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ものづくりの異能集団が刻む機械仕掛けの未来 田井地直己×木村匡孝(TASKO)【連載】テック×カルチャー 異能なる星々(13)
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  • 2020.04.07
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ものづくりの異能集団が刻む機械仕掛けの未来 田井地直己×木村匡孝(TASKO)【連載】テック×カルチャー 異能なる星々(13)

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加速する技術革新を背景に、テクノロジー/カルチャー/ビジネスの垣根を越え、イノベーションへの道を模索する新時代の才能たち。これまでの常識を打ち破る一発逆転アイデアから、壮大なる社会変革の提言まで。彼らは何故リスクを冒してまで、前例のないゲームチェンジに挑むのか。進化の大爆発のごとく多様なビジョンを開花させ、時代の先端へと躍り出た“異能なる星々”にファインダーを定め、その息吹と人間像を伝える連載インタビュー。

有名アーティストの作品から、ロボットバンド、古代ラピュタ人の飛空挺、イベントやライブのカラクリ仕掛けまで。最先端の“テクノロジー×アート”領域を中心に、誰に頼めばいいかわからないアイデアをかたちに変えてくれると噂の異能集団、株式会社TASKO。

なぜ、彼らはものをつくるのか。秘密基地めいた拠点を訪ね、代表取締役の田井地直己と、設計制作事業部 工場長の木村匡孝を直撃。機械仕掛けから美術、舞台、ウェブの制作、企画・プロデュースを1社でこなす全方位型の「ニューものづくり工場」、その核心に肉迫する。

聞き手・文:深沢慶太 写真:増永彩子

田井地直己(たいち・なおき)

株式会社TASKO 代表取締役兼プロデュース事業部長。吉本興業株式会社でアートユニット・明和電機のマネージャーを務める。2012年に武蔵小山でTASKOを創立し、プロデュース事業部を担当。16年には祐天寺ファクトリーをオープンするなど規模を拡大しながら、「様々なものづくりをサポートする会社」というイメージで会社をまとめてきた。

木村匡孝(きむら・まさたか)

株式会社TASKO 設計制作事業部工場長。アートユニット・明和電機の工員を経て独立し、東京KIMURA工場を設立。2012年、TASKO創立に参加。いわゆる“バカ機械”や、誰に頼んでいいかわからない機械の受注生産、他ジャンルとのコラボレーション、テクニカルディレクションなど、電気と機械にまつわる業務を行う。

株式会社TASKO

「明和電機」出身者が設立した、全方位型「ニューものづくり工場」

株式会社TASKO代表取締役兼プロデュース事業部長の田井地直己(右)、株式会社TASKO 設計制作事業部工場長の木村匡孝(左)。

—— TASKOはお2人をはじめ、アートユニット「明和電機」に所属していた4人のコアメンバーによって設立されたそうですが、明和電機といえば魚の骨の形をした電気コード『魚コード(ナコード)』、音符型の楽器『オタマトーン』などの“ナンセンス・マシーン”や、それらの機材を駆使したパフォーマンスが思い浮かびます。もしかしてTASKOにも、その文脈が受け継がれているのでしょうか?

田井地:はい。それを表現したのが、僕たちが掲げている「21世紀型総合アートカンパニー」や「ニューものづくり工場」といった言葉です。わかりやすく言えば、制作会社でありながら裏方だけでなく、自分たちの“ものづくり”も発信していこうということですね。創業メンバーには他にデザイン&ウェブ事業部の織田洋介と舞台制作部門の正田達也がいますが、明和電機では木村と織田は製作、正田は舞台、僕はマネージャーを務めていました。といっても雑用に始まり、ものづくりからステージ出演まで、全員で何でもやる感じ。それぞれ在籍期間はバラバラで、僕は2000年入社ですが、TASKO設立後も明和電機にはお世話になっています。

木村:僕が明和電機に入ったのは田井地の少し後ですが、まさにカオスでした。『魚コード』や楽器などのヒットを受けて大規模な展覧会をやることになり、作品づくり、カタログ制作、さらにあちこちでライブも開催したりと、2日に1回は徹夜してましたね。

田井地:昔、あまりに寝不足過ぎて木村がぶっ倒れて、僕が「救心を買って来い!」って言われて飲ませたこともある(笑)。中でも過酷だったのは海外ツアーで、機材トラブルはもちろん、現地スタッフに音響や照明の指示出し、最後の曲だけステージで踊ったりと、一瞬たりとも気が抜けない。でもそれで鍛えられて、今があるという感じです。

国内外を巡回して開催された「ジブリの大博覧会」で展示された、映画『天空の城ラピュタ』の飛空挺。TASKOは機械演出を手がけた。(2016年、六本木ヒルズ展望台 東京シティビューでの展示風景) ©Studio Ghibli

—— 明和電機をいったん卒業してフリーランスになるなどしながら、再び結集して会社を設立することにしたのは、なぜでしょうか?

田井地:「このメンバーのスキルを集めたら、絶対に勝算がある」と考えました。1人でできることには限界があるけれど、それぞれの得意分野を集約することで、マンパワーとお金、そして場所の問題を解決できるはずだと思ったんです。それで2012年に武蔵小山でTASKOを設立しました。

木村:僕はいったん独立して、「東京KIMURA工場」として活動しながら明和電機の仕事も続けていたんですが、1人でやるのは自由な半面、規模や物量的に制約も大きいと感じていました。そこへ田井地が「会社を作ろう」と声を掛けてくれて。いざ立ち上げてみたら、違う業種の人同士が同居する状況がひたすら楽しかった。ただ、最初の1カ月は完全にヒマで、ひたすら社内の壁を塗り続ける日々でした(笑)。

田井地:仕事が来るようになったのは、世の中の流れとも関係があると思う。メディアアート作品のように動いたり光ったりするような仕掛けが増えてきて、みんながやってみようと思い始めた頃。まさに時代の波に乗った感じです。

日本科学未来館の常設展「世界をさぐる」の展示「100億人でサバイバル」より。TASKOはゾーン2「地球システムモデル」のデザインと製作を手がけた。(2016年の展示風景)

“テック×アート”の波に乗り、レベルアップを繰り返す

TASKO 祐天寺ファクトリー1階の工房にて、ボール盤で加工を行う木村工場長。多種多様な材料や工具、3DプリンターやCNCなどのデジタル工作機械を臨機応変に駆使してものづくりを行う。

—— 12年というと、ライゾマティクスが演出を手がけたPerfumeのパフォーマンスなど、テクノロジーとエンターテイメントの融合領域に注目が集まり始めた頃でしょうか。

木村:そうですね。ライゾマもそうですし、その界隈の知り合いと頻繁に情報交換をする中で、仕事が来るようになっていって。ラッキーだったのは、機械的な仕掛けに特化した人がいなかったこと。うちは展示用の鉄枠に始まり、展示本体の機械も作りますし、動かし方の提案だってやります。打ち合わせをしているうちに「ウェブ制作もステージ演出も、全部うちでできますよ」というケースがたくさん出てきて、社内で一緒に取り組む案件がどんどん増えてきた感じです。

田井地:その中でうちの強みはどこにあるかと考えると、多領域の集団でやっているところ。メディアアートであれば、アーティスト自身にも技術はあるけれど、自分で作ろうとすると1年近くかかってしまう。でも、うちであればそれを展示や広告系のプロジェクトの制作期間に即した形で実現できますし、アーティストの「こういうものを作りたい」という気持ちを汲み取って、着地点の提案をすることもできますから。

『パフューマリー・オルガン』。19世紀イギリスの化学者が提唱した香りの記述方法「香階」に着目し、オルガンを弾くと香階に基づいた香りが奏でられるメディアアート作品。TASKOは設計製作を手がけており、これまでに「Media Ambition Tokyo 2018」などで展示された。(2017年、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]での展示風景)

木村:だからこそ、企画の相談を受けた時は「これはダサいです」とか、はっきり意見を言いますね。クライアントとしてはいいと思っていても、作ってみてダサかったら取り返しが付かない。そうやって現実的な話を詰めていく中でイメージが膨らんで、当初の予想を超えて面白いものができあがることもあります。

田井地:面と向かってはっきり言い過ぎるから、こっちはハラハラさせられる(笑)。あと、他の会社で「できない!」ってなって、最終的にうちに来ることも多いよね。

木村:そういうのは大抵ギリギリだから「最初から相談してくれていれば……」って思いますけど。とはいえ、うちも発足当初は技術的にはまだまだで、常に手探りの状態でした。僕も「みんなが話している『Arduino(アルドゥイーノ/※1)』って何だろう?」というレベルだったんですが、NHK「紅白歌合戦」に出場したももいろクローバーZの衣装を制作した時に、初めてArduinoを使ってみて。胸の部分が開いて光る仕掛けだったんですが、本番直前までなかなか安定せず、他のアーティストの仕事で来ていた知り合いに助けられて、事なきを得ました。ものづくりの世界にはトラブルが付き物の一方で、助け合いの意識がある。それに助けられてきた部分は多大にありますね。

田井地:まさに“メイカームーブメント”真っ盛りの頃の話だね。その頃で言うと、制作に参加した「Z-MACHINES」も話題になりました。これはZIMAのプロモーションで結成された、ロボットがギターを弾いたりドラムを叩いたりするソーシャル・パーティ・ロボットバンドで、大きな反響がありましたね。

(※1)「Arduino(アルドゥイーノ)」…電子工作に使われる、入出力ポートを備えた小型マイコンボードの名称。

落合陽一を総合監修に迎えた日本科学未来館の常設展示「計算機と自然、計算機の自然」。TASKOは計算機と自然が作り出す“大きな自然”の体感型展示作品群のうち、約半数の設計製作を手がけた。(2019年の展示風景)

「誰に頼んだらいいかわからない」特殊案件を次々に実現

TASKO 祐天寺ファクトリー4階のキッチンリビング。TASKOのスタッフだけでなく、関係先の劇団スタッフらが利用するなど、多彩すぎる目的に対応する。

—— こうしたアイデアを実現するには、多領域に及ぶ技術を結集する必要があると思います。プログラミングからメカの機構、動きの制御まで、工程全体でどこに何の技術が必要かを見通すことのできる人の存在が重要ですね。

木村:細かい専門領域が多くなってきている分、全体を見渡して、技術分野ごとにスタッフを采配していく必要がありますよね。その点、うちには大工もプログラマーもいますし、社外にも腕の立つ知り合いがたくさんいる。最終的な仕上がりの部分に関しても、社内に美術部ができたのでカバーできますし。

田井地:そこのところは明和電機で鍛えられていますから。アーティストやクライアントの「作りたい」という気持ちや作家性に寄り添いながら、一緒に突き詰めていく姿勢が大切だと思います。落合陽一さんが総合監修を務めた日本科学未来館の展示「計算機と自然、計算機の自然」にしでも、単に受け身でこなすのではなく、落合さんの作家性を自分たちなりに理解して実現する心構えで取り組みました。

「ジブリの大博覧会」で展示された、映画『天空の城ラピュタ』の飛空挺。TASKOは機械演出を手がけた。(2017年、大分県立美術館での展示風景)      

木村:勉強になったのは、「ジブリの大博覧会」。映画『天空の城ラピュタ』に登場する「タイガーモス号」や飛空挺などを制作したのですが、この飛空挺はオープニングのシーンでほんの数秒登場するだけの存在にもかかわらず、「オールの動きをもっとこうして……」といったふうに、関係者全員がそれぞれにこだわりと愛情を持って一緒に作り上げていく感覚がありました。

田井地:あと思い出深いのが、銀座の資生堂銀座ビルのウィンドウ用に制作したキネティックアートの作品シリーズ。クライアントにも「実験的なことをやってほしい」という意気込みがあったからこそ、僕たちとしても攻めたものづくりができました。

木村:機械的な仕掛けには実験的であればあるほど、途中でトラブルが起こるリスクが付きもので、これまでは不安定な作品は後々トラブルになることも多く、チャレンジングな企画はお互い敬遠しがちでした。でも近頃は資生堂さんのようにそれを許容して新しい作品を作っていきたいと考えてくださるクライアントが増えてきて、ありがたい限りです。  

銀座の資生堂本社ビル1Fウィンドウに展示された、回転に応じて形が変化するキネティックアート作品『香りの形』。TASKOは企画から制作、演出までを手がけている。(2017年)

バーチャルよりリアル。ものづくりの楽しみここにあり

TASKO 祐天寺ファクトリー3階、無数の制作物や資料、観葉植物などに囲まれた社長席に座る田井地代表。

—— VRやMRなど、視覚的な表現がこれだけ発達した時代だからこそ、例えコストがかかって技術的に難しくても、実在する物体を動かすことが意味を持つように思います。

田井地:映像表現が溢れている時代だけに、屋外にせよ展示空間にせよ、人に足を止めてもらうためには映像よりも形があるもののほうが有効な状況だと思います。一方でものづくりは、頭に思い浮かんだものを形にするまでに、無数の工夫やトライ&エラーを繰り返していかなければならない。その工程があるからこそ、「なんだろう?」と思わせる印象や、謎めいた存在感を発揮できるのかもしれないですね。

木村:20世紀は“映像の世紀”だと言われましたが、今は何と言っても21世紀ですからね。個人的にも、自分が大学生の時に小渕恵三総理が「IT革命だ」と言い出して以来、ずっとデジタル全盛の時代が続いてきたと思うんです。その中でも自分は好きで機械を作り続けてきて、ここ10年で両方の要素が一気に融合してきた印象ですね。

銀座の資生堂本社ビル1Fウィンドウに展示されたキネティックアート作品『Wording from Shinzo Fukuhara』。資生堂の初代社長・福原信三の言葉を、LED表示や動きなどで表現した作品。TASKOは企画から制作、演出までを手がけた。(2019年)

田井地:例えば、料理を映像やバーチャルで再現するのと、実際に味わうのは全然違う。僕としてはたとえ手間がかかっても、調理して器を決めてきれいに盛り付けをして食べる方がいい。だから、うちはあくまでリアルで行きますよ。プロジェクションマッピングとVRゴーグルには負けないぞ! ってね。

木村:映像と機械の対比でいうと、機械の方が遙かに歴史が古いんです。例えば、ガスタービンエンジンの発想は紀元前に遡りますが、実装できたのは20世紀になってから。そんなふうにまだ実現できていないアイデアがいっぱいあるから、あと100年位はストックがあるんじゃないかな。……でも個人的には「VR楽しいな」という思いもあるんだけど。

田井地:なんやねん! 話がひっくり返ってるやんけ(笑)。

木村:パソコンのスペックが良くなって物理シミュレーションが簡単に使えるようになってきたから、試作できないくらい巨大だったり複雑なものをVR上で試せたらいいなと思っていて。それで今、「Unity」(※2)を勉強し始めています。

品川区内の多彩なアーティストや企業がチームを組み、しながわ中央公園を1日限りのアート空間に模様替えするカルチャーイベント「GOOD PARK ! 〜アート、音楽、遊び、発明〜」。2018年の第1回より、TASKOのスタッフ総出で企画から運営、設営、デザインまでを担当し、音楽ライブやアートパフォーマンス、ワークショップ、マルシェなどを展開。今年も開催予定。(2019年の開催風景)

田井地:なるほど、要はアナログとデジタルのバランスですね。「ものづくりは楽しい」これに尽きるし、うちの組織作りにもつながる部分があると思う。一言でいえば「よい暮らし、よい組織」かな。

木村:何ですかそれ?(笑)。

田井地:スタッフそれぞれが、それぞれのいい生活を作り上げていくことにこそあるってこと。長くなるので、この話はまた今度にしましょうか(笑)。

(※2)「Unity」…「Pokemon GO」や数々のインタラクティブコンテンツ制作に使用されて注目を集めているゲーム開発プラットフォーム。

TASKO 祐天寺ファクトリーの屋上にて。


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