「投資」という言葉にどんなイメージを持つだろうか?
なにやら怪しげな儲け話や、(例えば前澤友作氏のように)莫大な資産を持つ人々だけに許された、自分たちには関係ない言葉だと思う人も多いかもしれない。
投資家であり、バンドマンでもあるヤマザキOKコンピュータさんは、今年6月に、『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』(タバブックス)を刊行。投資とは、普段から私たちの生活に根付くものであり、投資によって自分たちの未来をよりよい方向へと変えていくことができるかもしれない、と語る。
パンクと投資の意外な関係。あまり知られていない銀行や企業の活動。そして投資によって作っていけるかもしれないその未来について話を聞いた。
聞き手・文:赤井大祐 画像提供:ヤマザキOKコンピュータ
ヤマザキOKコンピュータ
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1988年生まれの投資家・文筆家・ウェブメディア運営者。バンド活動しながらライブハウスで働いた経験などを元に、パンクの視点からお金を考える。お金に関するウェブメディア『サバイブ』や、沖縄のオルタナティブスペース『NEO POGOTOWN』の運営に携わる。
Twitter:@0kcpu
真面目な銀行と遊び人な投資家?
ヤマザキOKコンピュータさん
―― ヤマザキさんは昨年会社を辞め、現在は個人投資家として活動されているとのことですが、投資家の方が普段どんな生活を送っているのか、とても気になります。
ヤマザキ:今は沖縄市という場所に住んでいて、『サバイブ』というお金や投資に関するウェブメディアへの寄稿、我ヲ捨ツルというバンドをやりながら、「ネオポゴタウン」というオルタナティブスペースの運営に関わったりしています。
―― 投資家というと、常にモニターを何個も使って株価の動向をチェックしているようなイメージでしたが、思っていたよりもいろいろな活動をされているんですね。
ヤマザキ:よく言われるんですが、自分の場合は生活の中で投資家らしいことはほとんどしてなくて、新しい商品が出たら分析したり記事を書いたりするけど、基本的には朝起きて歯を磨きながら株価を見るくらいなもんです。モニターも1個しかないし。お金のことを考えている時間よりも、明日何して遊ぶかを考えている時間の方が長いです。
―― そもそも投資を始めたきっかけはなんだったのでしょう?
ヤマザキ:10代の時からパンクバンドをやっていて、その頃のバイト先が音楽スタジオやライブハウスだったんですよ。職場と遊び場が一緒だったから遊びに全然お金がかからないし、実家に住んでいたこともあって、22歳ぐらいの時に200万ぐらいお金が溜まったんです。
―― このタイミングで元手ができたわけですね。
ヤマザキ:そうすると、まずそのお金を投資信託とか定期預金にしないかって銀行の人が持ちかけてくるんですよ。でも俺は昔から銀行のことをあまりよく思っていなかったので、もっとちゃんと調べていくと、証券会社とかの方が安く投資信託を買えるということがわかり、じゃあそっちではじめてみよう、という感じで。
―― なるほど。今のお話の中で「銀行のことをよく思っていなかった」という部分にひっかかりました。これはどうしてですか?
ヤマザキ:まず自分が相当疑り深い性格ということもあって、自分がお金を預けている銀行についていろいろと調べていたことがあったんです。その銀行では、投資やお金に関する知識を持っていない高齢者に必要のない商品を買わせたり不必要に売らせたりする、「回転売買」が上手い社員が評価されているみたいでした。そうやってたくさん手数料を搾取するようなことを平気でしていたんですよね。
―― 特に高齢者の方は銀行への信頼も比較的厚いでしょうから、まさかそんなことをやっているとは思わないでしょうね。
ヤマザキ:そうですね。あと、これは本にも書いた話ですが、国際NGOのオランダPAXが2017年に発表したレポートに、日本のいくつかの大手銀行が、クラスター爆弾という兵器を製造する企業へ投資しているということが書かれていました。この爆弾は大量の民間人を巻き込む非人道兵器として知られていて、日本を含む多くの国は使用を禁止する条約に加盟しています。
―― 私たちが預けたお金が、戦争での使用さえ禁止されている兵器の製造に使われていた、と。
ヤマザキ:そう、実は自分たちが知らないところで、そういったビジネスが平然と成り立っている。しかも銀行といえば、真面目で立派みたいなイメージが未だに色濃く残っているじゃないですか。
―― 銀行は堅実で実直なイメージがありますよね。
ヤマザキ:その一方で、俺たち投資家に対する世間的なイメージって、ある種のギャンブラーのような扱いだったりする。でも実際には、自分のお金の置き場所をきっちり調べたうえで誠実に選んでいくには、投資は欠かせないツールだと思うんですよね。