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「トランプが負けたら世界は中国に支配される」は本当か?「民主主義だってダメじゃん」をギリギリ回避するための日本的中庸思考【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(8)
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  • 2020.11.07
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「トランプが負けたら世界は中国に支配される」は本当か?「民主主義だってダメじゃん」をギリギリ回避するための日本的中庸思考【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(8)

3:今後10年のアメリカの最大の対決軸は、「極左VS中道」になる

Photo by Shutterstock

今回の選挙でアメリカ大統領選挙の特殊すぎる仕組みを深く知った日本人も多かったと思いますが、この「特殊な制度」はそのまま状況の変化を「特殊な形」で反映するようになっています。

特に、年々接戦になっていくテキサス州とか、今回1992年以来!に民主党が取りそうなジョージア州(11月7日現在、票の再集計がなされる可能性もあるそうですが…)とか、昔は「絶対に共和党以外ありえなかった」州にIT産業が起こってリベラルな知的人材が大挙して引っ越してきたりすることで、かなり民主党が有利になってきている事情があります。

それでなくても若年人口が先進国としてはメチャ多いアメリカ、白人以外の人種がどんどん増えるアメリカ…の中で、「トランプ的な共和党カラー」が制度的に勝ちづらくなっていく未来は容易に見通せるわけです。たとえばテキサスがさらに州内大都市のIT産業が隆盛して安定的に青くなる民主党時代になったりすれば、トランプ的共和党が現状の選挙制度で大統領選を勝つのはかなり難しくなります。

単純化して言えば、

「極左主義の非現実的な暴走は誰かが止めないとアメリカが崩壊する」

けれども、

「だからといって時代遅れの白人至上主義とか、あまりにも非科学的な態度の賞味期限はもうすぐ切れる」

という状況が、今後10年のアメリカの基調になっていくだろうということです。

ではその中で「日本」が掲げていくべき旗印はどういうものでしょうか?

4:日本の「カメ」的なあり方が再評価されつつある

先日、慶應大学の国際政治学者、中山俊宏教授が参加された国際シンポジウムで、アメリカのシンクタンク「CSIS(戦略国際問題研究所)」所長のジョン・ハムレ氏が、「アメリカの混乱時代を、安倍政権時代の日本外交が現実に繋ぎ止めてくれた」というような発言をされていたそうです。

「日本じゃあ安倍政権をちょっとでも評価するなんて極右の狂人たちに違いない!」みたいなことを脊髄反射的に考えちゃうグループもいますが、CSISは民主党・共和党にも偏らない超党派の中道シンクタンクで、世界ランキング的にもかなり上位の「マトモな」団体です。

これはちょっとした一例ですが、「イデオロギーで狂っていない人たち」の間では、安倍政権時代の安定的な日本外交がもたらした世界情勢の安定化効果を評価するこのような声は結構あちこちであるんですね。

要するに日本は過激な極左主義に対する警戒感が物凄く強いお国ガラではあるわけです。色んな現実的情勢判断をすっとばして「安倍辞めろ!」「菅辞めろ!」「こんな日本で暮らすなんて地獄だわ!」と騒ぎたいタイプの人から見たらちょっと生きづらいタイプの国ではあるかもしれない。

要するに、過剰に

「どうだ!俺たちこおおおんんな小さなことまでちゃんと配慮できるなんて、すげえ意識高い国だろぉ!?」的なことをアピールして他国にマウンティングしまくる

…みたいな傾向には懐疑的だからこそ、でも自由で安定的な国際秩序をそれなりの責任感を持って保持し、中国のような物凄い強権的な政体が周囲を威圧しようとするムーブメントに対して、ちゃんと対決していこうとする今の国際的コンセンサスを作り上げるところまで地道にやってこれた。

「ウサギとカメ」的な話で言えば、ウサギ的に「意識高いアピール」はしないけど、「カメ」的な意味で「自由主義社会の崩壊を地道にふせぐ」役割を果たしてきた価値はあるわけです。

過去20年、過激な「社会の気に食わないところは全部“敵のあいつらのせい”だという他責性のモンスター」のような意識高い系のムーブメントの世界的席巻時代には、日本のそういう「カメ」的な態度があまりにも時代遅れで考え方が古いように見えた時代もありました。

しかし世界中で政治が「両極化」し、社会に何か問題があるとすればそれは「全部敵側のあいつらが悪い」と騒いで見せるだけの無責任さが溢れかえってしまっている時代に、日本の「カメ」的な性質が持つ意味は今後大きくなっていくでしょう。

世界の対決軸が「右VS左」だった時代には、日本はそのどちらにも全力では参加できずに「あらゆる変化を拒絶してじっとしている」必要がありました。

しかし時代の対決軸が「極左VS中道」であるならば、日本はその時代の「あるべき主役」にすらなれるでしょう。

これは以前私の著書で使った図なのですが、

あらゆる「社会の問題は全部敵側のあいつのせい」というようなムーブメントに懐疑的だからこそ、「現実レベルでちゃんと変わっていく」ことが可能となる…。

そういう旗印を掲げ、そしてその旗印の中で現実に日本社会をちゃんと一歩ずつ変革していくとき、「各国内の無責任な過激主義に困っている」あらゆる国にとって「頼りになる旗印」を日本が掲げることが可能となります。

次ページ:対中国の旗印はアメリカ頼りでなく自分たちで掲げるべき

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