文:吉野杏
自分とは異なる、さまざまな特徴をもった人が同じ世界で生きていることを、幼い頃から知ることは、多様性を受け入れる価値観の形成につながるのかもしれない。
今、アメリカのおもちゃメーカーの多様性に関する取り組みが注目を集めている。
補聴器やインスリン器具を持った人形も登場
ダウン症の4歳のアイビー・キンブルちゃんが、アメリカのおもちゃメーカー「アメリカン・ガール」が発行するカタログ雑誌の10月号にモデルとして起用された。ダウン症のモデルが同社の発行するカタログ雑誌に起用されたのは初めてであり、一躍アメリカのスターになった。
人形とお揃いの赤いキラキラしたドレスを着たアイビーちゃんが、目を輝かせながらカメラを見つめている姿が、カタログ雑誌の中に収められている。
このカタログ雑誌では、一人ひとりのもつ特徴、多様性の肯定に重きがおかれている。たとえそれが一般的にハンディキャップと見なされる特徴であってもだ。補聴器やインスリン器具、松葉杖、盲導犬や車椅子といったアイテムをもった人形が掲載されていることでも明らかだろう。
ハンディキャップがあってもなくても、誰もが輝ける社会に
アイビーちゃんの母親であるクリスティン・キンブルさんは、『WLS-TV』の取材に「『アメリカン・ガール』のカタログ雑誌に自分の子どもを載せるのは、すべての母親の夢と言ってもいいかもしれません。しかしダウン症の子を起用する印刷物やメディアは少ないです。それは大きな問題であり、だからこそアイビーがカタログ雑誌に載ったのはとても誇らしいことです」と、この取り組みを称賛した。
クリスティンさんの言うように、ダウン症の子がモデルになるケースはほとんどない。その意味で「アメリカン・ガール」の事例は、先進的な価値観に基づいていると言えるだろう。
さらに、クリスティンさんは「これからはダウン症である、ないに関わらず、あらゆる能力を持つ子どもたちがメディアに登場するのがあたりまえになっていってほしい」と今後のあるべき社会の姿を述べた。
ハンディキャップを背負っていても活躍の場が平等に与えられる社会を実現するため、「アメリカン・ガール」のような思想の企業、組織が増えていくことが望まれる。