BUSINESS | 2024/05/15

「地図アプリ使っても、結局たどり着けない」あの問題を解決するドラえもんの秘密道具?独学でスタートしたものづくりに迫る

聞き手・文:舩岡花奈(FINDERS編集部)写真:赤井大祐

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プロアマ問わず、ハード・ソフトを問わず、誰もが参加できるものづくりコンテスト「ヒーローズ・リーグ」。

前身イベントから数えると18年の歴史を誇る同コンテストにて、FINDERSは2021年、2022年に続き2023年も「FINDERS賞」を選出することになった。ワンアイデアと実装力で突破できるのが同コンテストの大きな魅力の一つ。今回、FINDERSでは生活のなかで感じるちょっとした不便なことや見過ごしてしまいがちな問題について、アイデアや技術で解決しているか注目した。

選出したのは堀洋祐さんが開発した「みちびきライト」だ。ドラえもんのひみつ道具に出てくる懐中電灯のような見た目をしているが、その正体はなんと道案内デバイス。目的地の位置情報を読ませることで、内蔵された小型のプロジェクターによって映し出される映像が目的地の方向と距離を示してくれる。移動中もリアルタイムで方向と残りの距離を示し続けてくれるので、みちびきライトに従って歩けば、誰でも迷うことなく目的地へと向かうことができる。

「地図アプリを使っても、なかなか目的地までたどり着けない」という人は意外と多い。そんな悩みを解決してしまう「みちびきライト」の開発までの背景やその裏側のエピソードを聞いた。

シンプルに誰でも使えるハードウェアならではの良さ

ーー みちびきライトは、目的地まで道案内するアイテムですね。なぜ製作しようと思ったのでしょう?

堀:目的地に行くためにスマートフォンの地図アプリを使うことが多いと思います。せっかく知らない道を歩くなら、風景に情報が表示されたらいいなと思いました。ただ、現在の技術ではヘッドマウントディスプレイのようなデバイスを通して見た景色にしか投影できません。そうではなくて、自分が今見てる風景に投影できないかなと思い懐中電灯のような現在の形に至りました。

ーー なんらかのスマホアプリにする、という方法もあったと思いますが、あえてハードにする良さはあるんですか?

堀:ボタンを押したら結果が出てきたり、あまり難しいことを考えず道具のように使えることがハードの良さだと思います。スマートフォンだと、1度ログインして、アプリ立ち上げてそれから目的地を入力してというようなワンクッションが必要になってきますよね。

ーー 目的地はどのように登録するのでしょう?スマートフォンなどを介するのかと思っていました。

堀:目的地を登録するときに、1回スマートフォンを挟んでしまうと、だったらスマートフォンを使えばいいじゃないかとなってしまいハードを使う意味がなくなってしまいます。なので、QRコードリーダーを搭載して、位置情報のQRコードを読み込めば目的地の登録ができ、あとは内蔵の小型プロジェクターで目的地までの距離と方向がわかるんです。

cap:QRコードを読み取ると、目的地までの距離と方角が投影される。画像2枚目はインタビューを行った場所から、目的地として登録した目黒区役所までの距離と方角

ーー ボタンを押してQRコードを読み取って、投影される矢印の方角に歩く。シンプルな操作でわかりやすいですね。

堀:スマートフォンを使うには少しハードルがあるような方でも簡単に使えると思います。例えば複雑なデバイスに慣れていないご老人の方にスマートフォンを使えといってもなかなか大変ですよね。使いやすい形で、単純だけどそれだけで人が助かるみたいなものを作ってみたかったんです。

ーー みちびきライト以外にもGPSを利用した作品を手がけていますね。

堀:そうですね。「カサナビ」という目的地の方向に傘が倒れて道案内するという装置を作りました。この装置もみちびきライトと同様に位置情報から自分の位置を計算したものです。

宇宙からGPS情報というのは常に降り注いでるので、特別な端末がなくても本来は誰でも使えるはずなんですけど、実際に使おうとするとカーナビやスマートフォンが必要になってしまうので、何かもっと子供でも遊びの感覚でできないかなと思ったんです。

ものづくりのスタートは、友人とスカイプでひたすら勉強

ーー そもそも、ものづくりをしようと思ったきっかけはなんですか。

堀:最初は10年以上前に、『デジタル・スタジアム』というデジタルアートが紹介されているテレビ番組を見たことがきっかけです。いろんなデジタル技術を組み合わて、見たことがない映像やガジェットを作っている人たちが紹介されていて、そこでメディアアートやデジタルアート呼ばれるジャンルについて知ったんです。それで自分でも何か作りたいと思いました。「中でもパソコンの中で完結するのではなく、実際に存在している物が動いたり、変化する作品やガジェット作品を作ってみたい」と思ってたんで社会人になって、ちょっとお金ができたところで、独学でものづくりを始めました。

ーー 独学でスタートするのは、ハードルが高そうですね。

堀:Arduinoボードというマイコンボードがあるんですが、それを使うと「メディアアートのようなことができることがわかったので」、まず本屋さんに行って参考書を買うところからスタートしました。その本をベースに「仕事が終わって家に帰ったら友達とSkypeを繋いで」2人で勉強するみたいなことを1年くらいやっていました。分からないことがあったら教え合いながら、基本的なプログラミングと電子工作の本を1冊か2冊やるうちにこれとこれとを組み合わせれば、面白いことができるということがわかるようになりました。

堀:簡単な物でも良いので作品を作って、SNSやProtoPediaに投稿したり、物理イベントに少しずつ出すと良いと思います。そうすると、ものづくりを通じて仲間や知り合いが増えてくると思います。そして、過去に知り合った人が面白い物を作っていることを知ったりすると、「自分もやらなきゃ」と製作意欲が刺激されて、次に繋がっていくと思います。こんなに面白いことを考える人がいるんだなと、いつも刺激を受けています。

ーー ちなみに最近、面白い作品を作っているなとチェックしている人はいますか?

堀:最近だと木原共さんの「自動運転車とぶつかる(ぶつからない)方法」という作品を有楽町にあるSusHi Tech Tokyoで体験してきました。自動運転に使われるAIに歩行者と認識されないように横断歩道を渡り切るゲームなんですが、物の考え方とか発想の仕方とかこんな面白いこと考える人がいるんだなと刺激になりました。

私も何か人の心が動きそうなものを作りたいと思っていて、常にものづくりのことを考えています。アイデアを形にするための技術や時間がなくて、作りたいけど作れてないものもたくさんあります。アイデアは常に寝かしてる感じですね。


みちびきライト