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文:窪田みちる
世界的な新型コロナウイルスの流行によって、人々の生活はガラリと変化した。ロックダウンや外出制限などが行われ、メンタルヘルス(心の健康)に不調をきたしている人が続出しているという。
そんな中、米スポーツ用品大手ナイキが下した“ある決断”が大きな話題になっている。
メンタルヘルスを優先しながら仕事はできる
ナイキのグローバル・マーケティング・サイエンスのシニアマネージャーであるマット・マラッツォ氏は先月、自身のLinkedInにて、オレゴン州にある本社オフィスを1週間閉鎖するという声明を発表した。目的は、従業員に「休息と回復のための休暇」を与えるため。これにより、ナイキ本社に勤務する従業員は、1週間の特別有給休暇を取得した。
マラッツォ氏は、従業員に「時間をかけてリラックスし、ストレスを解消し、大切な人との時間を過ごして下さい。働かないで下さい」と異例の呼びかけ、「これまでにない1年(または2年)の中で、休息と回復のための時間を取ることは、良いパフォーマンスを行い、平常心を保つための鍵となります」と綴った。
そして、コロナ禍の経験を振り返り「私たちが従業員に示し続ける共感と優しさが、今後の働き方に良い影響を与えることを期待しています」との考えを明かし、今回の休暇が単なる1週間休みではなく「メンタルヘルスを優先しながら、仕事を両立できることを示します」と主張した。
コロナ禍で広がる、従業員のメンタルヘルスへの配慮
従業員のメンタルヘルスを重視する動きは、ナイキ以外の企業にも広まっている。ソーシャルメディア管理システム大手のHootsuite社は、新型コロナウイルスの大流行によって「メンタルヘルスがいかに重要かを思い知らされました」とブログで述べ、従業員を対象に初となる「ウェルネスウィーク」として、7月5日から12日まで休暇を与えた。
ビジネスSNSのLinkedIn社も4月に従業員に1週間の休暇を追加。同社の最高人事責任者のトゥイラ・ハンソン氏は「本当に価値のあるものを提供したかったし、今最も価値があるのは、私たちが歩み寄ることです」と語った。
また、ナイキと同じくオレゴン州に本拠を構える半導体大手インテルの取り組みも興味深い。従業員は勤続4年で4週間、あるいは勤続7年で8週間の「サバティカル休暇」を選ぶことができ、さらに今年は半期ごとに12時間の追加休暇を取得できるようになった。
コロナ禍で注目を集める、企業による従業員のメンタルヘルスケアの配慮。従業員が心も体も健康に働くことができる環境が、さらに広まっていくことを願うばかりだ。