文:岩見旦
万引きによる被害は、店舗にとって見過ごすことの出来ない深刻な問題だ。年間の犯罪被害額は全国で4615億円に上るという。
そんな万引きに対し、画期的な防御策を取っている弁当屋が、TBS系『坂上&指原のつぶれない店』で紹介され、話題を呼んでいる。
客側は弁当の品揃えを確認
東京・亀戸に店を構える弁当屋「キッチンDIVE」は、公式のTwitterアカウントは2万3000人のフォロワーを抱える、ネットでは知る人ぞ知る有名店だ。
200円の弁当や、555円の1キロの弁当など圧倒的な低価格で商品を提供しているものの、1日で1000食以上売り上げているため、オープン以降9年間連続で黒字経営しているという。さらに店長はタワーマンションの最上階に住んでいるというから驚きだ。
番組では、同店の斬新な取り組みとして、店内をYouTubeライブ配信していることが取り上げられた。24時間営業の店内を定点カメラから常時配信することで、視聴者が警備員代わりとなり、人件費を削減。万引きがほぼゼロになったという。
さらに客側にとってもメリットがあり、ライブ配信を見ることで、弁当の品揃えを確認してから来店することが可能になった。その結果、売上は20%アップしたとのこと。
驚愕のアイデアに5万リツイート
番組放送後、SNSを中心にこの万引き防御策が大きな話題となり、番組内容を紹介したあるツイートは約5万件のリツイートを記録。「素晴らしい発想」「広告にもなって一石三鳥」「この店長、なかなかの切れ者」など、称賛のコメントが寄せられた。
この原稿執筆時、昼過ぎの時間帯に配信をチェックしてみたところ、約100人以上が視聴しており、コメント欄では弁当の売れ行きや大量の搬入、店のアクセス方法などについて雑談が繰り広げられていた。
渋谷のスクランブル交差点がヒントに
今回FINDERSでは、「キッチンDIVE」店長の伊藤慶さんにメール取材を行った。
この取り組みのヒントとなったのは、同じく常時YouTubeライブ配信を行っている渋谷のスクランブル交差点だ。元々ニコニコ超会議に出店していた同店は、2018年にドワンゴの特番で店内のライブ配信を2回実施。すると合計40万人の視聴者を集め、一躍評判になった。これに手応えを得て、昨年の夏からYouTubeで配信をスタートした。中には、ライブ配信に映るために来店する人もいるという。
ネットをどのようにビジネスに活用するかは、常に議論の的になるが、「キッチンDIVE」のアイデアはまさにコロンブスの卵と言えるだろう。あらゆる場所でのYouTubeライブ配信が行われる未来が、一つの街の弁当屋から始まることになるのかもしれない。