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阿曽山大噴火
芸人/裁判ウォッチャー
月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。
サイパン在住男性、リコーダー13本、29本盗む
2020年になってから初めての傍聴記ではありますが、特別なあいさつもなく早速本題へ。
罪名 建造物侵入、窃盗
G被告人 無職の男性(69)
起訴されたのは、去年9月19日に東京と北区の小学校に侵入してリコーダー13本(1万2500円相当)を盗んだという内容。小学生の頃に好きな女の子のリコーダーをこっそり舐めて……とか、そんな設定のコントとかはあるけど、69歳の男が小学校に忍び込んでリコーダー泥棒ですよ。しかも13本。
検察官の冒頭陳述によると、G被告人は東京都内の高校を卒業すると、精肉店など職を転々としていたという。犯行当時は日本国内ではなくサイパンで暮らしていたらしい。G被告人は犯行2日前の9月17日にサイパンから日本に入国。東京・上野にあるホテルに宿泊したという。
そして、犯行当日。G被告人は門から小学校敷地内に入り、さらに教室の中へ入ってリコーダー13本を、持っていったバッグにしまったと。学校を出ようとしたところ、教師に声を掛けられ、警察に通報されたというのが事件の流れです。
取り調べでG被告人は「口をつけたいと思い、笛を盗んだ」と供述しているらしい。非常に珍しい変わった事件。一体、どんな動機なのやら……と思ったら、追起訴があるということで初公判は数分で閉廷でした。
そして、21日後の12月23日に第2回公判が行われました。追起訴の内容は、去年9月18日午後6時9分~午後6時50分の間に、東京都世田谷区の小学校に侵入して、リコーダー29本(2万9000円相当)を盗んだというもの。余罪もリコーダー泥棒。しかも、29本!
初公判の情報と重ね合わせると、9月17日にサイパンからやってきて、9月18日に世田谷区内でリコーダー29本盗んで、9月19日に北区でリコーダー13本盗んで逮捕ってことになります。もはや、リコーダーを盗むための入国ですよ。
サイパンの小学校でリコーダー泥棒出来ない理由
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果たして、どんな動機や理由があったのか。本人の口から語られました。
弁護人「40歳までは父の事業所で働いてて、40歳までは日本にいたと。その後は?」
G被告人「ずっとサイパンです」
現在69歳なので、30年くらいサイパン島で暮らしているということになります。
弁護人「国籍と仕事は?」
G被告人「国籍は日本で、62歳の定年まで病院設備の仕事をしていたので、国家公務員」
弁護人「奥さん、子供も向こうにいると?」
G被告人「長男と次男。2人います」
弁護人「で、次男というのが……」
G被告人「妻が浮気して作った子供です」
いろいろとあった夫婦のようですね。それがきっかけかは定かじゃないけど、現在は別居中だと。
弁護人「何故、日本に来たんですか?」
G被告人「おばの墓参りです。毎年この時期に」
リコーダーを盗むためじゃなく、お墓参りという目的があっての入国だったんですね。
弁護人「なんでリコーダー盗んだの?」
G被告人「サイパンでのストレス解消です」
弁護人「笛を盗ると、解消されるの?」
G被告人「盗んだ笛を舐めたらですね」
弁護人「なんでですかね?」
G被告人「きっかけは小学6年生の時です。ハッキリ覚えてますね……」
と、50年以上も前のエピソードを語りだす被告人。
G被告人「転校生の可愛い女の子がいまして、席替えで隣の席になりました。で、音楽の授業の時に縦笛がこっちに転がってきて、落ちないようにつかんだんです。好きな子の笛を掴んだ時の気持ちは強烈に今も覚えていますねぇ……」
弁護人「あなたはリコーダー持ってた?」
G被告人「いや、貧しくて買えませんでした」
リコーダーをつかんだ時に、感謝の言葉でも言われて舞い上がってたのかもしれませんね。しかも、被告人にとっては金持ちの象徴だったのではないかなと。いろんな想いがつまってるのが被告人にとってのリコーダー。いまだに憶えているってことは相当なものなのでしょう。ただ、舐める件が出てこないのが気になったけど。
弁護人「サイパンで盗んだことは?」
G被告人「ありません」
弁護人「4年前は栃木県でも盗んだ前科がありますよね。なんで、日本だとやるの?」
G被告人「女房と別居して一人暮らしになると、草刈り……100坪もあって、他にやることがいっぱいあって、そんなこと考えもしないんです。日本に来るとやることも、ストレスもなくなって……」
弁護人「今後はサイパンに戻る?」
G被告人「はい。もう2度と日本には来ません。国籍も捨てるつもりです」
弁護人「そうですか。サイパンでもやらない?」
G被告人「絶対にやりません!」
弁護人「絶対なんて言いきれます?」
G被告人「はい。サイパンの小学校はリコーダー使ってませんので」
それなら絶対ですよね。「やりません」というより、「やれません」の方が正しい気もするけど。いずれにせよ、もうやらないってことでしょう。
裁判官「リコーダー、舐めた?」
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次は、検察官からの質問。
検察官「おばさんのお墓ってどこ?」
G被告人「栃木県です」
検察官「17日に来日。18日と19日は盗み。帰りのチケット、20日なんだけど、お墓参りは行けた?」
G被告人「はい。20日の飛行機は21時だったので」
お墓参り目的じゃなくて、リコーダー泥棒が目的だったんじゃないかと疑っている感じです。
検察官「4年前の裁判で、次やったら、刑務所行きになるって言われたでしょ。歯止めにならなかった?」
G被告人「う~ん……酒の勢いですね」
検察官「犯行の前にお酒飲んでたみたいだけど、今後お酒はどうします?」
G被告人「やめる気はありません」
なんと、きっかけの一つでもありそうな飲酒を継続宣言です。
検察官「飲んだらまた盗みやるんじゃない?」
G被告人「もう日本に来ないので」
仮に酔って盗みたくなっても、サイパンの小学校にはリコーダーはない訳ですからね。酒は飲むけど、日本には来ないというのが再犯防止の約束となりそうです。
最後は裁判官からの質問。
裁判官「かなりの本数盗ってますよね。13本と29本か……。なんで?」
G被告人「数があればストレス消えるだろうと」
裁判官「数多く舐めたい?」
G被告人「はい」
裁判官「はぁ~、全部舐めた?」
G被告人「いや、今回は舐めてません」
どうやら舐める前に逮捕されたってことなんでしょう。たくさん盗んで集めてから舐めるタイプなのかもしれませんね。他にどんなタイプがいるのかは知らないけども。
裁判官「4年前は舐めた?」
G被告人「舐めました」
裁判官「ストレスはどうでした?」
G被告人「解消されました」
裁判官「女の子だけ? 男の子は舐めたくない?」
G被告人「ないですねー」
裁判官「笛を舐める以外、幼い女の子に興味はあるんですか?」
心配なのはそこでしょう。仮に日本にもう来ないとして、サイパンの小学校にリコーダー以外の物もあるわけで。この質問に対して、
被告人「それはありません」
リコーダーのみ。だからサイパンにいれば、犯罪に走ることはないはず。
この後、検察官は懲役2年6月を求刑。弁護人は寛大な判決をお願いしていました。
判決は今月末なんだけど、どうなるのか。あの時、転校生のリコーダーが机から落ちていれば。リコーダーと同時に何かを掴み取ってしまったんだろうなぁ。