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文:赤井大祐
世界各国で感染を広げている新型コロナウイルス。感染者、そして死者の増加とともに医療機関のリソースはますます圧迫されるばかりだ。
そんな中、マイクロソフト創設者であるビル・ゲイツ氏と妻のメリンダ氏によって創設された、世界最大の慈善基金団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」が解決への一手を打とうとしている。
2時間以内に届く家庭用検査キット
「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」が資金提供するプロジェクトは、アメリカ国内で新型コロナウイルス感染が拡大しているワシントン州シアトルにて、ウイルス感染を確認する家庭用検査キットを数週間以内に提供する準備を進めていると、今月8日に地元紙の『The Seattle Times』が報じた。
この検査キットは、オンラインのアンケートで自身の症状について回答し、感染の可能性が認められた場合、2時間以内に自宅に届く。キット付属の綿棒で鼻の穴の内側を拭き取り、指定の専門機関に送ることで、およそ1日〜2日で結果が確認できる。また、検査結果が陽性だった場合は、地元の保険当局へ情報が共有されるようになっている。自宅から出ずに検査ができるため、不必要に病院を訪れる人数を減らし、医療機関の負担を解消できるとのことだ。
行動履歴から次の感染者を推測
さらに冒頭のアンケートで、自身の行動や、人との接触についての設問を設けており、この回答をもとに、次に検査を受けるべき人や隔離が必要な可能性がある人を効率的に見つけ出すことができる。
財団のコロナウイルス対策リーダーを務めるスコット・ダウエル氏は、「世界中の地域で感染症対策に取り組んできた私たちの観点から言うと、陽性患者を特定、隔離して治療を行うことが最も重要なことの一つです」と述べた。今回のキットは病院の負担を減らしつつも、効率的に感染者を特定できる、実に理にかなったキットというわけだ。
最終的には、このキットを使って1日あたり数千件の検査を行えるよう準備を進めており、「まだまだ課題は有りますが、感染流行の流れを変えることができるはずです」とダウエル氏は語った。
世界中に1億ドル以上の拠出
同財団のプレスリリースによると、今回用いられた手法は、「シアトル・インフルエンザ・スタディ」と呼ばれ、シアトルのブロントマン・バティ研究所がUWメディシン、フレッド・ハッチンソンがん研究センターと共同で進めた研究をベースにしている。2018年に開始されたこの研究は、アメリカで毎年大流行とともに多くの死者を出すインフルエンザが、どのルートでどのように広がっていくのかを、迅速に把握するためのもので、ビル・ゲイツ氏が「Gates Venture」という個人所有の会社を通して2000万ドル以上の資金援助を行っている。
現時点で同財団は、WHOや米国疾病管理予防センターに対して、合計1億ドル(100億円)以上の資金援助を行っている。同財団のCEOであるマーク・スーズマン氏は、「世界中の新型コロナウイルスの影響を緩和するための措置を講じており、私たちはこれらの取り組みをサポートする準備ができています」とコメントしている。
まさに「ノブレス・オブリージュ」を地で行く、ビル・ゲイツ氏と財団の世界への貢献ぶりには目をみはるばかり。一刻も早く収束に向かうことを祈ってやまない。