BUSINESS | 2025/11/25

渋谷で新たに浮上した 「はみ出し喫煙」 問題 ― 5か月調査で見えた都市課題の現在地

次世代型喫煙所 「GOOD MANNER SPOT」 構想が示す、
都市インフラとしての新たな視点

FINDERS編集部

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喫煙所不足が生む「はみ出し喫煙」の実態と、渋谷で始まった次世代型喫煙環境の都市構想

渋谷の街で、路上喫煙や吸い殻のポイ捨てと並ぶ新たな課題として「はみ出し喫煙」が顕在化している。喫煙所まで足を運ぶものの、混雑のため所内に入らず周辺で喫煙する行為を指し、従来のマナー違反とは異なる構造的な問題として指摘され始めている。こうした喫煙環境の実態を明らかにするため、フィリップ モリス ジャパン合同会社一般社団法人渋谷未来デザインは、渋谷駅周辺8エリアにおける約5か月間の大規模調査を実施した。

2025年10月30日には、「SOCIAL INNOVATION WEEK2025」 内のトークセッションにおいて調査結果が報告され、行政、商店会、大学研究者らが登壇し、渋谷の喫煙課題解決に向けた議論が交わされた。調査では、喫煙所が 「見つけにくい」 「足りない」 「混んでいる」 という状況が路上喫煙やポイ捨てを誘発していることが裏付けられ、都市インフラとしての喫煙環境整備の重要性が浮き彫りとなった。

特に 「はみ出し喫煙」 については、過去にマナー違反経験のある喫煙者の93.4%が 「混んでいるから」 と回答しており、単なるモラルの問題ではなく、構造的なボトルネックとして位置づける必要があると指摘された。都市生活の変化とともに、喫煙者・非喫煙者双方の行動が交差する場所として、喫煙所そのものの機能が追いついていない現状が明らかになった。

東京都市大学の中島伸准教授は、都市課題に対応するには、エリア特性や時間帯別のミクロな視点が不可欠だと述べ、センター街と道玄坂などエリアごとに異なる来街者属性が示す課題の違いを強調した。さらに大学院生による提案では、喫煙所を災害時の電源として活用する構想や、環境配慮型のデザイン案など、未来の都市装置としての可能性も示された。

東京都市大学 中島伸准教授
東京都市大学 大学院生

行政側からは、来街者の増加に対する対策の遅れが課題として挙げられ、地域商店会からは店舗前の美観や顧客満足度に影響する実情が語られた。一方で、加熱式たばこ専用喫煙所の実証実験により、周辺環境への影響を抑えつつ利用者のニーズに応える取り組みが一定の成果を上げていることも示された。

渋谷区副区長 杉浦小枝氏

議論の終盤では、次世代型喫煙所 「GOOD MANNER SPOT」 の構想が発表された。加熱式たばこ専用エリアを併設し、混雑緩和や煙の拡散抑制など、都市空間としての調和を重視した設計が検討されている。商業施設が24時間アクセスできない現状を補完し、主要動線上での配置を見直すことで、喫煙者と非喫煙者が共存できる都市デザインを目指すものだ。

渋谷未来デザインの金山淳吾ジェネラルプロデューサーは、再開発が進む渋谷の転換期を捉え、喫煙環境の改善が都市全体のグランドデザインに寄与する可能性を語った。都市課題を単なるマナーの問題に矮小化せず、産官学民が連携して解像度高く捉えることで、より良い都市空間の実現へ向けた第一歩が示されたセッションとなった。


「Action for 0」 プロジェクト
渋谷の路上飲酒、路上喫煙、ポイ捨てなど都市課題“ゼロ”を目指し、2025年4月にPMJと渋谷未来デザインが共同で発足。喫煙行動の定量調査、官民対話の場の創出、次世代型喫煙所構想など、都市環境の改善に向けた取り組みを進めている。

調査概要
調査期間:2025年4月〜8月
調査エリア:渋谷駅周辺8エリア
内容:ポイ捨て数量調査、路上喫煙者プロファイル調査、喫煙者への定性インタビュー
主な結果:8日間で13,776本の吸い殻を回収、路上喫煙者3,411人を確認、喫煙所利用困難が行動の主要因として浮上

関連リンク 詳細レポート
https://shibuya-good-manner.com/actions/206/

渋谷未来デザイン
https://fds.or.jp/