CULTURE | 2020/09/11

バンドマンはなぜ投資家になったのか。生活を守り、未来を作る実は知らない「投資」の話

「投資」という言葉にどんなイメージを持つだろうか?
なにやら怪しげな儲け話や、(例えば前澤友作氏のように)莫大な資産を...

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生活を守る。未来をつくる

―― 意識していないだけで、投資は生活の中に常に存在していますね。

ヤマザキ:そうですね。自分のエネルギーの使い道が社会に影響しているということに自覚的になると、さらに見えてくるものがあるかと思います。自分の場合、毎日が投票日のような気持ちで生きてます。普段の仕事でも、くそみたいな社長の下で文句を言いながら働く人もいるけれど、働き続けている時点で結局そのくそみたいな会社が明日も続くための力になってしまっているわけで、その会社に投票しているようなもんかもしれない。

それしか選択できない状況にある人もいるとは思うし、俺が思う「良い」が誰にとっても「良い」というわけではないけど、いつの間にか無自覚的に何かに加担してしまって、世の中が自分好みじゃない方向に加速しまうことなんかもある。

―― 「投資をしている」という自覚を持っているかどうかで、生活の見え方が変わっていきそうですね。
企業への投資に関しては、本の中では、障害者雇用に力を入れているトレー会社のエフピコや、日本の食料自給率の向上に注力するカゴメを良い企業の例として紹介されていました。最近気になっている企業や取り組みはありますか?

ヤマザキ:最近というわけでもないですが、鎌倉投信という投資信託の会社があって、ここは社会への取り組みや労働環境などを基準に選ばれた、「いい会社」にしか投資しないそうです。たしかエフピコもカゴメも鎌倉投信の投資対象だったと思います。

個別株をひとつひとつ選んでいくほど時間の余裕はないけど、信用できる人にお金を渡して、良い場所で運用してもらいたい、みたいな考え方であれば良い選択肢となるかもしれません。もちろんこの場合も「いい会社」というのが誰にとって良いかっていうのは微妙なところですが、最近は日本でもこういった投資信託が少しずつ増えてきていて、他の選択肢もいくつかあります。

―― 投資を始める入り口として、わかりやすいかもしれませんね。一方で、資産運用の面においても、銀行に預金するより投資に回したほうが合理的なのではないか?ということを本に書かれていました。こういった場合の「投資」は生活の中でどのような役割りを果たすと考えますか?

ヤマザキ:俺の場合、資産の半分以上は海外株式になっているので、日本の経済がむちゃくちゃなことになってもダメージが少ない設計になっているんですよ。だから万が一日本の経済がまるでダメになって、収入や貯金がなくなったとしても、世界中の株価が同時に暴落しない限り数年くらいは何とかなるし、その間に自分や周りの人の生活くらいは立て直せるんじゃないかと思っています。

―― 安定感がありますね。

ヤマザキ:そうですね。こうやって資産を分散させることで、例えば今年のパンデミックのような想定外の事態が起きても、生活を脅かされにくい姿勢を作ることができると思います。儲かるというよりは、しぶとくなる投資です。もし持ち家や銀行預金みたいな国内資産しか持ってなくて収入源も1か所だったとしたら、ここまで悠長な態度でいられなかったかもしれませんね。

―― 不測の事態の中でも生活を守っていけるというのは、純粋に資産を増やす以外の大きなメリットかもしれませんね。

ヤマザキ:自分たちの生活を守ることにもつながるし、それは自分たちの未来をつくることにもつながっていきますよね。

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