文:井澤佐知子
イタリアで猛威を振るう新型コロナウィルス。死者数は世界最多の7000人に迫っている(25日現在)。医療現場では、医師や看護婦の不足に加え、人工呼吸器などの機材の欠乏も大きな問題となっている。
その危機を救った医療とは関係のない3Dプリンタ会社の行動が、話題となっている。
現場を救ったジャーナリストの機転
3月13日、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が起きているイタリアのブレシアの病院では、集中治療で使用する人工呼吸器のバルブが不足し始めていた。急激な需要の上昇に、バルブ業者は納入が追いついていなかったのだ。このままでは重症患者たちはみな命を失う危険にあった。
それを知ったジャーナリストのヌンツィア・ヴァッリーニ氏は、3Dプリンタ関連事業を手掛ける「Isinnova」の創業者クリスチャン・フラカッシ氏に連絡した。フラカッシ氏はエンジニアのアレッサンドロ・ロマイオーリ氏とともにこの病院に赴くと、わずか3時間でバルブの試作品を作り上げた。ロマイオーリ氏は「この試作品をテストしたところ、成功したので、私たちは再び会社に戻り、新しいバルブを作り始めました」と『BBC』に語っている。
これらのバルブは非常に小さな穴とチューブが備わっており、さらに汚染に配慮しなければならないため、製造は容易ではないという。しかし、さらに別の病院からさらに多くのバルブの発注があり、「私たちは2日間寝ていません」とロマイオーリ氏。
ちなみに、このバルブは1つあたり1ユーロ(約120円)ほどのコストで作られている。これらのバルブは3月14日時点で10人の患者に使用され、患者の命を救ってきた。
ただし、本来バルブには特許があるので、複製品の製造は特許侵害の可能性あるという。しかし、『THE VERGE』 が伝えるところによれば、バルブメーカーは2人を訴える意思はないと明かした。
あのフェラーリも人工呼吸器を製造
イタリアでは新型コロナウィルス惨禍によって混乱する医療現場を助けようと各界が必死になっている。『コッリエーレ・デッラ・セーラ』が伝えるところによれば、フェラーリはボローニャに本拠を置く医療器具メーカーSiare Engineering Internationalと協力し、人工呼吸器の製造を開始すると発表した。
危機的状況の中で、さまざまなアイデアが生まれているといってよいだろう。