CULTURE | 2021/10/06

小室圭さんはいつまでバッシングされ続ける?過去にネットで叩かれまくった人物と企業を振り返ってみた【連載】中川淳一郎の令和ネット漂流記(28)

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中川淳一郎
ウェブ編集者、PRプランナー
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電通、パソナ…… 続いて叩かれまくる企業編

【電通】

日本におけるすべての陰謀に携わっているかのように捉えられているのが電通である。たとえばツイッターで連載されていた4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が話題になった際、終了直後からグッズ販売やイベント開催などが発表されたところ、電通の関係者がかかわっていたことからツイッターでは「#電通案件」のハッシュタグが登場し、盛り上がった。そして、「電通の陰謀」という言葉も定着している。銭ゲバとして、倫理観も何もなくひたすら儲けに走り、日本をぶっ壊す存在だと電通は思われているのだ。

元々「100日後に死ぬワニ」は、何気ない日常の大切さを伝える漫画で、多くの人がそれに共感していたのだが、電通がかかわっていた(とされる)意見が出たところで途端に興ざめ状態になったのだ。以後、同作については、書籍が出たり、映画が出ても毎度叩かれ続けた。

それだけ「#電通案件」は嫌われているのである。東京五輪にしても、電通が儲け主義でやっている、といった意見も頻出。ただ、私のような博報堂出身者からすると五輪のような巨大イベントを滞りなく運営できるのは電通以外にないという畏怖の念は持っている。

あとは、パワハラと長時間労働を強いられた高橋まつりさんが自殺したことも影響しているだろう。これについては、高橋さんのお母さんも徹底的に闘ったが、やはりパワハラと長時間労働は批判の対象になる。

しかしながら、広告業界にはこの2つは蔓延している面もある。私自身も博報堂をわずか4年で辞めた理由は、長時間労働のせいである。パワハラはなかったが、とにかく残業が多過ぎた。自殺にまでは至らなかったものの「このままじゃヤバいな」と思い辞めた。

フォローするが、今は博報堂はそのような状況にはなっていないと知人からはよく聞く。そして電通については「電通さんが広告業界のブラック的体質を一身に引き受けてくれた、申し訳ない」というコメントも別の会社の人から聞いたことがある。

よって業界No.1の電通が広告業界の長時間労働体質やブラック体質を全部押し付けられている面はある、ということをご理解いただきたい。そしてもちろん、高橋まつりさんの自殺について、電通を擁護する気はない。これはひどい事件である。

【パソナ】

この会社については、小泉純一郎氏とともに、非正規雇用を増やし、新自由主義の旗振りをした竹中平蔵氏が会長を務める会社、というのもおおいに影響している。そうした伝統的に竹中氏がネットでは悪役になっていたところで、東京五輪でボランティアが苛烈な待遇を受けている一方、パソナ経由で仕事を得た人々が1万2000円の報酬を得ている一方、パソナは20万円をもらっている「中抜き」といったところが批判の対象になっている。

一旦脱線するが「中抜き」という言葉は本来は「中間マージンを取る余計な会社を省く」ことである。だから、「中抜き」は良い意味なのだ。だから本当は「ピンハネ」なのである。

この20万円と1万2000円についての真実は分からないが、とにかくパソナはこの15年以上、ネットでは嫌われ企業として君臨している。それは、ASKAがシャブで捕まった時もパソナ関係者と深い関係にあった、といった報道も影響している。

電通とパソナ、両社に共通するのは、「既得権益にあぐらをかき、不当な利益を得ている」といったイメージを得ているからである。だからこそ、パソナが淡路島に本社を移す、といった発表をしても淡路島の住民を心配するような声が書き込まれる。

私は正直、企業がこうした炎上騒動に巻き込まれた時にどうしていいのかは手だてがないと考えている。元々培ったイメージが延々続き、「その後どんだけいいことをしようが叩かれ続ける」というのがネットの実態なのである。

ここでは冒頭の小室圭さんを含め、複数主体を取り上げたが、起死回生のポジティブな何かを出さない限り、永遠に叩かれ続ける。ポジティブな何かを出しても、恨みの強い人間はずーーーーっと叩き続ける。実に理不尽な世界なのである。


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