家が誰もいない。その3人がドラマを作ってみたらああなった、という感じでしょうか。

王道より邪道。「面白い」よりも「誰も観たことがない」作品を

―― 竹村さんは昔のフジテレビの深夜バラエティが好きだったというお話がありましたが、具体的にはどんな番組の影響を受けたんですか?

竹村:『たほいや』、『IQエンジン』、『やっぱり猫が好き』、『カルトQ』、『BANANA  CHIPS LOVE』、『地理B』、『征服王』、『全日本ガイジン選手権』、あとはホイチョイ・プロダクションズが作ってた『カノッサの屈辱』『マーケティング天国』『TVブックメーカー』とかです。尖ってて、バカバカしかったんですけど、どこか知的だったんですよね。そこがかっこいいなって思ってました。

―― 放送作家になりたいと思ったのはいつですか?

竹村:中学生ぐらいです。まさにフジテレビの深夜番組を観て、こういう番組なら作ってみたいって思いました。だから未だにゴールデンの仕事とか小っ恥ずかしいんですよね。

―― じゃあ、やっぱり手がけているのも深夜が多いんですか?

竹村:いや、節操ないので頼まれれば全部やらせていただきます。放送作家って、ある種ディレクターの愛人みたいなもんですからね。頼まれたら「はいはい」って股を開くんですけど(笑)。今まで携わった番組で、本当に自分のやりたいことができたのは、悲しいことにゴールデンでは一つもないです。テレ東深夜とかBSスカパーとかDVDだとか、メディアのはじっこばっかりです。なので自分のスタンスは、地上波ゴールデンっていうテレビの繁華街から2ブロックくらい離れた路地裏で、爆竹バンバン鳴らしてるイメージです。一応、目立ちたい気持ちもあるっていう。

―― そういえば『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!で放送中)もありましたね。僕、あの番組大好きだったんですよ。

竹村:ありがとうございます!

―― 竹村さんが『BAZOOKA!!!』と『赤羽』をやってる情報をなんとなく知って、絶対この人面白いって思ったってところもあったんですよね。

竹村:あれは地上波ではできないですよね。…っていう言葉も最近寒いんであんまり言いたくないんですけど。でも昔から王道より邪道が好きですね。マイナー志向って、たぶん一生治らない病気なんですよ(笑)。

―― でも王道のものじゃない、例えば山田孝之シリーズもそうなんですけど、ちょっとくすっと笑えるようなお笑いって昔はあったじゃないですか。例えば、松本人志さんの『ひとりごっつ』とか。

竹村:基本、番組を作る時の指標って、“面白いか面白くないか”なんですよ。それは当たり前なんですけど。あと最近だと“ためになるかならないか”。でも、そこは僕より上手い人はいくらでもいるし、そっちはお任せしますと。僕はどっちかというと、“観たことあるかないか”が基準ですね。新しいか新しくないか。そう考えてる人が1人ぐらいいてもいいんじゃないかって思うんですけど、そこに軸足を置くと、必然的に邪道でマイナーになっていくという。

―― なるほど。『赤羽』の後に『山田孝之のカンヌ映画祭』があって、その後によりびっくりしたのは、『緊急生放送!山田孝之の元気を送るテレビ』でした。

竹村:生放送なのになぜかDVDが出るっていう(笑)。

―― 元々は『山田孝之の演技入門』という番組名だったのに、直前になっていきなり「番組のタイトルが変わりました」って報せが流れて驚きました(笑)。

竹村:『赤羽』、『カンヌ映画祭』を通して、12話のドラマ方式はやりきった感があったんで、第3弾として別の見せ方で何をやろうかって話になって、やっぱりテレビの原点って生放送だよねっていうことになりまして。

―― 司会を務めた、いとうせいこうさんもよく快諾してくれましたね。

竹村:僕の憧れの人だったので絶対やってほしくて。決まった時はうれしかったですね。

―― これはいとうせいこうさんが2000年代に司会を手がけていた『虎の門』あたりの影響ですか?

竹村:せいこうさんを認識したのは『虎の門』より全然前ですね。出会いは中学生の頃で、せいこうさんの『難解な絵本』を読んで衝撃を受けた時です。

―― ロケも豪華でしたね。瀬戸内海の島をヘリから空撮したり。

竹村:大赤字ですよ(笑)。

米田:映画監督の紀里谷和明さんもゲストに呼んだり。

竹村:紀里谷さんはいつか山田孝之と一緒に仕事がしたかったそうです。まさかあんな仕事だとは思ってなかったでしょうけど。

―― あと、途中で出てくるバンドもすごくかっこよかったですね。

竹村:そこは僕らこだわりました。ふざけた内容だからこそ、ライブは本当にかっこよくないといけないなーと思って。「溺れたエビ!」は、前に『BAZOOKA!!!』でライブをやっていただいたときにシビれまして。で今回「音楽どうするか」って話になったときに、せいこうさんが「溺れたエビ!がいいんじゃないか」って言ってくれて、バシッとハマりました。

「100%リアル」なドキュメンタリーはそんなに面白いか?

―― 竹村さんが台本とか企画を作っていく中で、「ここまでは台本として事前に決めておかないきゃいけない」というのは、どういうふうに決まっていくんですか?

竹村:僕、自分のことを興行師だと思ってるんです。戦いの場所を用意してあげて、リングに立つ人を用意して、正義の味方とか悪役とか、それぞれのスタンスだけ決めてあげるんですよ。あと、戦いの後こうなるっていうゴールを設定してあげるだけですね。なんとなくの頂だけ決めておいて、その登山ルートは勝手にどうぞという感じです。

台本には、「5合目、7合目だけには辿り着いてね」みたいなのを書いておくんですけど、そこが大事だとはわざわざ言わないですね。勝手に読み取ってくださいって。山田孝之は上手く読み取ってくねくね行くんですけど、結局最後はヘリで降りてくるみたいな(笑)。でもそれが面白いんです。

―― じゃあ、例えば『赤羽』で山田さんが出会う人たちはみんな地元の素人さんだったりするわけですけど、その会話の内容とか、演出の方法もある程度大枠はあったりするわけですか?

竹村:例えば山田さんと○○さんの絡みのシーンがあるじゃないですか。あれは△□✕○で……。

―― ……その話、めちゃくちゃ面白いですね(笑)。でも書いちゃって大丈夫ですか?

竹村:うーん…。ちょっと松江さん・山下さんにも相談してみますね。

(竹村さんがその場で電話をする)

竹村:ごめんなさい。『赤羽』『カンヌ』『元気を送るテレビ』の裏話は全部NGにさせてください(笑)。

―― えーっ! この間30分ぐらい、めっちゃイイ話をしてくれてたじゃないですか(笑)。

竹村:さっきも話した通り、スタッフの想定通りに進まないことの方が多いし、だからこそ面白くなるんだ、というぐらいにしておきましょうか。

―― まぁ確かに、バラエティ番組とかフェイクドキュメンタリーみたいな、映像メディアだけがそういう方法論を採用してるかと言えばそうではなくて、今僕のこの発言箇所も編集部の別のヤツがインタビュー後に書き足してますし、「竹村さんが電話をした」というのも実際には後日やってくれたものを、この場でしていることにしています。つまり、このインタビュー自体もお互いの発言内容が100%ありのまま反映されているわけではない、という意味では完全なリアルなどないとも言えます。

竹村:そうですよね。だって僕も今、下半身を露出してインタビューを受けてますけど、それが本当かどうかはわからないですもんね。さすがに話者の主張とか発言内容が真逆になってたりしたら問題ですけど、全体のゴールが決まっていればその過程は“100%リアル”でなくても、よりわかりやすくしたり、面白くするための介入はすべきだと思います。

インタビューが終わると竹村氏はパンツとズボンを上げて帰っていった。

―― そうですね。しかも、突き詰めていくと長回ししたものをそのまま使ったとして、じゃあそれが話者の完全な本心かと言えば大抵そうではない部分がありますし。一方、そうしたもののカウンターとして生配信みたいな無編集モノの人気が一定数あるのもわかりますけどね。

竹村:そういう意味では松江さんと僕の相性は抜群にいいと思っていて。松江さんはカメラを1回も止めないで1時間ぐらい回してるとか普通にあるんですよ。舞台みたいに。松江さんはドキュメンタリー、僕はバラエティっていう出自ですけど、ある程度設定を決めた中で自由にやるっていう意味では結構似てると思ってるんですよね。松江さんとはまだまだ色んなことができると思っています。ただあまりにも一緒にいるので、松江さんの奥さんには愛人だと思われてるみたいですけど(笑)。


(後編に続く)

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