Photo by Shutterstock
文:角谷剛
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、私たちの生活様式を一変させた。外出時にはマスクを着用し、人との距離を保ち、手を頻繁に洗うようになった。
いまだこのパンデミックに勝利したとはとても言えないが、こうした感染予防対策が思わぬ副産物を生んだようだ。
昨年3月から1年間以上見つかっていないインフルエンザウイルス
新型コロナウイルスの脅威が世界中を覆った時期、インフルエンザの感染数は歴史的な低水準に収まった。アメリカ疾病予防管理センターは、マスクの着用など地域社会の緩和対策が、その理由と見ている。
医学ニュースサイト『STAT』によると、2種類のインフルエンザウイルスが2020年3月から1年以上、世界中のどの医療機関でも検出されていないということだ。
その2種類のウイルスとは、A型インフルエンザウイルスの亜型の一つであるH3N2と、B型インフルエンザウイルスの山形系統。これらは地上から絶滅した可能性もあるという。
次ページ:インフルエンザのワクチン開発が簡素化する可能性