BUSINESS | 2023/11/18

テンセント上級副総裁 馬暁軼との対談:潮流の行方

Photo by Shutterstock

編集:祝佳音
翻訳:藤本智惠

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この記事は中国ゲームメディア『触楽』にて2023年5月15日に公開された記事「对话腾讯集团高级副总裁马晓轶:潮水的方向」(テンセント上級副総裁 馬暁軼との対談:潮流の行方)の翻訳転載となります。

『触乐』
「对话腾讯集团高级副总裁马晓轶:潮水的方向」

2年前の2021年、ちょうど新型コロナウイルスの影響を受けていた頃に、一度対談をした。そして今回の対談となる。最近よく取り上げられるゲームが現実に与える影響についてや、人工知能がゲーム業界を変えるのか、そしてテンセントの世界市場での戦略などについてなど、前回同様、多くの質問をした。

毎年インタビューを行うこの恒例行事は、すでに5年続いている。いち企業、いち人物を長い時間をかけて追いかけていると、興味深い点が出てくるだけでなく、より長い時間軸で企業を見ることができるようになるだろう。どのような方向性を試みたのか、どの決定が思わず指を鳴らしてしまうような決定で、どの決定が静かに放棄した決定なのか。馬暁軼氏(スティーブン・マー)は、対談の中で、一つの物事は、短期間で見ると悲観的であるが、長期間で見れば楽観的であると話した。これは、ビルゲイツの「人々は新技術が現れた5年は高く評価するが、そのあとの5年の評価は低くなる」に相当する。

2021年のインタビューでは、私たちは“スーパーデジタルシーン”の概念について取り上げた。当時、まだこの概念は抽象的でぼんやりしたものだった。しかし、この2年の間で多くを試み、そして結果を出してきた。具体的に言えば、“デジタル万里の長城”“デジタル仏教洞窟”などが良い例だ。これらのプロジェクトは我々にゲームの更なる可能性を示しているだけでなく、これからの新しいライフスタイルを垣間見せてくれている。2年もすれば“スーパーデジタルシーン”という言葉は、一般化するかもしれない。あるコンセプトが、とある業界にトレンドを打ち出す可能性をもたらす時には、一般化というのは欠点ではなく、必要なことであろう。

テンセント・ゲームズ2023年次大会での馬暁軼

馬暁軼氏との対談で最も価値がある点は、会社の幹部という立場から、世界ゲーム市場の区分や、AAAゲームの直面している課題とリスク、どのように良いゲームを生み出すか、35歳を過ぎた従業員はどうするべきかなどの見解を、誠実かつ率直に答えていることだ。

対談では、他にも多くのことについて話した。私が興味をもった話題は、テンセントの"ゲームテクノロジー"への理解についても含まれる。このことについては、私も理解している。わざわざ、誰もが知っている周知の事実を、あえてここで強調する必要があるのかと少々残念な気持ちにさせられた。この他にも、話題が"海外スタジオ"になった際に、きらびやかなゲーム名、オフィス名には驚かされた。数年前のインタビューでは、これらの名前が出てくることなど想像もしていなかったからだ。

毎回、対談内容を整理するときには、以前の対談内容を見返すことにしている。そうすることで、別の視点から考えられるようになる。現在の視点から過去の視点を見てみると、とても面白い。現在の成果の多くは、3年、5年前のアイデアや行動から得られていることが発見できる。

テンセントは最大手企業の一員となれたのであろうか。彼らには潮流に影響を与えられるだけの力、新しい道を切り開く力はあるのだろうか。ちょうど今日(5月15日)行われた、2023年度テンセントゲームズの発表会を見れば、これらの問題は、多かれ少なかれ解決するだろう。そしてある意味では、この対談の注釈のようなものになる。

今回のインタビューは、これまでと違った印象を受けた。これまでの人生の中で、自身が潮流の中にいるといった感覚を持ったことはなかった。これはゲーム業界だけでなく、ほかの業界でも言えることだ。過去何年もの間、その時々の成果を享受し、変化を受け入れ、改革を渇望した。我々は、潮流の流れを見極めたい、潮の流れに包まれ、決断したいと思っている。しかし、流れに身を任せるのか、潮の流れを作る人になるのか。限られた一部の人や企業にしか、潮流を変えることはできない。計り知れない勇気、能力、少しの運がなくては叶わないことである。

現在の潮はどの方向を向いて流れているのだろうか。

以下、馬暁軼氏のインタビューであり、質問と回答は再編成している。

ゲームが行っているのは、テクノロジーによる文化表現の進化

触楽(以下“触”):昨今"ゲームテクノロジー"という概念が注目を集めています。ゲームテクノロジーの定義について、どのようにお考えですか。また、ゲームテクノロジーと実生活にはどのような関係があると思いますか。そして、今後ゲームテクノロジーは実生活にどの程度影響を与えるようになるでしょうか?

馬暁軼(以下“馬”):ゲームが常に追い求めている新体験、効果は、すべて最先端技術によって成り立っています。その過程で、ゲームは新しいテクノロジーの発展を促進し、新技術をすぐさま大規模に用いることで、市場を通した新技術の研究を進めています。私は、ゲームテクノロジーは二つの方面で、他のテクノロジーへ影響を与えていると考えています。

一方で、ゲームは一般ユーザーにとって、ハードウェアの性能を最も必要とするデジタル製品です。携帯電話のディスプレイ消費電力は1W、通信機能で1.5W、よくネットや動画を見ている場合には、さらに2Wほど消費することになり、これらをすべて足したとしても5Wほどです。しかし、ゲームで遊ぶ場合の消費電力は、18W以上になる可能性があります。

この観点からお話しすると、デジタル時代に入って以来、一般の方がコンピューターの性能を最大限使用するものは、ゲームデバイスだと思います。1970年代、あの頃はまだパーソナルコンピューターはありませんでした。ATARIが世界で何千万台のゲーム設備を世界に販売し、それは何千万個ものCPUが売れたと言うことになります。そして1970年代末から80年代はじめ、Appleのパソコンが何十万台も購入されました。この時点で、パソコンとゲーム、どちらがCPU技術に与える貢献度が高かったのでしょうか。答えはおそらくゲーム機でしょう。つまり、ゲームの出現により、チップ産業の大発展をもたらしたと言えます。

今日、AIとグラフィックカードにも、似たような例を見ることができます。ある意味、グラフィックカードはゲームのために作られたとも言えます。ゲームはパソコンに高い性能を必要とします。そして、3D環境、あらゆる物の細かいディテール、これらの要求をグラフィックカードは世代を重ねるごとに対応していき、GPUが誕生しました。現在に至るまで、GPUはパソコン能力の発展には欠かせません。現在ではさらに大規模な言語モデルをサポートし、人と同じような知性を生み出しました。つまり、これがAIです。

そして、もう一方は、ゲームテクノロジーが溢れ出し、ゲーム業界だけでなくその他の業界の手助けもしていることです。たとえば、中国南方航空と協力し、中国で初めての完全独自開発フライトシュミレートモニターシステムを作り出しました。大規模な地形整形は、以前のように手作業で作ることは不可能に近く、精度にも限界がありました。テンセントゲームズの自社開発エンジンCROSと、積み重ねてきたデジタル技術、経験によって広範囲においてリアルな地図を作ることができるようになりました。極限状況のシュミレーションなどを含んだ、パイロットの育成訓練に使用されます。これが、まさにゲーム技術が別の業界にもたらした典型的な例です。

テンセントと中国南方航空による中国初の完全自社開発フライトシミュレーター・ビューシステム

私たちのゲームテクノロジーへの理解は、テクノロジーの発展と高まり続けるユーザーの要求によって、独自の技術体系を蓄積してきました。そうしてゲーム業界は擬似的な現実世界を生み出し、没入体験や豊富なインタラクション体験を提供してきたんです。私たちはゲーム内で生じる技術のクラスターを、より良いゲーム体験を実現する方向へとけん引し、ゲームの進化と共に絶え間なく前進するものとして「ゲームテクノロジー」と呼んでいます。

触:先ほどの話の中で中国南方航空と協力したとお話しがありました。私たちは、発表会で「デジタル仏教洞窟」や、「デジタル万里の長城」、「デジタル中軸・小宇宙」などのプロジェクトを見ました。テンセントゲームズがこれらのプロジェクトを推進しようとした始まりはなんでしょうか。今後、テンセントはどの分野で、ゲームとテクノロジーが結びついていくとお考えですか?

馬:これまで、テンセントゲームズのビジョンとは何かを何度も探究してきました。テクノロジーが文化表現を進化させる、それこそがゲームが今まさにやっていることです。

テクノロジーが進歩するに伴って、私たちはこの表現方法を実際に使ってみたいと考えるようになりました。どんな業界でも、大規模な変化や進歩を遂げるには自身の認知度、技術の成熟度の2方面は少なくとも準備しなくてはなりません。2年前、"スーパーデジタルシーン"のコンセプトを打ち出しました。これは現在ユーザーによって具現化され、その裏で、実はゲームテクノロジーが支えています。なぜ私がこれを"スーパーデジタルシーン"といい、ゲームではないと繰り返し言うのでしょうか。それは、映し出される情景は、すでにゲームから飛び出しているからです。

「デジタル中軸・小宇宙」、「デジタル万里の長城」、「デジタル仏教洞窟」、シュミレーションシステムなどのプロジェクトは、デジタルシーンを具現化するには、とても良い機会です。これらのデータはすべて私たちが現実世界で収集し、デジタルで復元、再現し、ゲームテクノロジーを以て実現させます。同時に、デジタル万里の長城(時空版)、飛行シュミレーションシステムも私たちの研究開発エンジンで制作しました。これによって、開発エンジンはゲーム以外のプロジェクトでも応用していくことで、私たちのデジタル表現の可能性を更に追求することができます。

今後、様々な分野でも探究を続けていくことで、もしかしたら、その中からゲームの新たな一面が見つかり、これまでと違ったゲーム体験が提供できるようになるかもしれません。

今年5月、国家文物局の指導のもと、敦煌研究院とテンセントが共同で作り上げた『デジタル仏教洞窟』がオンラインになりました。

触:では、現在、ユーザーは"スーパーデジタルシーン"の概念について理解しているということですか。もし、まだ理解に至っていない場合、いつごろ一般化するでしょうか?

馬:"スーパーデジタルシーン"は、ゲームの本質、価値や可能性についてオープンマインドで思考したものです。この思考と理解の根底にあるのは、ゲームテクノロジーの特性と、ゲームテクノロジーが常に前進している動向が見れることです。ゲーム科学技術の特性を活かすことによって、今後幅広い社会のニーズに対応していくことが考えられます。この概念を理解するには、3つの方面の発展が求められます。

まず、まず1つ目は、今日私たちが目にするゲームの形式は、まだ単一的で、ゲーム業界の黎明期といえます。2つ目は真のテクノロジーです。ユーザーの体験は、技術の発展によって支えられているということです。最後にコンテンツです。コンテンツを通じて、テクノロジーがユーザーにどのような影響を与えたか理解することができます。

簡単に言うと、"スーパーデジタルシーン"は、ゲームテクノロジーをベースとして構築できる全ての可能性のことです。それは、私たちが目にするゲーム製品や、未だ想像もつかないような全く新しい形態のもの、ゲームテクノロジーを基としたある特定の用途に使われるデジタル体験空間やデジタルソリューションであるかもしれません。

このように思考を拡大させ、探求していくことで、デジタル万里の長城、デジタル仏教洞窟やデジタル中軸・小宇宙、飛行シュミレーションシステム等のゲームテクノロジーの"越境的"プロジェクトが現れてくるのです。

「デジタル中軸・小宇宙」のようなプロジェクトはゲーム技術のクロスオーバー的側面の現れだ

これらのコラボレーションは今まで全く関わりがなく、従来の理解では必然性を感じることはありませんでした。ですが私たちはゲームを一種の"スーパーデジタルシーン"だと考えた時、これらの関連性の理解が可能となりました。現在、非常に好意的な反応が見られています。

どんな新しいコンセプトの普及も、すぐに実行し、水路を作るといったプロセスです。重要なのは、アイデアそのものではなく、そのアイデアを堅実に実践していくことです。皆さんには、ゲームテクノロジーを運用した、文化遺産のデジタル化や、飛行シュミレーションをご覧いただくことで、ゲームにこのようなことができると知っていただけたと思います。それは、見たことで、初めて実際に認識され、そして認められるようになったのです。

触:「ゲームテクノロジー」とは具体的になにを指していますか。何かゲームテクノロジーになりうる技術はあるでしょうか。また現在、手放してはならない核になる本質的な事物はなんですか?

馬:ゲームは、文化とテクノロジーとの交差点のような産業だと考えています。テクノロジーをユーザーにどのように提供するのか、それはゲーム業界にとっていつまでも変わらない本質的な核心です。

ゲーム業界はユーザーを先導する立場です。私たちは文化とテクノロジーが提供する将来の展望を常に提供し、プレイヤーに最高の体験をしていただくこと、これがゲーム業界が常に行っていくことです。テクノロジーは変化していくかもしれません。しかし、私たちの立ち位置が変わることはありません。

AIに人の代わりはできない

触:AIはゲーム産業をどの程度変えられると思いますか。ゲームがより良くなるには、具体的にどこにどのように応用すると良いでしょうか?

馬:情報産業の技術進歩は、どの業界にも役立ちます。しかし、ゲーム領域への反映はとても直結していて、すぐにでも可能です。具体的には2つの応用方法があると考えています。

まず、一つ目はサプライヤーチェーンの末端において、効率を大幅に上げることができます。工業化には、優れたツールが必要ですが、AIは創作ツールとして非常に適しています。AIはゲームの開発過程のさまざまな部分で力を発揮できます。これらの技術は、すでに実用可能で、私たち社内でも試行錯誤しているところです。

生産力の大幅な向上は、工業化の水準をより高め、今後数年で結果が見られるでしょう。しかし、それは階段を登ったり、ジャンプするような発展ではなく、穏やかで、緩やかな上昇になるはずです。

二つ目は、ゲームプレイのレベルです。ユーザーの体験にAIは何を提供できるのか。3Dグラフィックカードが出始めた頃、どのようにゲームを作ろうか模索する人が多くいました。たくさんの3D変換パズル系のゲームが登場しましたが、結局のところプレイヤーが購入するのは3D制作のゲームではなく、FPSのような3Dを利用して、没入感を味わえるものや自由度のあるゲームでした。

つまり、結局のところ爆発的に普及するのは、AIを直接的に使ったものではなく、AIの力によって特定のゲームカテゴリーを変えるような応用的なものではないでしょうか。この短い期間では、まだ判断することは難しいですが、3年後、5年後、このような例は多く見受けられるでしょう。

「ゲームのために作られた」グラフィックカードがAI開発の重要な原動力となった

触:現在、テンセントはAIをどの程度まで応用し、どのような効果を得られていますか?

馬:私たちは、ゲーム開発のツールチェーンを細かく分割し、それぞれAIの活用が可能かどうか評価しているところです。その中で、すでに識別できていることに関しては、AIを用いて改善しています。

举个简单的例子,除了UI和原画之外,大家在未来大概率会看到我们人物的动作越来越自然,以前要一帧一帧摆人物的姿势和布片,现在我们能够用AI填充中间的部分。所有的工具链我们都在非常认真地去做。

簡単な例を挙げると、UIや原画とは別の領域として、今後は人物の動きがより自然になることが可能になります。以前は、人物のポーズを一枚一枚描く必要がありましたが、現在ではAIを用いてポーズとポーズの間を埋めることができるようになりました。すべてのツールチェーンに私たちは、真剣に取り組んでいます。

私たちはストーリーやシーン全体がより生き生きとした製品になるよう模索しています。ツールチェーンは自動化が可能です。もしUGCのツールを変化させることができれば、ユーザーがゲームのアイデアを入力することで、もっと多くのゲームを自動生成できるようになるのではないでしょうか。『Rocket League』を例にとってみましょう。車を使ってサッカーをすることはできないか、と考えたときに、ツールの性能が十分ではない場合、コンセプトを実現するには、経験を積んだ150人のチームが必要となるでしょう。ですがAIが加わり、ツールチェーンが容易になれば、いつか、プレイヤーがアイデアを出すだけで、AIがプレイヤーの思うゲームを創り出せるようになるのではないでしょうか。これによって、ゲーム業界は本質を取り戻し、創作の実現の敷居は低くなります。これは、ゲーム業界にとって、とても喜ばしいことです。

AIは開発者のアイデアをより良く実現するのに役立つ

触:AI方面に長期的な投資、応用によって、AAAゲームを創ることが難しくなくなるのではないですか。AIは何を解決でき、何ができないのでしょうか?

馬:効率が上がることは確実です。例えば、ハイクオリティの原画は、これまで、1日15人で作成していました。現在、AIを利用することで、3時間あれば基本的には出来上がります。これはたった一部分の例に過ぎません。今後、もっと多くの部分で利用し速度を上げれば、AAAゲームの開発効率は飛躍的に上がるはずです。

コストを抑えられるかというと、そうとは限りません。効率が上がることで、今度は誰もが腕を競いあうようになります。プレイヤーにとっては更に豊かなディテール、より大きな世界観、クオリティーの高いアートを楽しむことができるようになります。ゲーム業界からみても、大きく前進できることになります。

問題が解決できれば、まずAIによって、更に効率向上を図ることができます。次に更にクオリティーの高いアートの生成が可能となります。以前、シングルプレイヤーゲームは、オープニング映像がそのゲームの最高品質で、多くのゲームに対して「最初の1時間の質は最高だ」と冗談で言ったものです。過去には、「欧米開発のシングルプレイヤーゲームの最初の2時間に開発予算の半分が使われている」とも言われていました。AIの大規模投資ができるようになれば、これらの問題は徐々に解決するでしょう。これ以外にも、AIがもたらす生産効率向上は、ゲームの創意工夫を手助けしてくれますが、最終的にそれは人によって実現するものです。

つまり、ゲームプレイにしても質の高いコンテンツにしても、チームの人員の資質にかかっています。もしチームメンバーが90点くらいの人だとすれば、AIを利用しても90点の製品が出来上がります。もし、ゲームメンバーのレベルが60点であれば、やはりAIを利用しても60点の製品しか出来上がりません。

製品の上限、下限は依然としてチームメンバーが決定しています。AIはこの方面において人に取って代わることはできないのです。

私たちが追求したいことは、さらに大きな成功

触:テンセントは海外スタジオへの投資も少なくはありません。ここ数年で最も印象に残っているスタジオはどこでしょうか。投資をした結果、彼らにはどのような変化がありました?

馬:とても多くのオフィスが1、2年で非常に優れた水準を示すようになります。去年の『V Rising』は、私たちが抱えているスウェーデンの35人の小さなチームです。彼らのいる街はどの程度の小ささだと思いますか。彼らのCEOと会社のベランダから35人の家を探すことができました。そして、家を見れば、彼らが特別に成功したことがわかりました。それから『Warhammer 40,000: Darktide』は、彼ら自身が得意とする領域で創り出し、順調に推移しています。Riot Gamesでいうと、競技ゲームが順調です。『Valorant』は、昨年すでにとても高い成績を記録し、『League of Legends』と変わらない影響力があります。

『Varolant』

保有しているスタジオ以外にも、FromSoftwareのように資金投資をしているスタジオでもとても良い成績が出ています。例えば、ランキングを見れば、毎年新たに登場したゲームの中に、私たちテンセントと関係のあるゲームは確実に増えていっています。当然、これは全世界の市場で言えることです。

私たちは、現在世界市場をさまざまな戦場と考えており、私たちの内部では3つの戦場と言っています。第一の戦場は中国、中国には6億のユーザーがいます。中国の市場は急速に成長し、成熟市場への移行期です。製品の品質への要求は日に日に高まり、各カテゴリーに基本的には大手企業がいますが、新しいアプローチはあまり見受けられません。

第二の戦場は、欧米、日本です。彼らは本当の意味で成熟した市場です。この市場のユーザー規模は中国より小さく、5〜6億ユーザーです。しかし、売り上げは中国市場の倍以上です。その中でスマートフォンゲームの売り上げはたったの3分の1で、PCとゲーム機が主力といえます。多くのゲームがこの市場でPCやコンソールで成功してから、更に大きな市場へと移行します。そのため、この市場ではPCやコンソールへの投資が多くなります。一方で、これらのゲームがこの市場で成功することで同時に新しいアプローチを探求し、全世界で新しいゲームカテゴリを生み出していくことを期待しています

第3の戦場は、ラテンアメリカ、東南アジア、中東の新興市場で、このカテゴリーは急成長を遂げています。この市場には12億ほどのユーザーがおりますが、売り上げは中国の半分ほどです。しかし、この市場では新たな支配的ゲーム、昔の言い方をすれば"国民的ゲーム"が現れるかもしれません。

日本の『ドラゴンクエスト』シリーズ、韓国の『リネージュ』シリーズ、私たちの『王者栄耀』が国民的ゲームに当たります。成熟市場でみなさんの興味趣向は分散されるため、国民的ゲームの登場はとても難しくなっていますが、新興市場ではまだ機会があります。私たちの『PUBG MOBILE』は多くの市場で国民的ゲームになっています。

これらの3市場は異なっており、その市場に合わせ、それぞれ異なった戦略を用意し、異なったチャンスを掴もうと試みています。成功すれば、こういった機会は、互いに転換することが可能です。

長年の成功の末、『王者栄耀』は今や多様な価値を持つIPとなった。

触:テンセントは今後の海外市場をどのように見ていますか。海外事業のペースをどのように計画していますか?

馬:先ほどお話ししましたように、中国はまさに今成熟市場に向けて急速に成長しているところです。中国プレイヤーの品質や好みに対する要求と、世界の主流市場の一致が徐々に見られます。そのため、まず自社製品が出たら、すぐに世界市場に狙いを定め、一市場だけの製品は作りません。たとえ中国のIPだとしても、アートやプレイのスタイルが全世界のプレイヤーに適応することを願っています。

第二に、決算報告で毎回お話ししていますが、テンセントゲームズ売上全体の、海外ゲームが占める割合が高まっています。私たちは、一度にある特定の数字を目指すわけではありませんが、海外の売上が安定的に継続して伸びていくことを期待しています。

これらの成長の中で、人海戦術的ではない、より大きな成功を望んでいます。ここ数年、国外、国内関係なく、テンセントのゲームリリースの速度は遅くなってきています。これは、今までよりも少し大きな製品に投資したいと考えているからです。ある製品の成功率はあまり高くないかもしれません。なぜなら、ゲームは常にリスクがあるものだからです。しかし、一度成功してしまえば、際限なく伸び、このような製品は、私たちはより重視するようになり、それは国内国外問わず言えることです。

触:理想的な海外売上の比率はどのくらいだとお考えですか。例えば、国内、国外で半々というのは、理想的に近い状態でしょうか。海外市場のプラットホーム分布と構成をどう見ていますか?

馬:海外市場は成熟市場も新興市場も含んでいます。理想的な海外市場のシェアは半分強であることが理想です。

中国はスマートフォンゲームのユーザーが多く、スマートフォンゲームの需要が非常に高い市場です。それでもPCとゲーム機も、とても重要です。「Newzoo」の調査報告をみると、去年の世界のゲーム市場の状況は非常に厳しいものでした。スマートフォンゲームは10%、コンソールも数%下落した中、PC市場は逆に上昇しています。このことからもPCは、堅実な市場として考えられます。

さらに、PCユーザーはよりアクティブです。PCユーザーは全世界ゲームユーザーの20%ほどを占めています。しかしそのうちの40%がアクティブユーザーで、1日で見るとPCユーザーの方がアクティブ度が高いです。

第三に、PCは操作性の面で、最も柔軟性に優れたプラットフォームです。それだけでなく、PCゲームの方がプレイやアイデアが多く現れました。操作の奥深さや冗長性があること、または自由度が高いことにあります。外部に投資する場合、PCとゲーム機への能力に投資することを重要視し、願わくば、次のヒット作や機会を掴むためのいくらかの蓄えになってほしいと考えています。

チームは長期的にメンタルを維持することで成功が可能となる

触:テンセントゲームズは20年となります。4〜50歳の従業員もいると思います。テンセントゲームズのチームは、若返らせる必要はあると思いますか。もともと多くの会社の従業員の平均年齢は20代でした。今はいかがでしょうか。ゲームは一生涯続けられるものですか?

馬:まず、私は一生できる仕事だと考えています。もちろん、私自身この「ケツ」世代にあるからといって、決してでたらめを言っているわけではありません。事実、様々な人に会えば会うほど、この思いが強くなっていきます。例えば、『ゼルダの伝説:ティアーズオブキング』は、平均年齢55歳のチームで作られたゲームです。つまり、年齢は関係ありません。

重要で人気のあるゲームシリーズを作るには長い時間がかかる

さらに、この業界では、大容量のとても良いゲームの中には、長い制作時間を費やし創り上げられるものもあります。大切なことは、情熱があるかどうか、自分が作りたいものを追求できるか、新しい視野を持てるか、新しいことを取り入れることができるか、たとえそれが業界とは違う変化だとしても取り入れられるかどうかが最も重要です。

触:年齢の高い人には無理だと言う人は多いと思います。テンセント含むゲーム業界では、誰もが必死にチャンスを掴もうとしています。毎回のチャンスを逃さないということは、どれだけ早くできたかということです。これは多かれ少なかれ残業につながっていると思いますが、このようなスタイルは変わるのでしょうか?

馬:残業の問題は少し複雑です。なぜなら残業には様々な原因があると考えているからです。第一の要因は、チャンスを掴むこと。新しい市場でチャンスが現れた時、このチャンスをいち早く掴むため、残業が必要となります。これは仕方のないことです。一番最初に質の高い商品を市場に出した誰かが勝つからです。

第二の残業要因はチームが小さいことです。1つのAAAゲームを作るには、非常に大きな規模のチームが必要となります。『Call of Duty』シリーズでは、1つのプロジェクトの開発に2000人が必要ですが、Rockstar GamesのAAAゲームの開発にも1500〜2000人が必要です。高いクオリティーが求められる場合には、非常に大きなチームが必要となるのです。管理の難しさは、人数に直線的に比例するのではなく、幾何級数的になります。中国の企業の多くが以前はそのような大規模のチームを管理する能力がなかったので、200〜300人のチームで、1000人以上のチームにしかできないことを、残業で補いながら達成させていました。これについては、これから明らかに変えることができます。人々が大規模な研究開発機構を制御できるようになれば、この問題は解決できます。

第3に、市場には多くのチャンスがあり、その全部を掴みたいと思ってしまうせいかもしれません。しかし、市場はどんどん成熟し、成功する難易度も高くなっていきます。チームが長期的にメンタルを保って制作していくことが、成功の鍵です。

「プレイ」こそが、業界の主要原動力

触:業界トップの企業として、ハイクオリティなゲームを制作することは簡単だと思われますか。また、どの会社もこのようなことを追い求めていいのでしょうか?

馬:まず、ハイクオリティゲームを作るのは、非常に難しいことです。そして、今日の市場は、更に成熟し、成功する基準がとても高くなりました。2013年から2016年、競争はとても激しくなりましたが、市場を通したゲーム性+IPで、悪くない成績を得ることは可能でした。しかし、成熟市場では、60点の製品は大量のユーザーを得るには不十分です。80点以上の製品でようやく頭角を表すことができ、成功することができます。しかし、80点の製品は、チームが業界で非常に長い実績を積み、ようやくチャンスをつかみ作れるものです。

だからこそ、私たち内部プロジェクトでも、外部の投資先の企業でも、そのチームが長年にわたって貫いてきたカテゴリーやスタイルに期待しています。このようなチームだけが、得意分野で80点のゲームを作ることができます。しかし、十分な経験を積むことの難しさ、ハイクオリティの難しさ、その両方がのしかかります。

『クロスファイア』は長年シューティングゲームとしての人気を誇っている

触:この2年、海外並びに、世界のゲーム市場は衰退してきました。テンセントは底を打ち、持ち直しているタイミングでしょうか?また、テンセントはこの状況をどのように打破するつもりですか?時期や成長回復をする方法や手段について教えてください。

馬:実は、方法はたくさんあります。テンセントは米哈游(miHoYo)に焦りを覚えているのではないかとみなさん言われたりします。実際のところ、このような外部企業からは、素晴らしいアイデアを提供してもらっています。私たちは終始、遊びこそが業界の原動力だと考えており、新たなユーザーを開拓するには、コアとなるプレイで楽しませるということが非常に重要です。

その一方で、プレイの突破口を開くのは難しいです。ゲームプレイに面白味がない状況では、コンテンツで主導する必要があります。米哈游はこの方面で業界にとても貢献しており、私たちも学ぶところがあります。

私自身、プレイ主導、コンテンツ主導は左足と右足だと考えており、どちらか一方が秀でた会社は、両足で歩けるようにしなければなりません。

同时,传统的游戏行业,特别是在成熟的欧美地区,其实有很多单机游戏是内容驱动的,一代一代地写故事和人物。但它们用的方法相对来说比较保守,就只是卖拷贝。如果它们有机会转成一个长青游戏,用更新的商业模式去驱动的话,对行业又是一拨很大的反弹。

同時に、特に成熟した欧米地区の伝統的なゲーム業界は、コンテンツ主導のゲームが多く、ストーリーや人物について事細かに作られています。しかし、その方法は保守的で、ただコピーしたものを売るようなものです。もしそれらのゲームが、新しいビジネスモデルを取り入れれば、新たな名作に生まれた変わり、また業界にとって新しい反動となるかもしれません。

この業界の可能性は非常に大きいままです。今日、私たちが目にしているいわゆる「ボーダーライン」は、本来のボーダーラインとはほど遠いものでしょう。私自身の予測では10年後、この業界は3倍にも4倍にもなっているかもしれません。

触:昨年の市場全体の売上は下降し、ユーザーは6億に達していても伸び悩んでいます。市場が伸びることでの恩恵が得られなくなりました。今後2、3年の国内市場の動向をどのようにお考えでしょうか。稼ぎ頭の地域はより集中するでしょうか。テンセントはこの過程でどのような立ち位置にいることを望んでいますか?

馬:国内プレイヤーの数はすでにピークに達していると思います。国内の人口に頼った時代は終わりました。今後は海外の新興市場を考えていくべきです。

『中国ゲーム産業レポート2022』、2022年に中国のモバイルゲームユーザーベースが初めて減少

そして、カテゴリーについても見ていかなくてはなりません。ヘッドライン効果によって1つのカテゴリーの内部が明らかになりました。カテゴリーごとの第1位、2位のゲームはそのカテゴリーシェアの90%を占めているでしょう。しかし、市場全体における各カテゴリーシェアは、今後ますます差別化されるようになります。その中で、多くのカテゴリーが出現していきます。これまでとても小さなカテゴリーだと思っていたものが、非常に優れたカテゴリーに成長することもあるかもしれません。

だからといって、テンセントも全てのカテゴリーを網羅しようとは考えていません。進む方向を定め、カテゴリーを選別し、長期的な投資の準備をしています。どれか一つのカテゴリーを選ぶ前によく考える必要があります。もしそのカテゴリ^で万一失敗したら、次の製品を作るのを諦めますか?もしあなたの考えが「作らない」であるならば、そのカテゴリーは選ばない方がいいかもしれせん。

触:ここ1、2年、テンセント製品のリリースのペースを落としているとおっしゃいました。現在のバージョンはすでに安定しつつありますが、今年からリリースのペースを少しずつあげていきますか?

馬:本心ではもちろんペースを上げたいと思いますが、最終的にリリースする際のゲームのクオリティが大切です。もしクオリティが基準に達していない場合には、リリースすることはできません。これまで培った経験と教訓から、時間はゲーム業界にとって重要な要素ですが、クオリティはそれよりも更に重要な要素なのですから。