EVENT | 2020/06/29

接触確認アプリ「COCOA」を巡る混乱、何が問題だったのか【連載】高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」(5)

新型コロナウィルスの一環として、厚生労働省から接触確認アプリ「COCOA」が6月19日にリリースされました。政府肝入りの...

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COCOAへの混乱したフィードバック

COCOAは国のプロジェクトとして注目が集まったせいかリリース前から注目が集まり、公開前後から今に至るまで、プロジェクトの目的や開発主体を理解していない意見や批判が目立っています。

また、プロジェクトの責任者である厚生労働省からの発表も、6月19日の加藤大臣の会見では試行版であることにまったく触れずに「多くの人にインストールしてほしい」という要望が語られるなど、ちぐはぐな行動が見られます。厚生労働省とパーソルが担っている、プロジェクト管理には大きな問題がありそうです。

アプリケーションの動作や仕様に関して不具合や改善点があった場合には、GitHub上でIssueやPull Requestなどの形で問題提起するのが生産的なやり方です。Issueにならないような曖昧な話はプロジェクト主であるパーソルに挙げるべきで、「そもそもこのアプリに意味があるのか」的なプロジェクト全体への疑義はプロデューサーである厚労省へ出すべき話だと思います。

フィードバックはプロジェクトを前進させる重要な要素です。しかし、アプリの公開当初は、どこにどういうフィードバックを出すべきかを踏まえていない幼稚な批判が、SNS上で目立ちやすいCovid19-Raderの開発メンバーに集まりました。

責任を持つ企業に予算をつけてプロジェクトを発注し納品するという部分では、COCOAも他の政府調達プロジェクトも変わりません。

オープンソース・ソフトウェアとして開発する手法を選択するのは、開発とフィードバックの精度を上げる効果的な方法で、実際に多くのIssueが寄せられています。有償か無償かを問わず、「誰が開発に携わることができるか」を限定するか広く募るかが、オープンソース・ソフトウェアとするかしないかの要点です。

厚労省は「インストール」でなく「開発への協力」を求めるべき

僕自身は、そうやってソフトウェアに主体的に関わっていく人をどれだけ増やせるかが、企業や社会がイノベーションを起こす上で大事だと思っています。厚労省や加藤大臣は試行版であることに触れずに人々にインストールを促すのではなく、「こういうアプリの開発を始めたから、有志はぜひ協力してくれ」と訴えるべきでした。

どこの国でも企業でも、開発に携わる人を限定せず、増やしていこうというオープンソース・ソフトウェアは増えています。マイクロソフトもGoogleも自社製品である開発言語や開発用ソフトウェアをオープンソース化し、多くのエンジニアと共に開発しようとしています。「そのプロジェクトに関わる人をどれだけ増やしていけるか」は多くの開発プロジェクトにとって重要な要素になりつつあります。

今回の話は、無償か有償かという話ではなく、「政府が調達するアプリは誰のもので、どうやって開発されるべきか」だと思います。インド政府はIndia Stackなどの国民IDアーキテクチャーをオープンソースにして海外展開を志向しています。シンガポールは接触確認アプリについて、Google/AppleのAPIを使わないハードウェア版の仕組みを開発中で、こちらも国際的な連携を狙っています。オープンソースによるアプリ開発の解放は、そうした可能性を秘めています。

今後日本政府内にオープンソースプロジェクトの開発の知見が共有されることで、さらに多くの政府調達が、オープンソース・コミュニティと連携していくことを願っています。


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