BUSINESS | 2025/06/12

“エッホエッホ”はなぜバズった?
Xの20億投稿から導き出された画像ミームの新構造を解明

65dB TOKYOが「2025年上半期SNSトレンド徹底解剖」レポートを公開

FINDERS編集部
出典”TBWA HAKUHODO「65dB TOKYO」”

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

SNSは「語る場所」から「重ねる場所」へ

SNSで日々生まれては消えていく無数の投稿。その中で、なぜ一部のコンテンツだけが爆発的に拡散されるのか? その問いに対し、広告会社TBWA HAKUHODOのマーケティング組織「65dB TOKYO」が、2025年上半期のSNSトレンドを徹底的に解析したレポートを公開した。

調査対象は、2025年1月〜5月にかけてX(旧Twitter)を中心に発信された約20億件の投稿。メンション数(話題量)といいね数(共感量)を軸にトレンドをマッピングし、いま最も多くのユーザーに届き、共感された話題を「ゴールデントレンド」として抽出。その中でも目立ったのが「画像ミーム」「AI」「企業とユーザーのコミュニケーション」の3大潮流だった。

中でも特に大きなインパクトを与えたのが「画像ミーム」だ。単なる笑える画像ではなく、「他者の言葉や視点を借りて、自分の気持ちを安心して重ねられる」ことが、爆発的な拡散のカギになっているという。

その象徴が、「エッホエッホ」の投稿だ。メンフクロウのヒナが一生懸命走る写真に、擬音を重ねただけの一言投稿が、58億インプレッション超という驚異的な広がりを見せた。ネタとしても楽しめるし、誰かの感情にそっと寄り添うツールにもなる。“語るSNS”から“重ねるSNS”へという文脈を裏付けるミームの一例と言える。

同レポートでは他にも、思わず自分の画像フォルダを探したくなるような「情けない写真ください」系投稿や、感情を代弁してくれる映画のワンシーンに自分の“あるある”を重ねる「育児ママあるある祭り」なども取り上げられている。いずれも、発信のリスクを避けながら他者と気持ちを共有できる“共感の媒体”としてミームが使われている点が共通している。

AIは「事実派」と「虚構派」に二極化

また、レポート後半ではAIのSNS上での使われ方についても言及。Xではイーロン・マスクが推進するGrokによるファクトチェック文化が根付きつつある一方で、TikTokではAI生成ラベルがついた非現実的コンテンツが中毒的に拡散されており、ユーザーの姿勢は「現実を知りたい」派と「虚構を楽しみたい」派に二極化しているという。

この傾向は、今後の情報リテラシー教育や、SNSプラットフォームの在り方に対しても大きな示唆を与えるだろう。

さらにブランドとユーザーの距離感についても、分析は鋭い。SNSで支持を集める企業アカウントに共通しているのは、「フランクで人間味があること」と「公式としての誠実さ」の絶妙なバランス感覚だという。ただ情報を発信するだけでなく、日常会話のようにユーザーと対話する姿勢が、好感度を高めるカギになっている。レポートでは具体的な好事例も紹介されており、SNS運用担当者にとっては必読の内容だ。

「なんとなく面白いからバズった」「運がよかったから話題になった」では終わらせない。65dB TOKYOが公開したこのレポートは、SNS上の“共感行動”を冷静かつ構造的に読み解いた、現代のコミュニケーション戦略における必携の一冊と言えるだろう。


調査概要
調査実施時期:2025年5月
調査実施対象期間:2025年1月1日~2025年5月31日
対象:主要プラットフォームSNS(X、TikTok)
モニタリング投稿数:約20億投稿
分析方法:ソーシャルリスニング(ツール名:Brand Watch、TikTok Creative Center)
調査主体:TBWA HAKUHODO「65dB TOKYO」

「2025年上半期SNSトレンド徹底解剖」 レポートダウンロード