文:滝水瞳、ヤジマミユキ
目標に達成した時、人は大きな喜びを得る。誰かのために為し得たことであればなおさらかもしれない。
このほど、あるアスリートが達成したある特別な山登りに、世界中から感動の声が寄せられている。
「山に登ってみたい」障害を持つ女性の夢
ギリシャの長距離選手であるマリオス・ジャンナコウさん(28歳)は今年9月、地元の女子大生エレフテリア・トシウさん(22歳)と出会い、友人となった。エレフテリアさんは、いつかギリシャ国内最高峰のオリンポス山に登りたいという夢があったが、身体に障害があり山登りができるほど手足を動かすことができなかった。そのことを知ったマリオスさんは、なんとエレフテリアさんを連れてオリンポス山のミティカス峰(2918m)へ登ることを決意したのだ。
実はマリオスさんはさまざまなレースに挑戦する世界的アスリート。2018年には極寒の北極でのウルトラマラソン(150キロ)を39時間31分で制覇し、完走したわずか14人のうちの1人となった。さらに同年、ドバイのアル・マルムーン砂漠で世界最大の砂漠スーパーマラソン(270キロ)を横断し世界最年少記録を樹立した。ニュースサイトの『Greek Reporter』によれば、マリオスさんはオリンポス山に過去50回も登っているという。
自身の豊富な経験に加え、8人のサポートチームを組み、万全の態勢で臨むことになった。登山当日は改造したバックパックにエフテリアさんが入り、安全を確保したうえでマリオスさんが担いで登ることにした。
登山の10日前、マリオスさんは自身のInstagramにエレフテリアさんとのツーショット写真とともに、意気込みを投稿。「私たちが成功すれば、彼女はギリシャを最高点から見る最初の障害者になるでしょう」とコメント。また、「個人的には、これまでのレース以上に準備ができていると感じています。エレフテリアには私自身がより良い人間になる機会を与えてくれたこと、そして何も恐れることなく生きるべきことを思い出させてくれたことに感謝しています」と伝えている。
登山決行の日、順調に標高2400メートルまで到達し、初日は山小屋で一泊。翌朝6時に再び山頂を目指し、約3時間後の10月5日午前9時2分、ついに計10時間以上かけて目標地点に到着した。
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