EVENT | 2020/01/16

「原料:コオロギ」ってそれ食べられるの!?昆虫ドレッシングブランド「TWO THIRDS」が爆誕

取材・文:6PAC
食糧問題の解決策として国連も昆虫食を推奨

近年、昆虫食が注目を浴びている。2013年には国際...

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取材・文:6PAC

食糧問題の解決策として国連も昆虫食を推奨

近年、昆虫食が注目を浴びている。2013年には国際連合食糧農業機関(The Food and Agriculture Organization of the United Nations、FAO)が、人口増加に伴う食糧問題解決策として、昆虫食を推奨している。肉食文化の浅い日本でも古来よりたんぱく源としてイナゴ、はちのこ、蚕のさなぎ、ざざむしが食されてきた。その日本で昆虫ドレッシングを発売した会社がある。

開発を手掛けたのは、数千匹の生き物と同棲するかたわら、昆虫食の魅力や可能性を伝える活動に奮闘する「地球少年」こと篠原祐太氏が率いるチーム「ANTCICADA(アントシカダ)」と、東京に本社を構えるコクハク株式会社。ANTCICADAが東京・日本橋馬喰町で同名の昆虫食レストランを開店するにあたってCAMPFIREで実施したクラウドファンディングにて先行販売を行っていた(なおクラウドファンディングでは目標額の倍以上となる690万円を集めている)。

原料はフタホシコオロギとヨーロッパイエコオロギ

© Kokuhaku Inc.

「TWO THIRDS」のラインナップは黒と白の2種類。「黒」はフタホシコオロギを使った和風ドレッシングで、「白」がヨーロッパイエコオロギを使用したフレンチドレッシングだ。フタホシコオロギは、徳島大学と同大学発のベンチャー企業、株式会社グリラスが養殖したもので、ヨーロッパイエコオロギの方は、福島県二本松市の太陽ホールディングス株式会社が養殖したものを使用している。

国産コオロギ以外の原材料は、黒の和風ドレッシングには油、醤油、酢、ごま、ネギ、砂糖、塩、胡椒が使用され、白のフレンチドレッシングには、油、白ワインビネガー、塩、蜂蜜、胡椒が使われているという。

コクハク株式会社代表取締役の木本考紀氏に、これらがどういった料理に合うものなのか訊ねると、黒の和風ドレッシングは、「豆腐、海藻サラダ、冷製パスタにオススメです」ということで、白のフレンチドレッシングは、「ゆで卵、ツナサラダ、鶏胸肉にオススメです」という。

木本氏は、「昆虫料理イベントなどで単発的に昆虫ドレッシングを作っている方はいますが、商品として世に出ているものは、チームANTCICADAや弊社が知る限りは無いです」と話す。

食べる前の心理的ハードルが低く、食べた後の満足度が高い商品が少ないのが課題

「地球少年」こと篠原祐太氏
© Kokuhaku Inc.

開発に至ったきっかけについて訊ねると、「チームANTCICADAの篠原祐太氏との出会いがきっかけです。彼の昆虫食への愛や今後のやりたいことを聞いた中で、弊社はマーケティングやメディアを中心に展開する会社でもあるので、双方の力(弊社がコンセプト設計やデザイン、マーケティングなどを担当、ANTCICADAが商品・レシピ開発を担当)を持ち合わせて世の中にプロダクトアウトしてみようと意気投合して開発することとなりました」と語ってくれた。

また開発秘話として、「昆虫を加工する加工業者やドレッシング製造許可が取れている製造所との交渉や、昆虫のドレッシングがまだ現状では目新しく、ゲテモノとしての扱いがされている中で、各所から許諾することが非常に難しかった」と明かしてくれた。

気になる価格は、100ミリリットル×2本セットで5000円となっている。1本当たり2500円となるが、価格設定の根拠や裏付けについて訊いてみると、「コオロギの原価が高く、また今回は小ロットでの製造となることからの価格の設定となります」とのこと。

CAMPFIREでのプロジェクト終了後の販売については、「クラウドファンディングおよびメディアや流通の方々への試食を経て、その評価や展開により今後を検討する予定です。販路についても現状ではまだ未定です」と話してくれた。また、「今後の展開が本格化すれば。コオロギ以外の昆虫も(商品化される)可能性はあります」とのこと。

昆虫ドレッシングに限らず、昆虫食そのものを普及させる上での課題について訊いてみた。すると、「食べる前の心理的ハードルが低く、食後の満足度が高い商品が少ない点だと思います。昆虫が全面に押し出されたゲテモノのような見た目では、エンタメ的消費以外では普及していかないですし、逆に個性を無くしすぎた商品では、食後の感動もなく、昆虫を食べる理由を見出しづらいと思います。そこのバランス感を大切にしていきたいと考えています。また昆虫を食べる社会的意義(その昆虫でなければいけない理由)を腑に落としていくことも大切だと思います」と話してくれた。TWO THIRDSを一般的なものにするため、同社では「チームANTCICADAへの支援や、またメディアやインフルエンサーを集めた試食会などを検討しています」とのこと。

IKEAが支援するSPACE10という研究所が、ミールワーム(ゴミムシダマシ科の昆虫の幼虫)を使用したハンバーガーやミートボールを開発するなど、昆虫食に関する研究は世界各地で現在進行中だ。魚を生で食べる文化のなかった人たちが、寿司や刺身きっかけで生魚を口にするようになったように、なにかをきっかけに昆虫食が当たり前のように口にされる日が来るのも意外に近いのかもしれない。