文:宮西瀬名
衣食住さえままならない日々を送っているホームレスは世界中に存在する。炊き出しなどで「食」を満たすことはできても、 「住」を充実させることはなかなか難しい。そのため、安心して睡眠をとることが難しい状況にある。
オーストラリアの慈善団体Beddownは、ホームレスをそんな苦しみから開放するべく、ある斬新な取り組みをスタートした。
食事やシャワーを用意
Beddownは、ホームレスが安全かつ安心して床につける場を提供するため、車が停まっていない深夜の駐車場に複数のベッドを敷き簡易的な宿泊所を設置するという取り組みを始めた。駐車場運営会社大手のSecure Parkingと協力し、オーストラリアのブリスベンにて2週間試験的に実施した。たくさんのベッドが敷き詰められた駐車場は、一瞬本来の姿を見誤らせる景観である。
この施設ではベッドの他に、食事やシャワーも用意。医師や看護師、歯科医師、美容師も待機しており、当たり前とされている生活が利用者に提供された。
41人の利用者が試験期間中にBeddownを利用し、男性が77%で女性は23%。Beddownに入ろうとした人の中には15歳の子どももいた。そして利用者の全員が、滞在中は安全と感じたと答えた。
利用者からは「ここでは背後を気にすることがなかった」「ここに来て『自分が生きている』ということを思い出し、リハビリテーション施設の予約を入れたよ」とポジティブな声が多く寄せられているという。
「最終的にこの活動が無くなれば良い」という思い
『Bored Panda』によると、Beddownの創設者であるノーマン・マギリヴレー氏は、夜中に空っぽの駐車場を見た時、「なぜここをシェルターとして使わないんだ?』という疑問を感じたことがきっかけで、この取り組みのアイデアを思いついたという。
今後はさまざまな企業や団体と協力して、ホームレスの教育面や就職面をサポートする予定。「最終的にはこういった活動が必要ない社会にしたい」とBeddownの公式Instagramにて展望が語られた。
先月台風19号が上陸した際、東京都台東区が避難所を訪れたホームレスの受け入れを拒否。この対応に大きなバッシングが寄せられたことは記憶に新しい。
家があろうとなかろうと生きる権利は平等に与えられている。ホームレスに安全な寝床を確保することは急務であり、Beddownが実施したような柔軟かつ大胆な取り組みが日本でも求められる。