2月28日15時過ぎに、FINDERS編集部のオフィス近くのドラッグストアで撮影。13時過ぎにはまだ在庫があったが、レジで長い列ができていた。
文:神保勇揮
ネットの噂はすべてデマ。在庫も生産も十分に存在する
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクや手指消毒用アルコールなどの消耗品がドラッグストアやスーパーから消えた。経済産業省は2月27日に「マスクや消毒液の状況 ~不足を解消するために官民連携して対応中です~」というページを立ち上げ、リアルタイムでマスクの増産流通情報を発信するようになったが、今も開店前から店頭には行列ができ、簡単に入手はできない。
またこれらの消耗品がメルカリやヤフオクなどで多数高額転売されており、運営会社も出品の削除体制を強化、今後は一定期間の猶予を設けつつ出品自体を制限する方向に対応を進めてはいるものの、今なお転売をゼロにはできていない状態だ。
こうした中、福岡や熊本などで「マスクの材料に紙が回されるので不足する」「中国から原材料を輸入できなくなる」というデマが流れ、2月26日ごろからトイレットペーパーやティッシュなどの在庫が店頭に消滅。まず地方紙である西日本新聞が27日に「“マスク材料”の噂で…トイレットペーパー品切れ相次ぐ 「全くのデマ」」という記事を掲載。記事は製紙会社や業界団体などに取材し「不足するというのはデマで問題なく流通できる」という情報を伝える内容だったが、テレビニュースで取り上げられたり、SNSでドラッグストアの在庫が空になった画像がバズってしまったりということが重なり、27日夜から28日昼過ぎにかけて全国各地でパニック買いが殺到し、次々と在庫が完売してしまった。
このままマスクのように、より必需品として重要度が高いトイレットペーパーやティッシュも定価で手に入らなくなってしまうのか。筆者も28日に大手メーカーや業界団体に取材をしてみた。
まず家庭紙(ティシュペーパー、トイレット. ペーパー、タオル用紙、ちり紙)を生産する大手メーカーなどで構成される業界団体、日本家庭紙工業会の事務局担当者によると「既に多方面で言われているように、ネットで流れている噂はすべてデマです。国内で流通するトイレットペーパーの98%は国内で生産されており、原材料も国産です」「もともと順調に生産しており、現時点でかなり在庫もあります。極端な買いだめをしなければ売り切れることはありません」と強調する。また筆者の取材後には「トイレットペーパー、ティシューペーパーの供給力、在庫は十分にあります」というプレスリリースを掲載。また安倍首相も29日に行われた会見で同様のアナウンスを行った。
日本家庭紙工業会のプレスリリースより
また大手メーカーである日本製紙クレシアの広報に問い合わせてみたところ、同様に「なくなっているのは店頭だけで、工場の在庫量は問題なく存在しますし、順調に生産もしています。すぐに解消すると思います」と回答。同じく大手メーカーの大王製紙の広報も「通常通り生産、出荷しています」と答えている。
なおこの取材後、日本製紙クレシアHPのトップページに「当社は現在問題なく生産と出荷を継続しており、今後も供給面で問題はございません」というアナウンスを掲載した。
日本製紙クレシアのHPより
3月1日8時現在、Twitterで「トイレットペーパー」などのワードで検索してみると、まだ現在も小売店舗では混乱が続いてしまっているようだ。去年の台風19号でもスーパーの食料品が空になったことも記憶に新しいし、いくら官房長官がマスクの生産状況をアピールしようと「もう1カ月全然手に入らないじゃないか!」という憤りを前にすれば「手に入らなくなる前に多めに備蓄しておこう」と思いたくなるのもわかる。
しかし、生産が続いている以上マスクのように入荷自体がほとんど無いということは今後もないだろう。メーカーや流通・小売の現場で働いている人たちも奮起しているはずだ。落ち着いて行動し、必要以上の数を購入しないようにしたい。パニックを起こすことが全員の損につながるということはもう皆わかっているはずだ。もちろん転売などもってのほかだが、今からやろうとしても損をするだけだろう。