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祝来日!世界最強のバンド、U2は結局のところ何がスゴいのか(前編)【連載】西寺郷太のPop’n Soulを探して(14)
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  • 2019.10.31
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祝来日!世界最強のバンド、U2は結局のところ何がスゴいのか(前編)【連載】西寺郷太のPop’n Soulを探して(14)

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12月4日・5日、さいたまスーパーアリーナで、グラミー賞を22回受賞(46回ノミネート)、アーティストグループでの世界最多受賞記録を持ち、累計セールス1億5000万枚以上を誇る“世界最強のロックバンド”U2が実に13年ぶりの来日を果たします。

U2の今回の「The Joshua Treeツアー」は1987年にリリースされたアルバム『The Joshua Tree』の30周年を記念して2017年から始まったツアーの続編です。僕(米田)はこのツアーの初日のバンクーバー公演を観に行ったんですが、全米・全英1位を獲得し、文字通りU2が天下を獲ったこのアルバムの素晴らしさを改めて噛み締めた感動的なライブでした。しかし、ツアーは北米と欧州・南米(前座はベック!)でしか行われず、その次はニューアルバム『Songs of Experience 』の発表に合わせたツアーがまたもやオセアニアとアジア以外で始まってしまい、その地域以外のファンはみな「なぜU2来てくれないんだ!?」とやきもき。ところが、今年に入り、「The Joshua Treeツアー」の続編がオセアニアとアジアで開催されることが発表され、日本でも2日間ライブが行われることになりました。

今回の郷太さんとの対談ではかなりの「ネタバレ」が含まれていますが、記事を読んでもライブで十分歓喜できることと思います。日本公演初日には僕と郷太さんは一緒にライブを観に行くことになり、今から期待で胸がワクワクしています。

聞き手:米田智彦 構成:久保田泰平 写真:有高唯之

西寺郷太(にしでらごうた)

1973年、東京生まれ京都育ち。早稲田大学在学時に結成し、2017年にメジャー・デビュー20周年を迎えたノーナ・リーヴスのシンガーにして、バンドの大半の楽曲を担当。作詞・作曲家、プロデューサーなどとしてSMAP、V6、岡村靖幸、YUKI、鈴木雅之、私立恵比寿中学ほかアイドルの作品にも数多く携わっている。音楽研究家としても知られ、少年期に体験した80年代の洋楽に詳しく、これまで数多くのライナーノーツを手掛けている。文筆家としては「新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書」「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い」「プリンス論」「ジャネット・ジャクソンと80’sディーバたち」などを上梓し、ワム!を題材にした小説「噂のメロディ・メイカー」も話題となった。TV、ラジオ、雑誌の連載などでも精力的に活動し、現在NHK-FM「ディスカバー・マイケル」、インターネット番組「ぷらすと×アクトビラ」にレギュラー出演中。

NONA REEVES

ライブの1曲目から……その昂揚感たるやものすごいものが!

西寺:米田さん、U2の今度のツアー、ソウル公演(12月8日)も行くんでしょ?

米田:行きますよ。その前の11月のシンガポール公演にも行って、そこから12月の日本公演ですね。僕、u2.comのワールドのファンクラブに入ってて、日本の先行発売よりも先にチケット買えるんで、今回、郷太さんの分も取れたんですよ。

西寺:嬉しいですよ。お誘い、ありがとうございました(笑)。

米田:最近、プリンスとかデヴィッド・ボウイとか、まだ若いのに亡くなってしまう大物アーティストが多いじゃないですか。だから、メンバーが生きているうちに行っておかないと思うようになって。まあ、U2のメンバーは来年みんな60歳くらいなんでまだ大丈夫だとは思いますが。なんてったって4年に3回もワールド・ツアーをやっているんですよ。ボノも「正気の沙汰じゃないよね」って自虐的に言ってましたけど(笑)。

西寺:4年に3回! でも、日本まではなかなか来なかったんですね。

米田:そうですね、彼らのワールド・ツアーはいつも主に北米とヨーロッパなんで。ステージセットが尋常じゃないんで移動コストが大変なんですよ。だからアジアとかでやると赤字になってしまう部分もあって、これまで来れなかったんだと思います。でも、もちろん、ファンは世界中にいるんですよね。だって、今回はインドのムンバイでも演るんですよ!

西寺:今回は『The Joshua Tree』(87年発表のアルバム)の再現ツアーなんですよね。

米田:はい。2017年に30周年ということでやってるんですけど、今回はその続きで、2年前に回ってなかったオセアニアとアジアでやるんですよ。

西寺:なるほど。僕、チケットをゲットしつつ実は何もわかってないんですけど、『The Joshua Tree』以外の曲はやらないんですか?

米田:やりますやります! 最初は『WAR(闘)』(83年)とか『Unforgettable Fire(焔(ほのお))』(84年)あたりの曲を……で、ここでもうネタバレしちゃいますが、1曲目がなんと「Sunday Bloody Sunday」!彼らの初期代表曲ですね。アイルランドで起こったテロ事件へのプロテストソングです。

西寺:わっ!改めて言いますけど、知りたくない人は後で読んでください(笑)!米田さんのテンションが凄いんで(笑)。僕はめっちゃ知りたいから、どんどん来てください(笑)!まず、「Sunday BloodySunday」。

米田:郷太さんが好きなラリーのドラムから始まる曲ですよ。まあ、今回のツアーで変えてくる可能性はありますが。メインステージから花道でつながってるヨシュア・トゥリーの形をしたサブステージがあって、そこからライヴが始まるんですけど、このサブのBステージっていうアイデアを実現化させたのは実はU2なんですよ。その後、ストーンズとかもやりだしましたけど。ボノはそのBステージを発明したのは俺らだってよく発言しています。

西寺:めちゃくちゃすごいですけど、「俺らが考えた」ってしつこく主張するのが、いい意味でボノらしいですね(笑)。

米田:はい。あの人はそういう人ですから(笑)。そのBステージで「Sunday Bloody Sunday」。観客は一気に「ウォーッ!」ですよ。

西寺:もう観た気になってきました(笑)。

米田:で、後半には『Achtung Baby』や『All That You Can’t Leave Behind』とかの曲もやるんですけど、その前の中盤に、『The Joshua Tree』のアルバムの1曲目から11曲目まで順番に演るという。

西寺:それは!

U2の「 The Joshua Tree Tour2017」初日のバンクーバー公演直前。スクリーンが大きすぎて向こう側がまったく見えないほど。
Photo By Tomohiko Yoneda

米田:U2のツアー・プロダクションは毎回、世界最新鋭の技術、テクノロジー、アートを駆使することで知られてますが、今回は、ステージの後ろにね、高さ14メートル、幅61メートルの波を打った巨大なスクリーンを配置してるんですけど、これがまたすごくて。コンサート史上最大のスクリーンなんですよ。で、画質がなんど最高解像度の8K!

西寺:おおっ!

米田:それから、『The Joshua Tree』のジャケットを撮ったアントン・コービンっていう世界一のロック・フォトグラファーがスクリーンに映し出されるムービーも撮ってるんです。それをバックに1曲目から……その昂揚感たるやものすごいものがあって。「Where the Streets Have No Name」が始まる前に、その画面が赤一色になって、その前で4人が仁王立ちして、ボノが腕を上げるんですけど、その姿がすごく美しくて、なんか30年のメンバーの歴史を感じさせてくれてウルっときちゃうんです。

西寺:いやあ、めちゃイイですね。アントン・コービンは新宿駅で僕がU2と出会った時も、いましたもんね。凄い歴史ですよね。というか、信じられないくらいネタバレですけど(笑)、僕はむしろそういうのを知りたい方だし、今の話でますます行きたくなりましたもん。でもまあ、YouTubeでネタバレ動画がアップされちゃったりもするわけでしょ?

米田:そう、初日の公演が終わったら全部YouTubeに上げられちゃうぐらいのバンドなので、僕は身銭切ってワールドツアーの初日に行くようにしてるんですよ。事前情報なしで、「今回はどんなステージで来るかな?」「どんなセットリストかな?」とワクワクしながら「世界初」で観たいじゃないですか!

西寺:で、今回のツアーも実は行ってた、と。

米田:はい。2017年のバンクーバーに行きました。そこで一度体験はしてるんですけど、何回も体験したいっていうのがファンの心理で。日本のファンとも共有したいですしね、郷太さんともさいたまで感動を分かち合いたい(笑)。

西寺:今の話だけでもだいぶ分かち合いましたけどね(笑)。まあ、知りたくない人は読まないようにって、注意書きしておきしょうか、もう全然遅いけど(笑)。まあ、これ、より行きたくなるんじゃないですかね。生で観たくなる。

「最先端」ではないけれど「最新」とリンクできているU2のセンス

西寺:質問なんですけど、ボノにしてもエッジにしても、U2のメンバーは「都会派のスタイリッシュボーイか?」っていったらそうではないじゃないですか。アイルランドのダブリン出身で。U2がデビューした当時のイギリスは、アートスクール出身のバンド、デュラン・デュランとかあのへんのキラキラした優男がトレンドだったわけで。髪の毛カラフルに染めたりとか。「田舎の青年たちが政治的なことを歌ってる」ってイメージでしたよ。いいとか悪いとかじゃなく。

そういう出自なのに、なんでU2って80年代、90年代、2000年代、10年代と40年も結果モダンな身のこなしで勝ち残って来られたのか不思議に思うところもあるんですよ。Appleと組んだり、ケンドリック・ラマーとの共演とか。なんでそうもちょこまか40年間も最新のトピックやアーティストとリンクできるんですかね? やっぱりボノがすごいんですか?

米田:確かにボノの嗅覚はすごいです。常に新しいことにアンテナを張ってます。今を時めくEDMのユニット、ザ・チェインスモーカーズとも友達なんですよ! でも、実はU2は最先端ってわけでもないんですよね。デヴィッド・ボウイの「サウンド+ヴィジョン」ツアーやルー・リードがステージ上にテレビをたくさん置いてライブをやったことにインスパイアされたのが「ZOO TV」ツアーだったり、よくよく考えてみると純然たるオリジネイターっていうわけでもなくて、ネタ元があるんです。

西寺:なるほど。でも、それをさらにエンターテインさせてデカく展開するのがうまい!

米田:そう、エンハンスド(拡張)するというか、ひとつの種みたいなものを大衆に向けて広げるのがすごく上手なんですよね。それまで政治的なことを歌っていた硬質なギターバンドだったのに、『焔(ほのお)』ではダニエル・ラノワとブライアン・イーノに接触したのもボノの嗅覚ですよね。ニューウェーブのギターバンドが、アンビエントのイーノと組む、ってのは本当に意外で。ファンは一瞬戸惑ったと思いますけど、あのあたりから徐々に普通のロックバンドとは違う感じになっていきますよね。

西寺:あと、たまにあるパターンとして、完璧に打ち込みの世界に行く、みたいな。ギタリストがギターに飽きてプログラミングしかしない、みたいな感じも多かったんですよね。80年代とか90年代は、バンドがどんどんミニマムになって。ドラムマシーンやシンセサイザーでやれば済む、と。

でもU2は、エッジのギターでやれることはエッジのギターでやるっていう。今思えば、バンドとして当たり前のことなのかもしれないけど、あの激動の時代に一度もメンバーチェンジをせずに、そのときどきのトレンドにくっついたまんま懐メロにもならずに。凄いなと。なんでグラミーとか現役世代のボスみたいに、しょっちゅう出られてるの?っていう。

米田:グラミーのノミネート回数はバンドとしては最多ですからね。

西寺:やっぱりボノだったんですね。

米田:あと、重要なのは、UKのバンドって、UKで成功してそれで終わっちゃうことが多いんですよ。UKで成功して、それで天下獲ったって思っちゃうんですよね。で、U2はアイルランド出身の田舎者じゃないですか。それでUKのロックシーンにあまり入り込めなかったのが良かったんですよ。ちょっと言い方はアレですけど、UKに居場所がなかった状態でもあったと思うんですよね。

西寺:ああ、ロンドンの音楽社会は友達同士すぎてびっくりするって、当時のUK担当だったエピックレコードの沼田(洋一)さんが言ってました。あれは「長屋」だって。売れてるヤツはいつもこの店かこの店で呑んでるみたいな。顔見知りの仲間集団。そういうところにU2は入り込めなかったんでしょうね。

米田:U2には、ポール・マクギネスっていう敏腕マネージャーが就いていたんですけど、彼と一緒にいきなりアメリカを目指すんですよね。それが『The Joshua Tree』で成就するわけですよ。全世界トータルで3000万枚売れたのかな。当時のビルボードではもちろんNo.1になって、シングルも「With or Without You」と「I Still Haven't Found What I'm Looking For」が1位。『タイム』誌の表紙も飾って、「ビートルズの再来」とまで当時言われたわけです。余談ですけど、オアシス時代のノエル・ギャラガーが「単なるブリット・ポップの一部にはなりたくないんだ。U2みたいになりたいんだ」って発言してましたね。

『The Joshua Tree』が出たのは87年の3月で、僕が高校に入学する手前の春休みで暇な時だったから、毎日聴き込みましたよ。日本盤CDの帯に、「夢幻の大地に閃く尖光!!聖なる高みに駆け上った4人の若者達の感動の巨編」ってコピーが書いてあったのが印象的でした。

話がかなり盛り上がってきましたが、そろそろ長くなってきたので後編に回しましょうか。次回の公開は11月下旬の予定なので、いよいよ来日直前のタイミングですね!


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