「粋な返し」と言われると日本語でも難しいですよね。実は、語学力を伸ばす上でもっとも重要なのは、語彙力ではなくコミュニケーション能力です。
母国語でうまく友達作りができない人は外国語でも難しいということです。試しにあなたの周りにいる外国語が堪能な人を思い浮かべてみてください。「コミュニケーションのバケモノ」な人が多くないですか?
彼らは会話の流れで咄嗟に絶妙な言葉選びをしていて、そこから新しい人間関係を構築し、さらに深く外国語を習得できるという流れを自らの中に持っているのです。そして彼らはきっと母国語でも同じことをしているはずなのです。
こういったコミュニケーションのスキルというのは、実は真似をすることで伸ばすことができます。個性が潰れてしまう可能性もあるので、自分自身の意思や考えをしっかり持った上で、コミュニケーションのバケモノに倣って言葉選びをしてみるとよいでしょう。
今回は、コミュニケーションの鍵である「sarcasm(皮肉)」を紹介します。日本では「皮肉」という概念を持って会話をすることがほとんどないので、「嫌味」と捉えられてしまうことも多いですが、少なくともアメリカではこの「皮肉」を言える人ほど面白いとされるケースが多いです(もちろん、個人差もあるので皮肉が嫌いな人たちもいます)。
使う場面の選び方は要注意ではありますが、実際にどうやって使っていくのかをご紹介します。
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フィー・ハーディソン
ライター、クリエイター
高校教師や大学留学課事務、バーテンダー、通訳・翻訳家、といった特殊な経歴を持ち、その経験を活かしてブログやYouTubeで活動。『New York Times』に取り上げられるなど、クロスカルチュアルな知識を広め、活動の幅を広げている。
ネイティブは「Great」や「Amazing」を使って皮肉を表現
まずひとつ目。皮肉を言う時は、「絶対にそうじゃないこと」を言いましょう。一番簡単なのは「Great」や「Amazing」という言葉を、最悪な場面で使うことです。
Sabina: Did she just threw up in my car?
(サビナ: 彼女、今私の車で吐いた?)
Mike: Yup.
(マイク: うん)
Sabina: Great.
(サビナ: 最高)
こうした皮肉を入れていくことでネイティブっぽい言い回しになります。前述したとおり、声色が重要なので、笑いながら明るく言えば愉快な人だと思われますし、上を向きながら真顔で怒ったように言えば皮肉屋で不機嫌な人だと思われるでしょう。演出は自分次第ということです。
軽快に答えるときは、「Duh」(当たり前じゃん)を使おう
ふたつ目は「Duh」です。最近で言えば、ビリー・アイリッシュの「Bad Guy」という楽曲でキーワードとして出てきますね。たとえば、こんなシーンで使えます。
Max: Why did you get tattoos?
(マックス: なんでタトゥー入れたの?)
Shia: For myself, duh.
(シャイア: 自分のためだよ、何を今さら)
自分の答えが100%決まっていることについて質問された時に、「Duh」を「当たり前じゃん」「何を今さら」といったニュアンスで使うことができます。たとえばお酒を飲んでいる時に、「お酒好きなの?」と聞かれても「Duh」で返せますね。
カジュアルな返し「Who doesn’t?」(そうじゃない人なんている?)
最後は、相手を肯定しながらも皮肉を発することのできる言葉選びです。
Julie: I hate my job.
(ユリエ: 仕事嫌いだわ)
Travis: Who doesn’t?
(トラヴィス: そうじゃない人なんている?)
日本語でもこういう返しはたまにありますよね。英語でも同じく Who doesn’t? は、さらりと相手を肯定でき、普通とは一味違った返しにできます。
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こういった細かな返しの引き出しは、生の会話を聞いていないと中々増やせません。Vlogger(ヴロガー)の動画をYouTubeで見てみたり、リアリティーショーを見たりすることで確実に増やしていけると思うので、本当に引き出しを増やしたい人は試してみることをおすすめします。