EVENT | 2020/04/15

AppleとGoogleが新型コロナ対策で異例の協調。共同開発される感染経路追跡技術でプライバシーはいかにして守られるのか?

Googleの公式ブログより

伊藤僑
Free-lance Writer / Editor 
IT、...

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AppleとGoogleが共同開発する感染経路追跡技術とは

両社が共同開発する感染経路追跡技術とは、スマートフォンを使用して新型コロナ陽性者との濃厚接触の可能性を検出・通知する技術で、感染者との接触検知には近距離無線通信規格「Bluetooth(ブルートゥース)」を活用する。

実際の感染経路追跡方法としては、Bluetoothを用いて周辺のスマートフォンを一定の間隔で検知し、互いの識別信号を端末内に保存。新型コロナの感染者が見つかった場合には、本人の同意を得た上で、過去14日間に蓄積された接触情報(スマートフォンの識別情報)をクラウド上の専用システムに送り、濃厚接触の可能性がある人たちに通知が届くという仕組みだ。

AppleとGoogleが同技術を共同開発する意味は、両社が世界のスマートフォンシェアの大半を握っていることにある。GoogleのAndroidは72.2%、AppleのiOSは27.0%で、その合計は実に99.29%に達するのだ。

米国の民間調査会社Pew Reserch Centerが2018年春に実施した調査によると、先進国におけるスマートフォンの普及率の平均値は76%で、新興国における普及率は45%。現時点ではさらに普及が進んでいることが考えられるので、両社が開発する技術には大きな効果が期待できる。

ユーザーのプライバシーはいかにして守られるのか

同技術の有効性は理解できるものの、気になるのはユーザーのプライバシー保護だ。

すでに中国や韓国、シンガポールなどが、感染者の行動を追跡して濃厚接触者をあぶり出すスマートフォン用ツールを運用しているとされるが、プライバシー保護を軽視しているのではないかと懸念する声も少なくない。

そこで両社が共同開発するシステムでは、あらかじめ許可を得たオプトインユーザーだけにサービスを提供。近距離無線技術の採用により、10m以内に端末同士が近づいた場合のみ、その日時を記録しGPSによる位置情報は記録されない。また、個人の特定に結びつくいかなるデータもサーバには残されず、スマートフォン同士が接近した記録を基にアラートが鳴らされるだけ。どこかに通報されることもない。

さすがにプライバシー保護に力を注ぐAppleが開発に参加しているシステムだけのことはある。濃厚接触の可能性を示すアラートが鳴ったユーザーは、自己判断で隔離状態に入ったり、検査を受けるなどの対応を行えば良い。

このシステムなら、家族や知人に知られたくないために感染経路の追跡が困難とされる「夜のお店」での感染についても追跡が可能になりそうだ。

AppleとGoogleは、世界各国の公衆衛生当局が利用できるAPIの提供も発表。すでに、同技術を取り入れた独自のアプリをイギリスの保健当局が開発中であることも英BBCによって伝えられている

公衆衛生当局が開発するシステムにも、AppleとGoogleが提供するサービスと同様のプライバシー保護への配慮を望みたいものだ。


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