カウンターの向こうで中華鍋にジュワッーっと油が広がり、火が大きく舞いながら鍋が振られる音をBGMに食事を楽しむ。接待といえども、肩ひじ張らずカジュアルな雰囲気の店が好きだという人もいるだろう。
チェリー先生
食べ歩き部・部長
東京生まれ東京育ち。10代では外食好きな家族と、20代では目上の方々にあまたの東京レストランガイドをしていただき、30代以降は自分で開拓するのが楽しくなり、あらゆるスタイルの「外食」を楽しんできたグルメ女。プロならではのこだわりが見える瞬間、女王様気分を味わえる接客、味というよりも人に惹かれる瞬間などに魅力を見出し、レストランの楽しみ方を広げている。
「六本木ヒルズで本格的なイタリアン」と聞いただけで高級そうなイメージを抱くが、ディナーコースが4800円から楽しめる、お値打ち店があるのをご存知だろうか。値段はカジュアルだが、ミシュランガイドでは6年連続「ビブグルマン」に選ばれている実力店「ラ ブリアンツァ」だ。
六本木ヒルズらしいモダンなインテリアにふさわしい高級食材も登場するが、イタリアの星付きリストランテで修業した奥野オーナーシェフはイタリア各地の郷土料理にも精通。料理によってさまざまなイタリアの表情を感じることができるのが、同店の魅力だ。
今回は、全8品からなる接待にもふさわしいお勧めコース「MENU REGIONALE 」7500円を紹介しよう。
こちらは甘口ワインと魚醤で味付けされたマグロの一皿。イタリア名陶の白い皿に、マグロの赤とチーズでできたレース状のチュイールが映え、見た目にも美しい。
部位で言うと中トロだろうか。マグロのほのかな甘味を堪能していると、魚醤の香りがふんわりと追いかけてくる。
この店の醍醐味は、六本木らしい都会的で洗練された料理と、昔ながらのパワフルな郷土料理の両方が楽しめるところにある。
お次はコテコテのイタリア郷土料理が登場した。ガラスの器に入った豚の頭の煮込み・カッスーラは、店名にもなっているブリアンツァ地方の郷土料理。豚のゼラチン質が煮込まれた濃厚な味わいで、ワインとも相性抜群だ。
目の前で豪快に黒トリュフを削って完成するのは、スペシャリテでもあるトリュフのグラタン。ゆっくりとスプーンを入れると鮮やかな卵の黄身が顔を出す。小さいポーションながらも、濃厚なトリュフの香りが鼻腔をくすぐり、まろやかな口当たりに思わず目を閉じる。“六本木ヒルズでイタリアン”にふさわしい、上がる一品だ。
肉やチーズの仕入れも素晴らしく、都内でもなかなかお目にかかれないランクの物を扱っている。メインは、精肉店「サカエヤ」の黒毛和牛を炭火焼で。イタリアンらしく強気の火入れでカリッと仕上がった表面と、ジューシーな内側のコントラストがたまらない。
ピッツァ生地を揚げた熱々のゼッポリーニのアンティパストから始まるコースは、ミンククジラや菊芋などさまざまな食材を織り交ぜ、まるでジェットコースターのように、イタリア各地の郷土料理と奥野シェフならではの洗練された料理を行き来し、次の展開に期待を寄せているうちにあっという間にデザートを迎える。
六本木ヒルズらしい華やかさと同時に、地方料理の豊かさや力強さも味わえる貴重なイタリアンは、幅広い層に喜んでもらえるに違いない。
undefined
undefined
la Brianza (ラ ブリアンツァ)