文:coolpolaris
世界中の人材や資本が流動化する中で、国が保有するイメージや評判が、その国の経済に大きな影響をもたらす。つまり重要なのは「ブランド」だ。
イギリスのブランド価値評価コンサルタント会社Brand financeの調査を元に、Visual Capitalistが制作した、「最もブランド価値ある国」ランキングと、「最もブランド力のある国」ランキングを紹介する。
「最もブランド価値のある国」ランキングは、各国のGDPデータに、財やサービス、観光、人材、投資などの分析を加えて算出し格付けした。GDPを指標の一部としているため、大国が上位にランクインしやすい傾向がある。
一方、「最もブランド力のある国」ランキングは、社会的・経済的要因を総合分析して、100点を満点で点数化したBSIスコアを元に格付けしたものだ。こちらはGDPのアドバンテージを排除するので、その国の現状をより正確に把握できるとされる。
中国、ブランド価値40%成長
「最もブランド価値のある国」ランキングのトップ10はこちら。ブランド価値と前年比に注目してほしい。
1位 アメリカ $27.8T(前年比+7.2%)
2位 中国 $19.5T(前年比+40.5%)
3位 ドイツ $4.9T(前年比-5.7%)
4位 日本 $4.9T(前年比+26.0%)
5位 イギリス $3.9T(前年比+2.7%)
6位 フランス $3.1T(前年比-4.0%)
7位 インド $2.6T(前年比+18.7%)
8位 カナダ $2.2T(前年比-1.8%)
9位 韓国 $2.1T(前年比+6.7%)
10位 イタリア $2.1T(前年比-4.7%)
1位はアメリカであるものの、中国が目覚ましい成長を遂げており、差を急速に縮めつつある。中国のブランド価値は、昨年対比で40%増の19兆4000億ドルとなり、これは3位~7位までの5カ国の総計値を上回る。負けじと1位のアメリカも、成熟経済にも関わらず、$27.8Tというブランド価値を叩き出しており、昨年の7.2%増という奮闘ぶりだ。日本は4位にランクインし、昨年対比で26.0%増と健闘している。
東京五輪を控える日本はブランド力8位
次に紹介する「最もブランド力のある国」ランキングは、このような順位になった。国名とともにBSIスコアとBSIランクを記載した。
1位 シンガポール90.5(前年比-1.9) AAA+
2位 スイス 89.9(前年比-0.3) AAA+
3位 オランダ 89.6(前年比+1.9) AAA+
4位 ドイツ 88.2(前年比+3.5) AAA
5位 ルクセンブルク 86.9 (前年比+2.1)AAA
6位 アラブ首長国連邦 86.6(前年比-1.9) AAA
7位 フィンランド 86.4(前年比-1.0) AAA
8位 日本 85.8(前年比+1.9) AAA
9位 アメリカ 85.7(前年比+0.1) AAA
10位 デンマーク85.6(前年比+2.6) AAA
1位はシンガポール。2015年にドイツを抑えてトップとなって以来、その座を守り続けている。めざましい発展を遂げたこの都市国家は、東南アジアのビジネスハブとして機能しており、世界でもトップクラスの教育、医療、輸送のレベルを誇る。また、犯罪率の低さも評価されている。世界で通用する強固で安定性の高い国に成長した理由としては、確固たる政治的な安定と、未来を見据えた戦略的な経済施策が挙げられる。
アメリカはトップ10には入っているものの、2014年に4位になって以降、その順位を落としている。ただしBSIランクは、AA+からAAAへと格上げとなった。トップ10圏外ではあるが、トルコが、2018年にスコアを大きく落としたものの、2019年で50%近く伸張した。日本は8位にランクインし、前年比1.9ポイント増と堅実な成長を遂げている。
国の成長を左右する「ブランド」だが、日本はブランド価値としては4位、ブランド力では8位となった。東京オリンピックが開催される2020年は、いずれのランキングにおいても、さらなる躍進を期待したい。