文:大塚ちえ
犬や猫を家族のように愛するペット愛好家が増える一方で、いまでも多くの動物たちが行き場をなくし、殺処分によって命を落としている。
そんな状況を変えようと、ある一人の女性が立ち上がった。
殺処分率100%を1年で0%に
2018年11月、殺処分率が100%だった米国テキサス州タフトの動物保護施設で、ケイラ・デニーさんは指揮を取ることになった。元会計士のデニーさんが、警察署長にタフトの動物保護施設の責任者として任命された当初、施設は老朽化が進んでおり、動物たちが安心して暮らせるような場所ではなかったという。
毎週水曜日を殺処分の日とされており、目の前で動物たちが死んでいく現実を見て心を痛めたデニーさんはFacebookを通じて友人に助けを求め、寄付を募り始めた。
その寄付金を使って、施設にいる動物たちのために新しい備品を800箱以上購入した。そして、彼女は施設にいる動物たちの家族を探すことに全力を尽くしたという。彼女が施設の責任者になって1年で565匹の犬や猫を殺処分から救い、みんな家族となる人たちに引き取られていった。
賞金3万5000ドルは全額保護施設へ
デニーさんはそうした功績が認められ、ペトコ財団からアンサング・ヒーロー(影の英雄)賞を授与された。この賞はボランティアたちの功績を称える賞で、何千人という人がノミネートされていた。一方で、デニーさん自身は、自分が候補者としてノミネートされていることすら知らなかったという。しかし、その素晴らしい功績が認められ、2019年のアンサング・ヒーロー賞で最優秀賞を受賞したのだ。
2019年のアンサング・ヒーロー賞ではトップ5に入賞した人には1万ドル、さらに最優秀賞を受賞したデニーさんは追加で2万5000ドルが与えられた。デニーさんは、3万5000ドルに上る賞金を使い、タフトの動物保護施設の改善に役立てると『KZTV』の取材で語った。
米下院は2019年10月、動物虐待を連邦犯罪とする法案を可決。上院でも動物虐待に対する罰則を強化した法案が可決されており、動物を傷つけたものに対して最長7年の懲役が科されることもあるという。
日本でも2019年6月に動物虐待への罰則強化やマイクロチップの装着を義務付けることを柱とした改正動物保護法が可決された。現行法では動物を虐待した場合、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」となっているが、改正法では5年以下の懲役または500万円以下の罰金」と、罰則を引き上げる。
こうした取り組みが実を結び、人間と動物たちがともに幸せに暮らせる未来が訪れることを願ってやまない。