CULTURE | 2020/02/12

「謎解き紙ゲー」として話題となった『紙謎』。『FGO』のディライトワークスはなぜインディーゲームを支援するのか

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取材・文:6PAC

岡村光

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1995年、CGデザイナーとしてゲーム業界でのキャリアをスタート。2004年に株式会社アートゥーン(合併し現在は株式会社マーベラス)に入社。アーティスト、アートリードとして「ブルードラゴン」「ラストストーリー」を担当後、プロデューサーとして「ソウル・サクリファイス シリーズ」に携わる。コンシューマー・スマートフォンの複数タイトルでPM、プロデューサーを担当しながら事業部マネージャーを兼務。2018年にディライトワークス株式会社に入社、現在は第3制作部のプロデューサーとしてタイトルを担当。

『Fate/Grand Order』の開発会社が仕掛ける「ディライトワークス インディーズ」

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ディライトワークス株式会社と聞いてなにかしらピンとくる人は、まず間違いなくゲームが好きな人だろう。『Fate/Grand Order』という大ヒットゲームアプリの開発・運営元と聞けばわかりやすいかもしれない。視聴率調査でお馴染みのニールセンが買収したゲーム市場特化型の調査会社、SuperData Researchが公表した2019年の基本無料ゲームの収益ランキングでも、『Fate/Grand Order』は12億ドル(約1320億円)を稼ぎ、世界8位にランクインしている。

2019年3月、同社はインディーズゲームメーカーの開発・販売を包括的にサポートする「ディライトワークス インディーズ」というレーベルを発足させた。以降、同レーベルのタイトル第1弾として『タイニーメタル 虚構の帝国』、第2弾として『紙謎 未来からの想いで(以下、紙謎)』をそれぞれNintendo Switch向けにリリースしている。

中でもギフトテンインダストリ株式会社が開発した『紙謎』は、専用のワークシートを使い、書いたり、折ったり、切ったりしてゲーム画面上に表示される謎を解き明かしていく、デジタルとアナログが融合したハイブリッドな“謎解き紙ゲー”だ。

通常、スマートフォン向けのゲームアプリで成功を収めると、似たようなビジネスモデルのゲームアプリを立て続けにリリースし続ける企業が多いものだ。プラットフォームをスマートフォンからNintendo Switchに、ビジネスモデルを基本無料型から有料買い切りに変更し、デジタル+アナログというゲーム性の『紙謎』を仕掛けた狙いを、同社プロデューサーの岡村光氏と広報担当者に訊いた。

プロデューサーの岡村光氏
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これまで、カードゲームやボードゲームなどで「アナログゲームをデジタルでも遊べるようにする」という試みは多数あったが、アナログとデジタルを別け隔てなく併用するゲームは新しい試みと言えるだろう。

『紙謎』開発のきっかけなどについて訊ねると、「私からギフトテンインダストリさんに提案したことが、本作の開発のきっかけです。ギフトテンインダストリさんの“紙ゲー”第一弾である『マドリカ不動産』が大変おもしろかったため、インディーズメーカーの開発・マーケティングを支援する弊社のレーベル“ディライトワークス インディーズ”で、より“紙”にフォーカスした謎解きゲームが作れないかと思い、お声がけいたしました。『マドリカ不動産』で感じた“デジタル×アナログ”という新しいゲーム体験を多くの方に体験いただきたい、という想いから、本作を制作しています」と岡村氏は話す。

アフターサービスやプロモーションを支援し、より広く届ける

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「ディライトワークス インディーズ」というレーベルから『紙謎』をリリースした背景について岡村氏は、「弊社がパブリッシャーとなることで、お客さまに紙を使ったゲームの面白さを伝えることに注力できると考えました。その結果の1つが、謎解きに使用する紙“謎用紙”の無料配布です。『マドリカ不動産』をプレイした際、“紙”が一番の魅力である一方で、販売がダウンロード版のみだったので同梱することができず、その入手がお客さまに遊んでいただくまでのハードルになっているのではないかと感じました。そのため本作もダウンロード専売ですが、ウェブからお申し込みいただいた方に謎用紙を郵送にて無料配布するという方法を採っています。また、アナログゲーム関連のイベント会場などでも謎用紙を配布したり、裏面が最初のステージで使用する謎用紙になったチラシを作成したりと、まずはお客様に謎用紙を手にとってもらう機会を増やすようにしています。そのほかにも、ゲームをプレイするシチュエーションを具体的にイメージできるプロモーション映像の作成や、ウェブサイトで体験版を公開するなどをしています」と説明してくれた。

ステージ1で実際に使用する謎用紙
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『紙謎』のプロモーション動画を観ると、“家族全員で楽しむゲーム”というコンセプトが見て取れる。同社が想定したターゲットユーザーや利用シーンについて岡村氏に訊いてみると、「本作はさまざまな楽しみ方があるかと考えています。1つは、プロモーション映像で訴求しているように、ご家族や友人など、複数人で集まり、相談・協力しながら謎解きを楽しんでいただけると考えています。体験型の謎解きゲームや脱出ゲームに似た感覚で遊んでいただけるのではないでしょうか。もう1つはお一人で、ストイックに謎に向かい合っていくというスタイルです」とのこと。

『紙謎』のここを楽しんで欲しいというポイントについて訊くと、「本作では、20あるステージすべてが、謎用紙を使った謎解きです。実際に謎用紙を切る、書き込む、折ることで謎を解いていく体験をぜひ楽しんでいただければと思います。謎解き団体さんにご協力いただき生み出された謎は、どれも歯ごたえのあるものです。時には行き詰まってしまうこともあるかもしれませんが、その時は別のステージにチャレンジするなどして、一度考えをリセットしてから再チャレンジいただくと、謎を解くための新たな発見があるかもしれません。それでも謎に行き詰まった際には、本作のウェブサイトにてヒントも公開しております。ゲーム画面に表示されるQRコードを読み込むことで、そのステージのヒントページを表示することができます。また、本作では、謎を解いていくことで主人公「トキオ」とヒロイン「ミライ」”の物語も進行します。謎解きを進めることで明かされていく、二人に秘められた物語についてもお楽しみいただければと思います」と岡村氏は語ってくれた。

ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。

『紙謎』のゲーム画面。画面で提示された謎を「謎用紙」を使って解き明かし、正解を入力しながら進めていく
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『紙謎』のような新ジャンルのゲーム開発・販売は今後も継続していくつもりなのかという質問をすると、岡村氏は「“ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。”という弊社の理念のもと、“このゲームをお客さまにお届けしたい!”というものができれば、今はまだ誰も想像していないような新しい試みのゲームをお届けできる日が来るかもしれません。これからも、お客さまに“面白い”と思っていただける、価値のあるゲームを作るための挑戦を続けていきます。新ジャンルのゲームを生み出すことが目的ではなく、面白さを追求した結果として、新たなジャンルのゲームが生まれる可能性があるのだと考えています」と話してくれた。

「ディライトワークス インディーズ」というレーベルを新規に立ち上げたのは、『Fate/Grand Order』からの収益があるうちに、インディーズ支援など他の事業領域を開拓しておこうというリスクヘッジ的な考えからなのか訊ねてみた。すると広報担当者から、「弊社は“ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。”という理念のもと、ゲームを作るためのさまざまな取り組みを行っています。ディライトワークス インディーズの活動やボードゲームの開発もその考えのもと、プラットフォームや形式にとらわれず“面白いゲーム”をお客さまに届けるために行っています。『Fate/Grand Order』に加えて、今後もお客様に“面白い”と思っていただけるゲームを開発してまいります」という答えが返ってきた。

最後にファンの方々にメッセージをお願いした。

「みんなで集まるきっかけになるゲーム、みんなで集まってやりたくなるゲーム、そんなゲームに『紙謎 未来からの想いで』がなってくれればと。Switch担当、ハサミ担当、謎解き担当と役割分担して遊ぶのも楽しいですよ。遊んで頂ける皆さまの”想いで”の1本になるようなゲームをお届けでればと思っております」