LIFE STYLE | 2022/04/18

不平等な食料配給、物流がストップし工場停止…上海「超厳重ロックダウン」の窮状と影響【連載】中国ウォッチ・ナウ!(5)

上海の各地区に届けられた配給食材(一例)
ゼロコロナ政策が続いている中国において、深セン市に続き2000万人都市の上海...

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強いコミュニティの連帯感

中国人は日本人よりもパーソナルスペースが狭いと言われている。初めて会った人にも積極的に話しかけ、困っている人を助けようとする傾向が強いため、このような非常事態には連帯しやすい一面を持つ。配給食材が来るとすぐにお互いの欲しいものをトレードし合うなど活発に動いている。

今回、上海在住のさまざまな日本人から状況を聞いたが、今回のロックダウンでコミュニティが豊かになったと感じている人は多いようだ。グループチャットで知り合いが増え、他人との距離感を保ちがちな日本人同士も仲良くなったり、言葉の通じない外国人に対して見返りを求めない助け合いの精神を示す中国人の姿勢に感動したりする人も見受けられる。

一方で配給スタッフに怒号や罵声を浴びせ不満を爆発させている人の様子がメディアで流れたり、小区で陽性者が出てグループチャットが荒れたり、一部の強い主張を持つ住人がいつも文句を言って周りを疲弊させたり、といったことも場所によっては起きている。終わりの見えない封鎖でストレスが高じたり、生活苦にさらされて余裕がなくなり、コミュニティ内で必死で境遇を訴えている人たちの気持ちを考えると胸が痛い。何とかして置かれた立場で力を合わせてこの難局を乗り切ろうと人々は奮闘している。

物流ストップの影響でわかる中国・上海のありがたさ

「上海は多くの主要都市に2〜3時間ほどで行けるため、貿易に理想的な都市なのです」

日中貿易業を営んでいる文さんはこのように語る。

確かに東京・ソウル(韓国)・台北(台湾)・北京・大連・広州・深セン・香港などに短時間でアクセスできる大都市なんて上海以外に見当たらない。この距離は本当に理想的で、日本との航空便も通常なら2〜3日で届く。

上海港は世界最大の貿易港だが、ロックダウンの影響で運送業者が不足しコンテナは滞留。港にコンテナが着いても人手不足のため通関手続きはいつも以上に時間を要する。通関手続きが終わっても貨物トラックが動かない。上海に入るのも出るのも難しいとなると、輸入と輸出両方に影響が出ることになる。

商品を運べないため顧客への納期はどんどん伸びていき、当然注文キャンセルも相次いでいる。それだけでなく中国からの材料調達ができないと関連する国外の工場も止まってしまう。日本でも上海の部品調達停滞のあおりで三菱自動車のSUV製造工場が稼働停止と報じられた。今回の件で上海がいかに貿易の軸となっていたか思い知らされることとなった。

深センのロックダウン時はiPhoneを始めとする電子機器の製造がストップし、吉林省ではトヨタ・VW・アウディの生産も停止した。中国の各都市は世界経済と密接に連携し合っているのは有名な話だが、これは上海も同様でテスラやソニー、アップルやDELLを始めとするサプライヤーの工場がロックダウンにより操業停止となった。

工場の従業員は地方からのワーカーが多く、彼らは基本給が少ないため残業で稼ぐスタイルである。そのため、今回のロックダウンにより工場が稼働停止してしまうと、 残業代が減ったことで生活できなくなった従業員が地方に帰ってしまうことを経営者は危惧している。ロックダウンが解除すればまた何事もなく工場が再開するわけではなく、人手不足などの影響は今後何カ月も続くと見られている。

物流停滞の影響を受け、各地からの部品調達にも遅れが出ている。仮に工場が稼働できても部品が調達できなければ意味がない。先述の文さんは「生産の材料となる部品や素材なども不足しており、価格は5〜10倍ほどに高騰中です」と言う。しかも2〜3月は香港の感染拡大および深センのロックダウンにより、香港・深センからの物流が滞り上海に届かない事態となったが、4月になると逆に上海がロックダウンとなったため今だに物資は届かないという。

先日、日本は地震に起因する電力不足に直面したが、普段は当たり前のように利用している電気のありがたみを感じた人は多い。同じように、上海も世界経済のインフラを担う主要都市であり、特に日本にとって最も重要な都市のひとつであることを再認識させられた。そこで働く人たちは中国と日本をつなぎ、ひいては日本経済を支えていく上でも最重要な存在だ。決して当たり前の存在ではなく、日本人の大半がその恩恵を多大に受けているのである。


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