CULTURE | 2020/11/11

「出産しない育児」の選択の先にある幸せとは?特別養子縁組のリアル

年々少子高齢化が叫ばれる中、昨年ついに過去最低の出生数(86.4万人※)となった日本。
女性の社会進出とともに高齢出産...

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年々少子高齢化が叫ばれる中、昨年ついに過去最低の出生数(86.4万人※)となった日本。

女性の社会進出とともに高齢出産の割合が増える一方で、不妊治療件数※も増加している。

菅総理も不妊治療の保険適用の実現を明らかにしているが、長きに渡る辛い不妊治療の末、子どもが授からないケースも少なくない。

そうした現状の今、子どもを出産せずに授かる制度「特別養子縁組」が改めて見直されている。

8月末に行われた「セルフパートナーシップBOOK」企画のオンラインセミナー「出産しない子育て」にゲストスピーカーとして登壇したのは、「特別養子縁組」により2児をもうけて育児をする、デザイナーのセキユリヲさん。

「特別養子縁組」で子ども授かったセキさんのリアルな話を伺った。

※厚労省:令和元年(2019)人口動態統計の年間推計

※国立社会保障・人口問題研究所:2015年実施の「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」

取材・文・構成:庄司真美 取材協力:セルフパートナーシップBOOK、新しい家族のカタチを考える会

セキユリヲ

グラフィック・テキスタイルデザイナー/雑貨ブランド「サルビア」主宰

多摩美術大学卒業後、グラフィックデザイナーとして活動。雑誌『みづゑ』『edu』『かぞくのじかん』等のアートディレクターをつとめる。児童書や書籍の装丁、資生堂のパッケージデザイン、小児病院や旅館の空間デザインなど仕事は多岐にわたる。2000年に「ささやかだけれど、生活をたのしくするもの」をコンセプトにした雑貨ブランド「サルビア」を立ち上げ、長年に渡って描きためてきた図案をもとに、洋服やインテリア雑貨、本づくりなど、さまざまなコラボレーションを実現。私生活では6歳と3歳の子どもを特別養子縁組で授かり、自主保育をしながら子育てを楽しんでいる。2020年、特別養子縁組などあらたな家族のあり方を考える「新しい家族のカタチを考える会」を発足。

海外と比較しても、圧倒的に少ない日本の「里親委託率」

データ作成:セキユリヲ

冒頭では、命を受けたのに親の都合で育ててもらえない子どもが国内に4万4000人もいるという事実をデータで示すセキさん。

登壇者は、特別養子縁組で授かり、育児中のデザイナー、セキユリヲさん。

また、日本でどれだけ養子縁組が珍しいかを示すデータとして、セキさんが冒頭で紹介したのは、社会的養護の現状について、里親委託率を国際比較した(厚労省)データである。

データ作成:セキユリヲ

オーストラリア(93.5%)を筆頭に、アメリカ(77%)、イギリス(71.7%)、カナダ(63.6%)、香港(79.8%)と高い水準だが、日本の里親委託率はたった12%。経済協力開発機構(OECD)加盟国中、日本は最下位となっている。

実際に日本では血縁にこだわる慣習が根強く、特別養子縁組で育てられるケースは肌感覚でも珍しいと思う。

データ作成:セキユリヲ

一方、養子とひと口に言っても、さまざまな制度があることを説明するセキさん。

「特別養子縁組」とは、子どもを一生涯に渡り安定した家庭で特定の大人に愛情をもって育てられるために作られた制度のこと。

「普通養子縁組」は生みの親と育ての親に親子関係が残る制度で、ひと昔前は家の相続のためにこの制度がよく使われていた。また、「里親」は子どもを18歳まで預かって愛情をもって育て、自立を進める制度だという。

次ページ:養子縁組が成立するまでの長い道のり

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