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文:汐里
今やどこに足を運んでも、新型コロナウイルスの感染防止対策として、ほぼすべての人がマスクを着用している。
しかし、そんなマスク需要の高まりによって、思わぬ弊害が発生している。あろうことかマスクが、海洋汚染問題の片棒を担いでいるというのだ。
使い捨てマスクはプラスチック。海の生物に悪影響を及ぼす
2020年12月、香港に拠点を置く環境保護団体『OceansAsia』は、2020年に15億枚以上の使い捨てマスクが世界中の海に廃棄されたと推定されると発表した。
世界市場調査報告書のデータによると、昨年世界中で生産されたマスクは合計520億枚。これを踏まえると、少なくとも約3%のマスクが海に流れている計算になる。重さにすると4680~6240トンにもなる。
使い捨てマスクは紙でできていると思われがちだが、一般的にはプラスチックの一種であるポリプロピレンやポリエチレンが原料だ。
同団体によると、使い捨てマスクは分解するのに450年ほどかかるとされており、その過程で微小なプラスチック粒子「マイクロプラスチック」に変化するという。マイクロプラスチックは、海の生物や生態系に悪影響を及ぼすとして近年問題視されてきた。
調査を行った同団体のティール・フェルプス・ボンダロフ氏は「コロナが香港を襲った6週間後の2月下旬から、大量のマスクが発見されるようになりました。コロナ禍以前はありませんでした」と説明する一方、「これらの使い捨てマスクは2020年、海に流入したプラスチックの内、ほんの一部でしかありません」と警鐘を鳴らす。
同じく同団体のギャリー・ストークス氏は、「海洋プラスチック汚染により、私たちの海は壊滅しつつあります。毎年推定10万匹の海洋哺乳類やカメ、100万羽以上の海鳥、さらに多くの魚や無脊椎動物などの動物の命を奪っています。また、漁業や観光産業にも悪影響を与え、世界経済に年間推定130億ドルのコストをかけています」と述べており、状況は深刻だ。
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