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EVENT | 2023/03/21

地域課題の解決をまるごとプロデュースする「長岡技大モデル」をベースに世界的業績も多数 長岡技術科学大学 国際産学連携センター

全国の高専と同大学の学生が主体となって運営する、SDGsに貢献する技術科学イノベーションに関する「国際会議STI-Gig...

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全国の高専と同大学の学生が主体となって運営する、SDGsに貢献する技術科学イノベーションに関する「国際会議STI-Gigaku2022」での連携ネットワーキングの模様

文:児島宏明

「材料科学・電力工学・環境科学」の強みをベースに数々の成果を誇る

山口隆司教授(写真左)、中山忠親教授(写真右)

長岡技術科学大学 国際産学連携センターは、産学連携によって地域課題の解消やイノベーション創出に取り組む研究拠点だ。

今回は同センターの中山忠親教授と山口隆司教授の2名に、具体的な取り組みや研究成果、今後の展望について聞いた。

同センターでは、大学の強みである「材料科学・電力工学・環境科学」が関わる領域を中心に、微生物の培養、次世代バッテリーの開発、未利用資源の利活用など、多数の社会課題を解決している。

同センターを象徴する取り組みが「長岡技大モデル」と呼ばれるソリューション。地域課題の解決をまるごとプロデュースするのが特徴だ。地域課題や企業ニーズの把握、研究者が有する技術シーズの活用、連携活動資金獲得、支援企業連携、商品開発、販路開拓、広報など、課題解決までのストーリーを構築し、すべてのプロセスをステークホルダーと共に実行している。これまでに数多くの地域課題を解決しており、全国から問い合わせが絶えない。

「長岡技大モデル」の一例として水処理技術バージョンを示す。微生物活用型水資源循環技術をコアにして、エネルギーや食糧分野等ともコラボして、国内外での社会実装まで推進する

「私たちはそれぞれの課題に合致した技術の活かし方と運用を考えるプロセスを『技術プロデュース』と呼んでいますが、単なるマッチング、コーディネートではなく、課題解決の入口から出口まで、全体をプロデュースできるのが私たちの一番の強みだと考えています」(中山氏)

企業・自治体だけでなく全国の高専と連携し、海外でも活躍

同センターが手掛けた、近年特に注目を集めた成果としては以下の3つがある。

高専生の技術とアイデアでアフリカの社会課題解決を目指す「JICA-高専オープンイノベーションチャレンジ」 
長岡工業高等専門学校、国際協力機構(JICA)と連携して実施したアフリカ、ケニアにおけるタンパク質確保のための魚の養殖の取り組み。アフリカの現地連携先と設定した課題に対して、全国から課題解決提案を募り、選抜された高専生チームがソリューション提案と現地検証を行った。魚の養殖に欠かせないエサの安定供給を目指し、「アメリカミズアブ」の飼育・選別方法の改良を実施。アメリカミズアブの飼料化と養殖の効率化に成功し、ケニアの社会課題であったタンパク質の安定供給を実現した。

ケニアでの社会貢献は上記の事例に留まらない。同国郊外では電気の送電、生活用水のインフラ整備がなされていないところが多いため、送電のない地域でも使用できる生活用水供給装置を、ケニア郊外の教育施設に社会実装した

ケニア郊外の教育施設支援の様子

生命の進化の鍵を握る微生物の培養に成功
これまで謎とされていた進化の過程のミッシングリンクを埋める微生物の培養に成功。生命進化のメカニズムをひとつ解き明かしたとして世界的に高い評価を得た。本研究の成果は、2019年12月にScience誌が選ぶ2019年の「世界10大科学ニュース」に選定された。本センターでは、微生物を活用した産業廃水、生活排水の社会実装を推進している。その中の微生物培養に適した技術を活かし、生命の起源に迫る基礎研究に関わっている。本センターでは、基礎から社会実装までの知見を総合的に蓄積し、活用している。

次世代バッテリーの開発
日本電気硝子と共同で、酸化物で構成する全固体ナトリウム(Na)イオン電池を開発。リチウムイオン電池の課題であった安全性が解消され、次世代バッテリーとして注目を集める。研究レポートはScience誌の姉妹誌であるScientific Report誌に掲載され、2020年に掲載された自然科学のすべての論文の中でダウンロード数が第3位に。同年に猛威を振るった新型コロナウイルス関連の論文以外で唯一ダウンロード数の上位に入った。

「長岡技大には、ベンチャー企業の代表取締役など、豊富なビジネス・プロデュース経験を持つ客員教授・特任教授が多く所属しています。研究開発と社会実装を同時に考えられる、このような人材を揃えている点も私たちの強みです」(山口氏)

高度な知と技術プロデュース力によって、企業・自治体と連携して地域課題の解決に取り組み続けるのが同拠点の使命。今後はアフリカ・ケニアの事例のように、海外でも「長岡技大モデル」を展開するのが目標のひとつだ。

「本拠点の理念は、全国の高専と連携し知を活用した地方創生と人材育成に取り組み、活動を支援することです。国内はもちろん高専が所在するベトナム・タイ・メキシコ・モンゴルといった外国も対象範囲となります。またアフリカは高専という教育システム自体の輸出が進められている地域で、ご紹介したケニアの事例もこのような背景があり実現に至りました(中山氏)

今後の展開として「XRによるものづくりのDX化・GX化の推進」という大きな目標も掲げる。高度な知と技術プロデュース力を有する本拠点から、今後どのようなイノベーションが創出されるのか。今後の動向にも注目が集まる。


長岡技術科学大学 国際産学連携センター

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