文:赤井大祐
今、日本全国の医療現場が悲鳴をあげている。医師の働き方改革に関する検討会で、厚生労働省は、2024年度から一部の勤務医に特例で、「年1860時間(月155時間相当)」の残業を認めると規定した。これは一般の労働者の過労死ラインの2倍にあたる時間だ。
そんな過酷な医療現場がAIの力で、改善できると大きな期待が寄せられている。
スムーズな治療方針の決定や、患者の待ち時間の短縮などの利点
Ubie株式会社は、医療現場の業務効率化を図るためのAI問診プロダクト「AI問診Ubie」を⻲⽥総合病院糖尿病内分泌内科や慶應義塾大学病院など6つの大型医療機関にて、2019年7月より業務効率化に向け導入・試験導入・共同研究を開始すると発表した。
AI問診Ubieとは、患者の待ち時間や医療従事者の事務作業等の負担を減らし、医師がより患者と向き合える医療を目指すべく開発された、“問診”に特化したAI問診プロダクト。約5万件の論文から抽出されたデータに基づき、AIが患者一人ひとりの症状や地域・年代に合わせた質問を自動で分析・生成する。患者は、受付で手渡されたタブレットから出てくる質問に沿ってタッチするだけ。およそ3分で入力が完了する。
データは問診票として即時医師の元に届けられ、患者が入力した問診内容が医療用語に変換され、カルテに落とし込まれる。これにより、診療室ではスムーズな治療方針の決定や、患者の待ち時間の短縮、そして対面する診察時間が増えることで、患者の満足度向上へつなげるというものだ。
Ubieによる問診のイメージ
大病院13 施設を含むおよそ100件の医療機関に導入
タブレットで入力された情報はこのように医師のもとへ届く。
現在、AI問診Ubieは大病院13 施設を含むおよそ100件の医療機関に導入されている。東京・江戸川区の目々澤醫院では、Ubieを導入してから医師の事務作業が削減し、外来の問診に要する時間を3分の1に短縮する実績を挙げた。また、看護婦不足に悩む長野中央病院では、「業務へのタスクシフト」を図ることができ、生産性の高く働きやすい労働環境作りの一端を担い、現場から好評の声が挙がっているという。
医療は私たちにとって欠かせない生活インフラだ。その最前線で奮闘する医師たちを支えるためにも、AIを活用することが重要だろう。