文:山田山太
決め手はホッキョクグマへのリスク
2018年、エネルギー政策の規制緩和に乗り出したドナルド・トランプ大統領は、アラスカ州北部に位置するボーフォード海にて、エネルギー企業ヒルコープ・アラスカが石油採掘を行うプロジェクトを承認した。しかしすぐさま、石油採掘設備の建設は環境への負荷が非常に大きいと猛反発が巻き起こり、複数の環境保護団体がヒルコープ・アラスカに対し訴訟を起こした。この海域では、絶滅危惧種のホッキョクグマをはじめ6種のクジラ、3種のアザラシ、アシカ、ラッコ、セイウチなどが生息しているのだ。
そして昨年12月、米連邦控訴裁判所は環境保護団体らの訴えを認め、トランプ大統領の承認を却下した。裁判所は、国家環境政策法で義務付けられているプロジェクトによる気候への影響が適切に考慮されていないと判断。さらに、この海域に生息しているホッキョクグマへのリスクを、米国魚類野生生物局が適切に測定出来ていなかったことが決め手になったとのこと。
訴訟を担当した弁護士のジェレミー・リーブ氏は、「今日の裁判所が、このプロジェクトの気候への影響に関する、行政の不正確で、誤解を招くような分析を却下したことを嬉しく思う」と声明で述べた。
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