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文:岩井聡史
現在、スコットランドで注目を浴びているのが「持ち帰る給食」制度だ。余った給食を貧しい子どもたちが持ち帰られるシンプルな取り組みだ。
しかしこの取り組みの反響は大きく、今ではスコットランドの複数の学校で取り入れられることになった。
余った給食をどの生徒でも持ち帰られる
「持ち帰る給食」制度はスコットランドのイースト・エアシャーにあるカムノックアカデミーで生まれた。この制度は非常にシンプルで、野菜付きステーキ、サンドイッチ、ヨーグルトなど、余った給食を包んでおいて、どの生徒でも自由に持ち帰られるようにするものだ。
包んでおいた給食は翌日にはすべてなくなるため、この制度がいかに必要とされているのかが伺える。カムノックアカデミーで始まったこの制度は、イースト・エアシャーにある他の12校で採用され、広まりつつあるのだ。
スコットランドのタブロイド紙『Daily Record』の取材によれば、この制度の考案者である同校教師のキャリー・スミス氏は「子どもたちは前日に学校で食べて以降、何も食べずに学校に来ていることに私たちは気付きました。空腹では勉強に身が入らないから、今回の制度を作りました」と語っている。
「食物廃棄」と「貧困」問題に貢献
スコットランドでは毎年55万トン以上の食べ物が廃棄されている一方、4人に1人の子どもが貧困状態にある。そのため、この「持ち帰る給食」制度は、スコットランドで問題視されている二つの問題の解決に貢献することが期待されている。
この制度では、誰が何食持ち帰ったということを記録していない。学校のスタッフが余った給食を包むだけなのである。そのため学校側はお金をかけることなく、この有意義な制度を運用することができるのだ。たった1カ月の間に、1500食持ち帰られたこともある。
「持ち帰る給食」制度が注目を集めたことで、スコットランドでは“無駄”を見直す動きが拡大している。クリスマスの衣装は従来、時期を過ぎると処分されていた。しかし、そこでもシーズンが終わるとともに学校に衣装を提供することで、貧しい家庭でもクリスマスをより楽しむことができるようになった。
「食物廃棄」と「貧困」は世界で共通している課題だ。そのような課題に対して、複雑な仕組みや莫大なコストなしで効果を生み出す今回の取り組みは、従来とは異なった知見を与えてくれる。