ロン・ジョンソン議員 Photo by Shutterstock
文:山田山太
新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経過したが、いまだにそのウイルスの全容はすべて解明されているわけではない。そのため、SNSを覗くと怪しい民間療法も多く見受けられる。
そんな中、アメリカの上院議員がコロナ治療法として持論を展開し、波紋を広げている。
凍結後もYouTubeを強く批判
米国ウィスコンシン州選出の共和党所属のロン・ジョンソン上院議員は、自身のYouTubeチャンネルで、新型コロナウイルスへの治療法として、抗マラリア薬・ヒドロキシクロロキンと抗寄生虫薬のイベルメクチンを勧める動画を投稿した。
しかし、ヒドロキシクロロキンは大規模検査の結果、効果の実証ができず、さらに心室頻拍が報告されるなど有害であることが判明。イベルメクチンも十分なエビデンスが揃っていないとして、標準治療に至っていない。昨年6月には、これらを勧める論文は、データの信ぴょう性に疑念が付いているとして、相次いで取り下げとなった。
YouTubeは6月11日、この動画をコミュニティ・ガイドラインに違反として削除し、ジョンソン議員のアカウントを1週間の凍結処分とした。YouTubeの広報担当は「私たちは、『COVID-19の医学的に誤った情報に関するポリシー』に基づいて動画を削除しました。新型コロナウイルスの治療や予防のために、ヒドロキシクロロキンやイベルメクチンの使用を勧めるコンテンツを許可していません」と『Milwaukee Journal Sentinel』の取材に語った。
この対応に対し、ジョンソン議員はYouTubeが検閲を行っていると批判。「巨大IT企業と主流メディアは、科学に人生を捧げてきた医師たちよりも自分たちが賢いと思っている」「政府機関によって決定される医学的見解のみが正しいと思い込んでいる。その結果どれだけの命が失われたのでしょう?」と述べた。
近年、SNSプラットフォームへの批判が高まっており、中でも今年1月、ドナルド・トランプ元大統領のアカウントがTwitter、Facebookを凍結した際には、賛否両論を巻き起こした。とはいえ、人命に直結する医療分野において、十分に精査されていない情報に安易に飛びつくと、文字通りの命取りとなってしまう。SNSプラットフォームは、より一層慎重な姿勢が求められるだろう。