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BUSINESS | 2024/03/19

医療現場と連携し、医学と工学のシームレスな融合による日本発の医療機器開発と人材の養成拠点

神戸大学 未来医工学研究開発センター(写真:メドテックイノベーションセンター )

FINDERS編集部

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経済産業省では、長期的・持続的な日本経済の発展のため、大学や、高専等の機関を中心とした研究拠点より、企業ネットワークのハブとして活躍している産学連携拠点を評価・選抜 (国際展開型と地域貢献型の2類型) する 「J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜事業」 を令和2年度より行っている。

令和5年度についても、令和5年6月27日から7月31日までの公募期間中、19件の申請があり、第5回目として新たに国際展開型3拠点、地域貢献型7拠点が選抜された。

本連載では、新たに選抜された拠点とその研究内容等を紹介する。

Jイノベ 地域オープンイノベーション拠点選抜制度

J-Innovation HUB 地域オープンイノベーション拠点選抜制度 地域貢献型拠点~神戸大学 未来医工学研究開発センター

神戸大学は、革新的医療機器開発を目指し、医学研究科と工学研究科がそれぞれ中心となって取り組んできた分野融合型研究等の成果を加速させるために、医学と工学のシームレスな融合の実現を目指す全学基幹研究組織として、「未来医工研究開発センター」 を2019年4月に神戸医療産業都市内を拠点として開設した。

この未来医工学研究開発センターは、 先端的な医療機器開発のニーズ抽出から解決法の概念創出、検証、事業化戦略までを行い、さらには医療機器開発に必要な人材を育成し国内産業として成長・発展させることを目的としている。

また、神戸医療産業都市に拠点を置くことで、医学部附属病院国際がん医療・研究センターや、神戸医療産業都市内の企業や研究施設と連携し、神戸大学の「神戸イノベーション・アイランド構想」を加速化させる役割も担っている。

医療の現場に革新的な未来を〜医工連携を推進し、医療機器開発を加速

世界の医療機器市場は、今後も拡大を続ける成長産業として期待されているが、治療用の分野では日本は競争力を獲得できず、長きにわたり輸入超過となっている。国際競争力を高めるには、医療現場のニーズと工学技術のシーズを適切に組み合わせて事業化する持続的な仕組みを構築していく必要がある。そのためには、医工連携を推進し、医療機器開発を加速させるための環境整備とそれを先導できる人材育成の両輪が必要となってくる。

未来医工学研究開発センターの役割

そこで、神戸大学は未来医工学研究開発センターを神戸医療産業都市内に設立し、医療機器開発における日本型エコシステムの基盤確立を目指している。スピーディーな意思決定を行える基幹研究推進組織として、医工学を完全にシームレスに融合、複数分野の研究者が協働し医療機器のニーズ探索から事業化戦略までを一貫して行える環境の構築を推進している。

未来医工学研究開発センターの主な役割は、以下の二 つだ。

①産官学における医療機器開発のプラットフォーム(初期開発の推進)
②神戸大学における医療機器開発を目指す者の実践的教育の場(医療創成工学専攻等との連携)


医療機器開発を加速化させるための環境整備として、医学部附属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)内に拠点を設け、新しい医療機器の開発研究も行っている。さらに、センターに新たに設立された「メディカルデバイス工房」では、工学系、医学系をはじめ複数の学域に所属する学生が、工学系研究者とともに医療現場の医師、医学系研究者や医療機器開発に関連する企業の技術者・研究者等とラウンドテーブルを囲み、プロトタイプのものづくりを実践している。

また、教育・人材育成については、既存の研究科横断型プログラムのデジタル医工創成学コースに加えて令和5年度設置の医学研究科医療創成工学専攻と連携し、ニーズの解決策を探索し、医療機器としてプロトタイプに昇華させることができる「メディカルデバイスプロデューサー(MDP)」を実践の場で養成、将来の医療機器開発の現場で、次世代の医療機器をプロデュースできる開発チームのリーダー人材の輩出が期待されている。

確実に増えつつある開発実績

未来医工学研究開発センターでは、国産手術支援ロボットシステム「hinotori」(株式会社メディカロイド)の開発に臨床ノウハウを提供し、2020年に製造販売承認に至った実績がある。また、2023年にはNTTドコモ等と連携し、国内初の遠隔操作実験にも成功した。ほかにも、粒子線治療用吸収性スペーサ「ネスキープ」の開発支援(アルフレッサファーマ株式会社)や、耳鼻咽喉ビデオスコープ「先端わん曲内視鏡」の共同開発(ニプロ株式会社、株式会社町田製作所)などの開発実績も確実に増えつつある。

未来思考を持った創造的開発人材の養成へ

現在、ICCRCを中心にした医工融合型産業集合知(地)として、「メドテックイノベーションセンター」を建設している。ここでは、臨床医、工学研究者、企業技術者、薬事専門家、学生などに限らず、外部からも交流できる研究・教育の拠点の形成を目指している。また、メディカルデバイス工房を拡張し、学生だけでなく企業にも開放、医療機器開発の実践に活用刷る予定だ。さらに、令和7年度には医学部に医療創成工学科(仮称)も設置予定で、医学と工学の基本的な素養を有し、自ら課題を設定し解決策を見出す能力を持つ、未来思考を兼ね備えた創造的開発人材の養成を目指していく。

村垣善浩センター長は、今後について期待を込めて、以下のようにコメントしている
「本センターを医療機器開発に向けた実践の場とすることにより、将来を担う学生諸君や若手研究者、技術者の活動を支援し、わが国発の医療機器がグローバルに発展することへ注力します。」

神戸大学 未来医工学研究開発センターの村垣善浩

神戸大学 未来医工学研究開発センター


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