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EVENT | 2023/03/27

日本企業が弱い「CFRPを用いた製品事業化」を強力サポート。ヒット商品も続々 金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)

文:神保勇揮(FINDERS編集部)
注目の複合材料「CFRP」の素材、炭素繊維の世界トップの供給を活かし「製品での活...

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文:神保勇揮(FINDERS編集部)

注目の複合材料「CFRP」の素材、炭素繊維の世界トップの供給を活かし「製品での活用」に注力

金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)は、大学の附置研究所として文部科学省「国際科学イノベーション拠点整備事業」により2014年3月に竣工した研究機関。炭素繊維と樹脂の複合材料「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」を中心に、複合材料をより多くの分野で利用できるようにするための研究・開発を日々行っている。

CFRPは鉄やアルミなどと比べて軽量かつ高い強度・剛性を誇る。日本企業(東レ、三菱ケミカル、帝人)が世界シェアの約7割を占め、世界的に市場成長が続いており、自動車や飛行機などでの採用も進んでいるにも関わらず、日本勢はこうした「ものづくりの実践」分野において大きく出遅れているという。そのような現状を改善するために日々活動しているのがICCだ。産学連携のイノベーションをおこす拠点として設立されたセンターであり、最初から企業・行政・他大学との協働を通じた社会実装を目標に置いている。産学連携コーディネーターの斉藤義弘氏は、ICCの特徴を以下のように語る。

「大学と企業の共同研究はシーズを持つ研究者と企業の1対1関係になることが多いですが、ICCには企業から派遣されたメンバーシップ研究員も常時50〜60名ほど在籍しており、『アンダーワンルーフ』のコンセプトのもと、異分野融合体制で取り組むオープンイノベーションを志向しています。また企画戦略室という、企業の経営企画部に近い機能を持つ部門があり、研究開発のプランニングやコーディネート、企業のネットワーク形成支援、資金獲得のサポートなども能動的に行えます」(斉藤氏)

「先端適用技術の研究」「人材育成」「エンジニアリング支援」の3本柱でイノベーション創出

ICCはイノベーション創出に向けて「先端適用技術の研究」「人材育成」「エンジニアリング支援」の3本柱を掲げる。

研究面では名古屋大学ナショナルコンポジットセンター、岐阜大学Guコンポジット研究センター、東京大学、そしてヨーロッパ・台湾・マレーシアの研究機関と提携し、カンファレンスの主催、海外展示会への日本企業団としての出展、日独国際共同研究プロジェクトの立ち上げなどを手掛ける。また人材育成では、博士前期課程における、学生、社会人合同の複合材料領域の特別講義を毎年実施しているほか、強化プラスチック協会、先端材料技術協会などに協力し実践セミナーも多数開催。エンジニアリング支援は、同センターに備わる先端設備を用いた複合材料の分析・評価から商品開発・製造に至るまで、あらゆるフェーズでの技術的サポートを請け負える体制を整えている。

「技術の成熟度を評価するTRL(技術成熟度)という指標がありますが、ICCでは基礎研究にあたるTRL1〜3だけではなく、企業による事業化段階にあたるTRL8〜9との中間の応用分野であるTRL3〜7の領域をつなぐ存在でありたいと考えています。ICCの研究利用者は年間約3000人に上り、異分野・異業種・複数企業が集結するプラットフォームに育っています。CFRPに限らず、複合材料で何かしたいと考える方はぜひ一度いらしていただきたいです」(事務室長 高田康宏氏)

大手メーカー、スタートアップいずれも採用事例アリ。今後は教育面もさらに強化

写真左:斉藤義弘氏 写真右:高田康宏氏

ICCが企業との共同研究により社会実装に至ったケースのひとつに、石川県の繊維メーカー、サンコロナ小田が製品化した新素材「Flexcarbon」がある。Flexcarbonはモザイク状になっており、簡単に複雑な形状が作れるうえに強度が高く、温めると柔らかくなる特徴を持つ複合材料だ。アシックスが開発した、スパイクピンのない短距離レース用スプリントシューズ「METASPRINT」にも採用され、東京五輪出場選手も使用している。また老舗金属加工メーカーのニットーがスピンオフ事業として「立ち仕事の負担を軽減する」をコンセプトに開発したアシストスーツ「archelis(アルケリス)」にも採用され、大幅な軽量化に貢献した。

「炭素繊維の有用性は多くの業界で認識されていますが、まだ国内メーカーが積極的に取り入れられる状況には至っていません。素材を用いた製造プロセスまでは構築できても、実際に売れるプロダクトに仕上げて事業化することは難しい。中小企業になればより難しいチャレンジになってしまうと思いますので、そうした部分を我々が全力でサポートしていきたいと思っています」(高田氏)

またICCでは今後、これまでメインで注力してきた産学連携のみならず、教育関連の取り組みもさらに強化していきたいとしている。もし専門人材教育などで悩んでいる企業がいれば、一度相談してみるのも良いかもしれない。


金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)

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