文:山田山太
餅は餅屋という言葉があるように、専門家の言葉の裏には数多くの裏付けが存在しており、基本的には信頼するべきものだ。それがたとえ餅屋であっても、医療の現場であっても、同じことが言えるだろう。
そんな中、医師の言葉を無視してしまったがゆえ、とある家族を襲った悲しい出来事が今、議論を呼んでいる。
医師が処方した薬を与えず、息子を失う
2月初旬、米国コロラド州に住む母親のジェネヴァ・モントーヤさんは、4歳のナジー君を病院に連れて行った。医師はナジー君をインフルエンザ陽性と診断。家族全員に抗インフルエンザ薬のタミフルを処方した。
しかし、ジェネヴァさんはナジー君にタミフルを与えなかった。その結果、ナジー君は自宅で倒れ、病院に搬送されたものの数日後、命を落とした。
「ワクチン反対派」Facebookグループからの助言
なぜジェネヴァさんは医師の指示に従わなかったのだろうか? 実は、ジェネヴァさんはナジー君たちを病院に連れていく前に、とある場所に相談を投げかけていた。それは「Stop Mandatory Vaccination」というワクチン反対派のFacebookグループだ。「命を救うのはワクチンではない。健康な免疫系だ」というスローガンを掲げ、この母親を含め約17万8000人のメンバーが参加している。
ジェネヴァさんがこのFacebookグループに助けを求めると、メンバーからは「ビタミンDとC、ニワトコの実、亜鉛を摂取し、たくさんの果物と野菜を食べたほうがいい」「スライスしたじゃがいもときゅうりを額に乗せみては?」「下痢をする程ビタミンCを与えましょう」などの自然療法を推奨し、ジェネヴァさんも「分かった。試してみる」と返答をしていた。
しかし、それらの対処法は効果をなさなかったのだろう。医師の処方を無視し、自然療法を過信した結果、我が子を失う悲劇となった。
ワクチンを受けるのに遅すぎるということは無い
コロラド州公衆衛生環境省は、『NBC NEWS』の取材に、これまでにインフルエンザで死亡した未就学児のほとんどが予防接種を受けていないという記録があることを明かした。そして、「予防接種を受けるのに遅すぎることはありません。6カ月以上のワクチンを受けていないすべての人に、予防接種を行うことをお勧めします」と伝えた。
とは言え、米国では近年、医師が推奨していたオピオイド系の鎮痛剤に深刻な中毒症状が見つかり、社会問題になるなど、医療機関への信頼性が低下しているのも大きな事実だ。そういった不信感が募った結果、今回の様な悲劇を招いてしまったのかもしれない。
日々奮闘する医療の現場と我々市民の間に、より良い信頼関係を築いていくことが今後ますます重要になっていくだろう。