文:宮西瀬名
SNS上にアップされる動物たちの可愛い写真や動画に癒やされている人は多いだろう。
それらを表面的に見ている分には幸せな気持ちになれるかもしれないが、カメラを向けられている当人たちは複雑な背景を抱えている場合がある。
行くあてもなくバスに乗り込んだ犬
10月16日、イギリスのウェスト・ヨークシャーで運行しているバスに、変わったお客さんが乗車した。ビアリーのバス停で乗り込んできたのは、スタッフォードシャー・ブル・テリアのミックス犬。終点のブラッドフォードまで20分間、一匹で乗っていたという。
この犬はハーネスを付けているものの飼い主はおらず、家から遠く離れた街で迷っていたものと思われる。そのため、人間と同じように彼女もバス停でバスの到着を待ち、飼い主の元に帰ろうとしたのだろう。
このバスに乗っていたジェマ・バーデンさんは、不安な表情で座席にちょこんと座っているこの犬を撮影し、自身のFacebookに投稿。現在3700以上の「いいね」を獲得し、「飼い主はなんて無責任なのか」「飼い主と無事再会できることを願っています」などのコメントが寄せられた。
飼い主は現れず、救助犬の道に
『Yorkshire Evening Post』によると、この犬は地元の動物保護の慈善団体「Yorkshire Rose Dog」に保護され、地元メディアを通じて呼びかけをしたものの、飼い主は現れなかった。同団体の理事のジャネット・バレルさんは「私達は彼女の新しい家を求めています」とコメントした。
現在、この犬は動物保護施設「Cliffe Kennels」に預けられ、70年代のコメディドラマのキャラクターからオリーブと名付けられた。そして、救助犬の道に進んでいるという。
日本でも所有者不明の犬は少なくない
この事件が海外で起きたからといって、他人事と思ってはいけない。環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」によると、平成29年度に引き取られた犬3万8511匹。その内、所有者不明の犬は3万4396匹にも上った。この中には、飼い主に捨てられた犬も少なくないだろう。
動物は可愛い。大切にされるべき存在だ。しかし、一部の飼い主が動物にひどい仕打ちをしている現状も散見される。もう一度動物を飼うことについて、この写真を見て考え直す必要があるのではないだろうか。