文:吉野杏
もし今、あなたがファーストクラスのチケットを持っていたとしたら、それを誰かに譲ろうなどという発想を抱くだろうか。
イギリスの航空会社の客室乗務員がFacebookに投稿した心温まる話が今、世界中で話題になっている。
世代を超えた友情に感動
今月、88歳の元看護師の女性バイオレットさんはニューヨークに暮らす娘を訪ねた後、ロンドンに戻ろうとニューヨーク市内のある空港にいた。同じ頃、イギリス人の青年ジャックさんも家族旅行でニューヨークに来ており、ロンドンに戻ろうと同じ空港にいた。
『ニュージーランド・ヘラルド』によると、偶然空港で出会ったバイオレットさんとジャックさんは、即座に意気投合。2人ともヴァージン・アトランティック航空の同じ飛行機に搭乗することになっていたが、ジャックさんはファーストクラスに、バイオレットさんはエコノミークラスの座席を予約していた。
ところが飛行機に搭乗すると、ジャックさんがバイオレットさんを追いかけ、座席を交換することを申し出た。ファーストクラスの座席を譲るとは、何という粋な計らいだろうか。
ジャックさんはエコノミークラスのトイレの隣の座席に座り、自分の行いを周りに言うでもなければ、フライトの残り時間を気にすることもなく平然と過ごしていたとのこと。真似しようにもなかなかできることではない。親切で豊かな人間性に感心させられるばかりである。
ファーストクラスの投稿が2万2000いいね
バイオレットさんは娘に会いにニューヨークによく来ていたが、膝の手術のためしばらくの間、旅行することが出来なかった。そんなバイオレットさんにとって、ファーストクラスに乗るのは長年の夢だった。この経験は、一生の思い出になったに違いない。
バイオレットさんは「こんな奇跡みたいな話は自分の娘に信じてもらえないだろうから、本当にあった出来事だと伝えられるように写真が欲しい」と、客室乗務員のリア・エイミーさんに撮影を依頼。しかし撮ったはいいものの、彼女はスマートフォンもメールアドレスも持っていなかった。そのため、せっかく撮った写真を受け取る術がないというなんとも残念なことに。
エイミーさんはこの写真をFacebookに投稿すると、現在2万2000件の「いいね」、5300件のシェアを獲得し、大きな反響を呼んだ。この流れに乗って、ファーストクラスの座席に座り幸せそうな笑顔を浮かべるバイオレットさんの素敵な写真が、本人のもとにまで届くことを願いたい。