冷蔵・加工・金融の三位一体で、アフリカの農産業をグローバルに革新
アフリカ・セネガルで7年間にわたり未電化地域の診療所・学校への電力・通信インフラ導入を手がけてきた株式会社シュークルキューブジャポンは、商船三井、ダイキン工業、セイコーエプソン、大日本印刷の4社と連携し、セネガルで農産物を太陽光で「冷やし・加工し・輸出する」官民連携ビジネスモデルの実証を開始する。
本プロジェクトは、経済産業省の 「グローバルサウス共創事業」 に採択され、セネガル政府の3省庁 (産業省・通商省・教育省) との連携も実現。支援型ODAに依存しない、自立型で収益性も備えた共創モデルとして、アフリカにおける次世代ビジネスのロールモデルになることが期待されている。
背景にあるのは、マンゴーをはじめとするセネガル農産物の大量フードロス問題だ。年間数十万トンに及ぶフードロスの要因は、主に保存・加工設備の不足にある。現地に根を張ってきたシュークルキューブが、民間ビジネスと社会課題解決の融合に挑むことで、食料・雇用・輸出の三拍子を支える産業創出へとつなげていく。

大手企業の役割も明確だ。商船三井は海運と物流の知見を活かし、アフリカでの冷蔵輸送インフラの整備に協力。ダイキンは過酷な気候下でも安定稼働する冷凍コンテナを提供し、フードロス削減を後押しする。セイコーエプソンは、現地に設置されるキオスク端末にプリンターを搭載し、行政書類や証明写真の印刷を通じて、日常生活を支えるサービスを提供。さらに大日本印刷は、断熱性能に優れた真空パネルで冷蔵ユニットの品質向上に貢献している。
この一連の取り組みの土台となるのは、2018年の設立以来、未電化の診療所や学校への電力・ICT導入を積み重ねてきたシュークルキューブの地道な活動だ。完全オフグリッド型のソーラー電力キット 「TUMIQUI Smart Kit」 やデータセンター導入などの実績を通じて、現地政府との信頼関係を築いてきたことが、今回の連携実現の原動力となっている。
2025年6月からの実証開始を経て、同年8月にはアフリカ開発会議 (TICAD 9) でも正式発表を予定。2026年以降には周辺国への展開や、金融を統合したデジタルインフラモデルへの進化も視野に入れる。

セネガル政府のセリーニュ・ゲイ・ジョップ産業・通商大臣は 「シュークルキューブ (と現地法人TUMIQUI JAPON) は、教育分野においてセネガルで継続的に実績を積み重ねてきたことを、私はよく知っています。このプロジェクトは、そうした信頼と経験に基づく素晴らしい新しい挑戦です。将来的には、SENEGAL 2050の目標に沿って、国として重要視する農産物の保管課題─たとえば数十万トン規模の収穫物の保管─にも、日本の技術とパートナーシップで取り組んでもらえることを大いに期待しています。」 とコメント。
また、日本側の支援者である渋澤健氏は、「日本から"遠い"アフリカ、そして日本企業の進出が比較的少ないフランス語圏・セネガルにおいて、社会課題の解決を目指すこの挑戦は、複数の日本の大手企業との連携によってMade With Japanの価値を現地の人々に強く印象付けるはずです。アフリカに新たな道を切り拓く先駆者として、今後のさらなる発展を心より期待しています。」 と語った。
シュークルキューブジャポン代表の佐藤弘一氏は、電化の診療所に明かりを灯し、学校に通信を届ける中で、「支援だけでは未来は続かない。人々の暮らしを支えるには、利益を生み雇用を支えるビジネスが欠かせない」と実感。そんな課題意識を抱えていたとき、セネガルの仲間が「ムッシューさとう、マンゴーだよ」と笑って言った言葉が転機となったという。
支援から産業へ──電気も冷蔵もない場所で始まった小さな試みは、今や国家連携と民間主導が融合する、アフリカ発の産業革新へと変貌しつつある。今後の活動に期待したい。


株式会社シュークルキューブジャポン
https://www.sucrecube.co.jp