文:赤井大祐
服装はその人のパーソナリティを最もわかりやすく示すものの一つと言えるかもしれない。しかし服装だけで、その人のすべてをわかった気になってしまってはいないだろうか?
ある黒人男性がSNSに投稿した、服装の違いによって生まれる偏見を訴えた動画が、注目を集めている。
「フード付きパーカー姿の私のことも嫌わないでほしい」
イギリス・ロンドン出身の医師、エメカ・オコロチャさん(27歳)は6月5日、2つの服装に身をまとった自身の動画をTikTokに投稿した。青い医療用スクラブと、黒色のパーカーだ。
そして「もし医療用スクラブ姿の私を称賛するのであれば、フード付きパーカー姿の私のことも嫌わないでほしい」「レイシズムはだめだ。差別はだめだ」とテロップを挿入。この動画は、現在23万件を超える「いいね」を集めている。
この動画の背景には、2012年のアメリカ・フロリダで起きたトレイボン・マーティン射殺事件が関わっている。当時17歳だった黒人男性のトレイボン・マーティンさんがパーカーのフードをかぶって歩いていたという理由で怪しまれたことをきっかけに、自警ボランティアをしていた男に射殺されというものだ。それ以来フード付きパーカーは人種差別に対する抗議運動の象徴となり、この流れは現在の「Black Lives Matter」運動へも続いている。
一方、このコロナ禍において、多くの命を救う医師たちが人種を問わず尊敬の対象とされていることは言うまでも無いだろう。オコロチャさんは2つの服装を通して、「医師」としての自分と「黒人」としての自分、どちらも同じように尊重してほしいと訴えかけたのだ。