大手企業やスタートアップなど、さまざまなオフィスが集まる五反田。ビジネスパーソンが多いエリアだけあって、飲み歩くには楽しい街だが、接待に使えるレベルのお店探しには苦労する。
そんな五反田に今年忽然と登場したのが、江戸前握りとつまみを緩急ある構成で楽しめる「スシトウキョウ81」だ。
チェリー先生
食べ歩き部・部長
東京生まれ東京育ち。10代では外食好きな家族と、20代では目上の方々にあまたの東京レストランガイドをしていただき、30代以降は自分で開拓するのが楽しくなり、あらゆるスタイルの「外食」を楽しんできたグルメ女。プロならではのこだわりが見える瞬間、女王様気分を味わえる接客、味というよりも人に惹かれる瞬間などに魅力を見出し、レストランの楽しみ方を広げている。
少し変わったネーミングは、日本の国番号「81」から名付けたそうだ。
五反田駅を背にソニー通りを進み、程なくして路地を曲がると黒い壁に木の縦格子の扉が印象的なお店が現れる。コンパクトな店内は、白木のL字カウンターに石組みの壁が立ち上がり、モルタル仕上げのトップからスポットライトの光が伸びる。凛然としたシンプルな空間は不思議と落ち着く。
1階はカウンターで握りコース(12,000円〜)を、2階の掘りごたつ席では軽めの4,000円〜の握りコースのほかに懐石コース(7,000円)を楽しめるが、この日は大将と向き合ってカウンターで寿司とつまみを堪能した。
コースのスタートは、なんとウニの握りから。しかも贅沢に2種類の食べ比べだ。海苔で巻いた軍艦ではなく握りで提供され、大将から直接手渡しされる。
手に乗せると手渡しの理由がわかる。柔らかいウニに合わせたシャリが軽めに握ってあるのだ。撮影もそこそこに素早く口に放り込むと、ホロホロとシャリがほどけ、ウニの濃い旨味の中にシャリが溶けていく。
その日のベストな2種を提供してくれるのだが、この日は2つともバフンウニだった。1つは水素水で洗いをかけたもの、1つはミョウバンを使っていない無添加のもの。同じ種類でも締まり方や口の中でのとろけ具合が変わり、仕込みが命の江戸前らしさを満喫できる。
食感がたまらない赤貝のひもの刺身。
握りとつまみが交互に出てくるスタイルで、熱々の天ぷらや冷たいクリームチーズの酒粕漬けなど、さまざまなつまみが握りの合間にテンポよく出てくる、何とも飽きさせない構成だ。
呑んでも呑まなくても楽しめるのだが、ポン酢でいただくワカメと海ぶどうがガリと共に終始供されるので、これだけでも永遠に呑んでいられそうだ。
最初のウニは赤酢のシャリだったが、真鯵は白酢で登場。芳醇でコクがある赤酢とさっぱりとした白酢と、ネタによって2種を使い分けしているそう。粒の大きさや形が違う「ひとめぼれ」と「こしひかり」をブレンドして使用することで、深みのあるシャリになっている。
この鯵の上には生姜とネギをすりおろした薬味が乗っていたり、車海老には味噌を叩いたものが添えられたりと、ひと手間かけられた美味しさが随所に感じられる。
トロや車海老などを十二分に堪能した後、バーナーで表面を炙ってカリッとキャラメリゼさせた、まるでクリームブリュレの様な食感が特徴的な玉(卵焼き)でフィニッシュ。
満足度が高いわけだ。数えてみたら、握り12貫、つまみ8種も平らげていた。
最後に提供される玉(卵焼き)は、まるでデザートのよう。
スキンヘッドで一見いかつい印象の大将なのだが、物腰柔らかで終始気配りしてくれるこの大将の人柄も、この店の居心地の良さのひとつになっている。
気軽な飲み屋を発掘する楽しさがある五反田だが、寿司屋の不毛の地だったのも事実。小さな本格江戸前寿司店の登場で、食においてもどんどん魅力的なエリアになってくれることを期待したい。
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SUSHI TOKYO 81(スシトウキョウ81)