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文:coolpolaris
離婚後、親権者となった親は子どもを一人で育てていかなければならない。相手から養育費を支払ってもらい、親としての務めを果たしてもらわなければならない。しかし、養育費が支払われないケースも多いという。そんな中、ある投稿がSNSで大きな反響を得た。
「養育費を支払わず逃げた場合6カ月以下の懲役、50万円以下の罰金となります」
これは、今年4月1日に施行される民事執行法の改正のことを示している。ただし、実際に厳罰化されるのは「財産開示手続き」に対する不出頭や虚偽陳述なので、「養育費を支払わず逃げた場合」のすべてが罰則対象となるわけではない。
しかしこの法改正により、養育費の支払いから逃げ切ることが難しくなるようだ。具体的にみてみよう。
養育費を受け取っているのは母子世帯のわずか4分の1
離婚などにより子どもの養育費の取り決めをしたとしても、相手の経済状況の変化や再婚などの事情で、養育費の支払いが滞る、ないしは支払われないケースが少なくない。
厚生労働省の『平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告』によると、母子世帯では養育費の「取り決めをしていない」世帯が54.2%と、半数を超える。その理由として、「相手と関わりたくない」(31.9%)、「相手に支払う意志がないと思った」(20.8%)などが挙がった。
また、養育費を「現在も受けている」母子世帯は24.3%に留まり、4世帯に1世帯しか養育費が支払われていない現状がある。さらに、取り決めをしているにも関わらず、「養育費を受けたことがない」と答えた母子世帯は、17.2%にも上り、母子世帯の切実な実態が浮き彫りとなった。
現行法でも、調停や公正証書による取り決めで、相手の財産を強制回収する手続きを利用できる。ただし、その手続きの煩雑さや関わりたくないという心理的理由から、あきらめて泣き寝入りをしている母子家庭が多いのが実情だ。
改正で養育費の強制執行がやりやすくなる
こうした現状をふまえ、民事執行法が16年ぶりに改正される。主な改正点は、こちら。
・養育費の支払いを定めた公正証書で、財産開示手続きの申し立てが可能となる。
・財産開示手続の開示を拒否または虚偽した場合、現行法では30万円以下の過料(前科にはならない行政罰)だが、改正後は「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑罰(従わない場合は前科がつく)となる。
・金融機関の本店に対し債務者の口座を照会し、預金のある口座に差し押さえをかけ、残高の回収が期待できる。
・市町村や年金事務所などに対し、債務者の勤務先などの情報の照会が掛けられるようになる。これにより、給与の差し押さえが容易にできるようになる。
今までは、自ら金融機関の支店名を特定するなどが必要だったが、法改正により強制的に回収する手続きの実効性が、大きく高まるというわけだ。
子どもが社会的自立をするまでの養育費の支払いは、親としての義務だ。今回の法改正により、泣き寝入りをする親が少しでも減り、養育費の支払や親としての責任から逃れようとする意識の撲滅につながることを望みたい。