文:米澤智子
新型コロナウイルスが猛威を振るうイギリスでは、ロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々は不自由な生活を余儀なくされている。
そんな中、ある郵便局員がユーモアあふれる方法で人々に元気を与えていると、話題となっている。
チアガール、グラディエーターなどのコスプレ
イギリスのボルドンに住むジョン・マットソンさんは4年前から郵便配達の仕事を始め、2年前から現在の配達地域を担当するようになった。地域住民ともすっかり顔見知りとなり、立ち話を楽しむようになった。しかしロックダウンが始まると住民は外出禁止となり、先行きの見えない不安が地域に暗い影を落としてしまった。みんなに少しでも元気になってもらいたいと考えたジョンさんは、ある方法を思いついた。
それはコスプレをして郵便配達するというもの。コスプレをして北海を泳ぐチャリティーイベントに毎年参加しているジョンさんは、タンスの中に眠るコスチュームがたくさんあった。これを着て配達すれば人々を笑顔にできるかもしれないと考えたジョンさんは上司に直談判。すると、郵便局のIDと靴を着用することを条件に許可を取り付けた。
1日目はチアガール、2日目はイギリスの童謡「リトル・ボー・ピープ」、3日目は古代ローマ戦士「グラディエーター」のコスプレで配達に向かった。ジョンさんの思いがけない行動は、人々の気持ちを明るくし、多くの人が窓のそばでジョンさんを待ち構え笑顔を見せてくれるようになった。
感染リスクを負いながら人々を楽しませる
「多くの人が喜んでくれていて、私はとても元気が出ました」と『BoredPanda』の取材に語るジョンさん。しかし、感染リスクのある郵便配達に不安がないわけではない。「仕事に行かなければならないことに対する不安は、いつも心の奥に残っています。しかし、とても心が和やかになりました」と話す。「今の唯一の心配はコスプレ衣装がなくなることです」とも。
『METRO』によると、地域住民は、「ロックダウンの中、家族や友人に会えないのは精神的にとても辛いことです。でも、ジョンさんはみんなに元気と前向きな気持ちを与えてくれました。彼のことを心から誇りに思います」と、ジョンさんへの感謝を述べている。きっと地域住民全体が同じように感じていることだろう。
ロックダウン中の生活は、想像を絶するほどストレスが貯まり、気が滅入るものである。ジョンさんの行動は希望のシンボルとなることだろう。