EVENT | 2019/11/20

Wikipediaの共同創設者が「フェイクニュースと闘う」SNSを開設。総務省やTwitter、Facebookもフェイクニュース対策に本腰を入れる

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伊藤僑
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伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

フェイクニュースと闘うSNSが登場!

TwitterやFacebook、ブログなどを通じて拡散されるフェイクニュースが大きな社会問題化している中で、「フェイクニュースと闘う」ことをテーマに掲げたSNS「WT:Social」がひっそりと誕生した。開設したのは、インターネット上の百科事典として知られる「Wikipedia」の共同創設者であるジミー・ウェールズ氏だ。

WT:Socialの見た目はTwitterやFacebookなど既存SNSに似ており、ニュースフィード上に表示される記事(投稿)を共有したり、コメントを残すことができる。だが、フェイクニュース対策についは、Facebookのようにモデレーターを雇って嘘がないかを監視するのではなく、ユーザーのコミュニティによって基準を守らせるスタイルを採るという。つまり、情報の信頼性確保にはWikipediaと同様の方式を採用しているわけだ。

ウェールズ氏は、広告収入で成り立っている有名SNSのビジネスモデルには問題があり、巨額の利益を得ているサイトが間違った情報や質の低いコンテンツを提供している現状を変革していくべきであると主張する。そこでWT:Socialでは、情報へのアクセスやサイトにおける交流のために、サブスクリプション料金(月額12.99ドル/ 年額100ドル)を設定している。

「Wikipedia」共同創設者ジミー・ウェールズ氏のツイート

11月19日(日本時間)時点のWT:Social登録者数は20万人を超えたところ。フェイクニュースと闘うSNSへの賛同は、少しずつではあるが広がってきているようだ。

TwitterやFacebookもフェイクニュース対策を

フェイクニュース拡散のプラットフォームとして批判を集めているTwitterやFacebookも、後手後手に回っているとはいえ手をこまねいているわけではない。

例えばTwitterでは、安全性担当のバイスプレジデントであるデル・ハーベイ氏が11月11日にブログで、改ざんされたメディアを使用して人々を意図的に欺こうとする投稿から、利用者を守るための新たなルールを策定しようとしていることを明らかにしている。

同社がここで特に問題視しているのは、機械学習を利用することで人物の顔を本物そっくりに合成できるディープフェイク画像・動画で、人が実際にはしていないことをしているように見せたり、言っていないことをしゃべっているように見せることができる技術だ。

具体的には、ディープフェイク動画をシェアしているツイートの横に警告を表示したり、ディープフェイク動画を含むツイートをシェア、もしくは「いいね」しようとするユーザーに注意を促すことを検討しているという。また、その投稿がディープフェイク動画であると判断した根拠となるニュース記事などへのリンクも追加することも計画中のようだ。

Twitterではこのほか、政治的な広告に誤りが多いという批判を踏まえ、政治家などが政策やメッセージを発信する政治的な広告の掲載を今月から取りやめることも発表している。

一方、実名登録が求められるFacebookの場合には、フェイクニュース拡散の温床となっている偽アカウントの駆逐に力を注いでおり、11月13日付けで発表した「2019年度コミュニティ標準施行レポート」でも、2019年4月から9月までの間に、前年同期比2倍以上となる32億人分もの偽アカウントを削除したことを報告。偽情報の拡散を防ぐ対策も強化することを表明している。

両社のこうした抑止策の積み重ねが、フェイクニュース拡散の芽をつむことに繋がっていくことを期待したい。

総務省もプラットフォーマーと連携し対策へ

日本でも11月17日、総務省が問題の深刻化を見据え「プラットフォーマー」と呼ばれる大手IT企業などとフェイクニュースへの対策について検討を進める方針を明らかにした。

具体的には、FacebookやGoogle、ヤフー、LINEといったプラットフォーマーに加え、情報の真偽を確認するためのファクトチェックを行う民間団体などに呼びかけて対策を検討。有識者会議は、年内に最終的な提言をまとめるという。

ただし、SNSなどに投稿された情報の削除を政府が義務づけることは、表現の自由を侵害する恐れがあるとの懸念もあることから、現時点では法律での規制ではなく、プラットフォーマーなどによる自主的な対策が想定されているようだ。

官民が協力することで一段と強化されるであろうフェイクニュース対策だが、政府やプラットフォーマー任せにするだけでなく、利用者一人ひとりがフェイクニュースを見抜き、拡散しないように心がけることも忘れてはならない。