ITEM | 2023/02/20

クリエイティブな仕事に活きる「ユーモア」の学び方 代官山 蔦屋書店で人気の一冊

代官山 蔦屋書店にてコンシェルジュを務める岡田基生が、日々の仕事に「使える」書籍を紹介する連載「READ FOR WOR...

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代官山 蔦屋書店にてコンシェルジュを務める岡田基生が、日々の仕事に「使える」書籍を紹介する連載「READ FOR WORK & STYLE」。第3回となる本稿で紹介するのは、ジェニファー=アーカー、ナオミ・バクドナス 著、神崎朗子 訳『ユーモアは最強の武器である―スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』です。

人によってはかなり身構えてしまう「ユーモア」という言葉。

ですがその秘密を紐解き、身につければきっとあなたの武器になるはず。代官山 蔦屋書店でも今、とても人気の一冊ということでご紹介いただきました。

岡田基生(おかだ・もとき)

代官山 蔦屋書店 人文コンシェルジュ。修士(哲学)

1992年生まれ、神奈川県出身。ドイツ留学を経て、上智大学大学院哲学研究科博士前期課程修了。IT企業、同店デザインフロア担当を経て、現職。哲学、デザイン、ワークスタイルなどの領域を行き来して「リベラルアーツが活きる生活」を提案。寄稿に「物語を作り、物語を生きる」(『共創のためのコラボレーション』東京大学 共生のための国際哲学研究センター)など。
Twitter: @_motoki_okada

ハードルが高い「ユーモア」。でも第一歩はとっても簡単

ジェニファー=アーカー、ナオミ・バクドナス 著、神崎朗子 訳『ユーモアは最強の武器である―スタンフォード大学ビジネススクール人気講義』(東洋経済新報社)

2019年のアメリカの労働統計局の調査によると、平均的な人が生涯のうちに職場で過ごす時間は13年2カ月。それに対して、生涯で友人たちとの交流に使う時間はたった328日でした。

人生の大部分を仕事が占めているなら、毎日楽しみながら働きたいものです。それでも、今の仕事を心から楽しんでいると言える人は少数派でしょう。それなりに向いている職業に就いているにも関わらず、日々あまり楽しめていないとしたら、それはどうしてでしょうか。おそらく、課題への取り組みがうまくいっていないか、周囲の人との関係がうまくいっていないか、あるいはその両方でしょう。

課題への対応力を上げることと、人間関係をよくすること。それぞれ別の話のように思えますが、その両方を実現する魔法のような力があります。それが、この本で語られる「ユーモア」なのです。

本書は、行動心理学者とコーチングのプロフェッショナルによる共著。人と人の間につながりを生み出し、クリエイティビティを高める「ユーモア」の力を、膨大なデータと多角的な理論、そして親近感のある実体験に基づいて明らかにしています。

正直なところ、私自身も、この本を読むまで「ユーモア」に対して憧れと一種の恐れを感じていました。ユーモアはとても魅力的だけど、自分にはその才能があるのか? ユーモラスになろうと力んでしまうと痛々しい人になるだけでは? そんなふうに怯えていました。

ですが、実は、ユーモアの力は生まれつきの「才能」ではなく、学ぶことのできる「技術」なのです。適切なトレーニングを通して身につけ、さらに磨いていくことができます。

また、職場を楽しくするために、とにかく笑いを取ろうと頑張る必要もありません。何より大切なのは、面白くなろうとすることより、自分にユーモアの力があることを周囲の人に伝え、「一緒にいて楽しい人だ」と思ってもらうことです。

それでは、どうすればユーモアの力を持っていると感じてもらえるのでしょうか。答えは、極めてシンプルでした。他の人がジョークを言ったり、何か微笑ましいことが起こったりした瞬間に、サッとにこやかに笑えばよいのです。人を「笑わせる」前に、自分自身がいつも「笑える」ようになることが大切なのです。この考え方を知って、私の中で「ユーモア」を身に付けることのハードルがかなり下がりました。

そもそも、「ユーモア」とは何でしょうか。わかっているようでなかなか言葉にしづらい核心を、本書は「事実」と「ミスディレクション」という二つのキーワードで明快に説明しています。このキーワードで、本書で紹介されている飼い主と犬にまつわるちょっとしたジョークを読み解いてみましょう。

「犬は地球のリーダーだ。生物には2種類あるとして、ひとつはうんちをするほう、もうひとつはうんちを拾うほう。で、どっちが偉いと思う?」

「ミスディレクション」とは、「意表を突くため、答えに目が向かないように誘導すること」です。犬が地球のリーダーなのは「人が犬のうんちを拾うから」という答えは予想外なものです。これが「ミスディレクション」の側面です。その一方、「人が犬のうんちを拾うこと」自体は当たり前のこととして知られています。これが「事実」の側面です。みんなが共有している事実と、そこで生じるミスディレクション。その両面があって、ユーモアは成立します。ユーモアとは、みんなが知っている事実の中に隠れている面白さを発見するところから始まるのです。

ですから、ユーモアにとって大切なのは、事実の観察です。そして、その事実に対して、型にはまらない見方をすることです。この習慣は、クリエイティビティを高めることになります。柔軟な視点で現実を見渡し、新たな気づきを得るクリエイティブな発想は、次のイノベーションを生み出します。ユーモアがその回路を活性化させるのです。

本書は、ユーモアの効用から、ユーモアのメカニズム、ユーモアの種類、ユーモアのある組織の作り方、失敗対策まで、さまざまなトピックを丁寧に解説しています。そのため、ユーモアに苦手意識がある人から、さらなる高みに行きたい人、組織のカルチャーを変えていきたい人まで、さまざまなニーズに対応できます。

柔軟な発想で日常の中にある面白さを発見し、周囲の人たちとシェアしながら、ユーモアを育んでいく。そんな愉快で賑やかな旅路の案内役になってくれる一冊です。


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