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EVENT | 2023/03/22

企業ニーズも取り入れ「研究・開発・生産のデジタル化」を推進 広島大学 デジタルものづくり教育研究センター

文:黒澤結衣
企業の意見を取り入れ実証施設「テストベッド」を竣工

ひろしま産学共同研究拠点
広島大学 デジタル...

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文:黒澤結衣

企業の意見を取り入れ実証施設「テストベッド」を竣工

ひろしま産学共同研究拠点

広島大学 デジタルものづくり教育研究センターは、広島大学と自動車メーカー・マツダを中核とした地域の企業が一体となり、デジタル技術を活用した世界トップレベルのものづくりを研究・実現するために設立された。

内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金」事業を契機として2019年2月に設置。とりわけ企業と大学のコミュニケーションを密にしながら共同研究開発を推進することに重きを置いているのが最大の特長だ。

2022年に竣工したテストベッド 写真左:データ駆動型研究棟 写真右:材料MBR研究棟

もともと広島県では自動車産業の産学官連携が進められていた。2022年には企業のニーズを取り入れながら研究成果の社会実装に向けた実証・検証の場として「テストベッド」が竣工。主に自動車産業を支援する「材料MBR棟」と、さまざまな研究が可能な「データ駆動型研究棟」の2棟が並んでいる。企業では導入が難しい大型成形機などを導入し、大学シーズを利用しながら生産段階における検証が可能だ。

「今までの工業技術は職人技として経験に基づいて伝承されていました。しかしこれからの時代は経験を数値化して集積していくことが重要だと考えています。データを使って考え、誰でも効率よく情報の受け渡しができる。それこそがデジタル化だと考えており、本施設の名称が表す通り目指している方向です」(センター長 林隆一特任教授)

「共創コンソーシアム」を組織。企業と二人三脚でプロジェクトを進める

写真左:林隆一氏 写真右:石井抱氏

同センターでは現在、主に自動車産業にまつわる以下の3つのプロジェクトを進めている。それぞれに共創コンソーシアムを組織し、参画する地域の企業は50社以上に及ぶ。

・具体的な開発ニーズから最適な素材をバックキャストで明らかにする研究のデジタル化「材料MBR(モデルベースリサーチ)プロジェクト

・モノや機械は経年変化や環境、動作条件に応じて特性が変化する中で、どのような変化に対しても絶えず同じ性能を維持する制御をできるようにする開発のデジタル化「データ駆動型スマートシステムプロジェクト

・高速ビジョンにより実現される「振動の見える化」や「広範囲の同時見える化」を行うスマート・検査モニタリング技術により、生産工程・製品開発プロセスを革新する、生産のデジタル化「スマート検査・モニタリングプロジェクト

「スマート検査・モニタリングプロジェクトでターゲットとしているのは『振動』です。高速カメラと高速首振り装置を合わせ、瞬時に広範囲の振動を「見える化」します。人間の目には見えない現象を光センサーとして捉えることができ、工場などで異常動作を検出するのに役立ちます。企業にヒアリングしたところ、『振動の見える化』は非常にニーズがありました。現在は9社の共創コンソーシアム参加企業と共同研究を行っており、トライアル・トレーニング、パイロット評価の流れを実践しています。当センターは、アンダーワンルーフとして異文化の専門家である技術者と大学教授とが交流して研究を行える場所。丸投げするのではなく、お互いの分野に踏み込みながら双方にとってプラスになるのかどうか理解しながら進めることが重要です」(プロジェクトリーダー 石井抱教授)

世界に通用する「広島ブランド」を広めていきたい

また2021年に広島大学大学院 先進理工系科学専攻が開設した、修士・博士向けの「スマートイノベーションプログラム」とも連携。未来のものづくりを担う人材育成を図っている。

「テストベッド、産業界、スマートイノベーションプログラムというトライアングルで技術と人材が上手く循環することを目指しています。産業界からは技術者を客員教員として派遣してもらい、学生はその研究テーマに参加する。すでに多くの賞を受賞するなど連携も進み、いい循環を実感しています。多くの企業に波及していくのが狙いです」(副センター長 坂元康泰特任教授)

さらに2023年4月からは自動車産業の課題であるEVをより競争力のあるものにしていくための新規プロジェクトをスタートする。

「内閣府の支援がありテストベッドを作ることができました。これから5年間はデジタル×ものづくりという分野はブレずに、新規プロジェクトでも産学官連携をしっかりと進めていくことに注力したいと考えています。広島大学は地域密着型が強みです。この強みを地域だけではなく日本国内、そして世界へと広げ、広島ブランドは世界に通用するのだということを伝えていきたいです」(林氏)


広島大学 デジタルものづくり研究センター

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